くす…と、神代が力無く微笑む。

その隙にも、 ステンドグラスの破片を突き刺した 彼の腹からは大量の血が溢れている。

…このままでは、神代は死ぬ。

ない。

彼はこれまでに見た表情の中で いちばん優しい笑顔で首を傾ける。

赤く光るステンドグラス

彼の血をそのまま映すそれは、 怖いほど綺麗で

ほとんど叫ぶように怒鳴る神代は

それでも自分を選んでほしがっていた。

生贄を選べと声高に迫る裏で、

「自分を救って」と泣き叫んでいる。

私は

私はどうすることも出来ずにいた。

考えて考えて考えて考えて考えて

考えても、

答えが出ない。

待って、何故この流れで謝罪？

あなたに生きていてほしくて

そんなことは、言えなかった。

なぜそこまでして

貴方はひとりを選ぶのか。

邪魔、するなら、

死んでやる。

真夜中さんが、 驚いたように頬をひきつらせる。

その青ざめた表情が、 私には面白くて仕方がなかった。

この男を動揺させたと思うと、 気味がいい。

腹に刺したステンドグラス

痛みなど、感じなかった。

勿論、血はたらたらと流れているが。

さらに青ざめる彼は、もはや私に 対する憎しみなどは捨てている。

私は苦しい呼吸を整えて、

空虚な笑顔を見せる。

私はゆっくりと教会の扉へ後退り、

まるで舞踏会に出たシンデレラ のように小さく膝を折る。

表情はにこやかに、

ガラスの靴の代わりに血で濡れた ステンドグラスを手に添えて。

そう言い、私はゆっくり扉を閉めた。

うっすらとした光

共に、現れたのは。

傷一つない、彼らだった。

彼は"彼女"に任せましょう。

𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹