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歯車だ、歯車の音が聞こえる見える、この光はなに？敵に侵された僕に、声をかけてくれるのは誰？

第4話 - さよなら、芥川先生。

2023年05月04日

#文豪とアルケミスト

#オリキャラ

このは

太宰

芥川先生の存在は、俺にとって憧れだった。

太宰

いつ、声をかけても優しいし、俺を跳ね除けない。

太宰

俺は知っている。あの人の切なさを。

太宰

生きることに苦しみを覚えるくらいなら、楽に生きればいい、が俺の信条だけど

太宰

あの人は最後まで楽に生きられなかった。

太宰

そんな辛いことって、あるだろうか。

太宰

さよなら、司書さん。

司書

待って、太宰先生！行かないでっ！！

手を伸ばす。伸ばした手は、本の中に消えようとする、太宰先生に届かない。

太宰

しゅううう………。

太宰

歯車……。

太宰

なんで、歯車なんて。

太宰

クルクル回る噛み合わせのズレた歯車。

太宰

ギィギィ鳴る機械。芥川先生……。

織田作

太宰クン！無事でっか？

太宰

……オダサク。

太宰

芥川先生がいないんだ、どこを探してもいない。

織田作

太宰クン、あの人が大切な人やったんは、よくわかるけど、もう帰りましょ

太宰

いやだ！まだ探す！

太宰

きっと、この暗いあっちのほうに！

織田作

おらへんよ。

太宰

でもっ！

織田作

逃げましょ。敵が来る前に。

織田作

ここは、危のうて。

ガチャガチャがちゃがちゃ

織田作

やっぱ、来たあ！！かけぬけまっせ！太宰クン！

太宰

オダサクッ…！！！

太宰

ううっ……、もうダメだ。死ぬしかない。

司書

帰ってきてくれて、ありがとうございました。

太宰

何言ってるの、お司書さん！？

太宰

俺は、芥川先生と、一緒に死にたかったんだよ……。

太宰

それなのに、それなのに……。

太宰

あー、もうだめだー！こんなことなら、転生するんじゃなかったっ！！

太宰

ひっく、えぐ、えぐっ……。

司書

ごめんなさい。調速機使いますね。ゆっくり休んでいてください。

キリキリキリキリ

太宰

それも、歯車だ……。

司書

そうして、芥川先生がいなくなってから、１ヶ月が経った。

司書

皆、平穏さを取り戻しつつある。

太宰

おしーしょさん！

司書

あ、太宰先生！

太宰

なんか、皆落ち着いてるね。

司書

そうですね。太宰先生は、お酒の量増えましたか？

太宰

げげっ、なんで知ってるの。

司書

皆さんの生活を充実させることは、私の仕事の一環ですから。

司書

芥川先生のこと、悲しかったですね。

太宰

なんか、悲しくなさそうに言うんだね。

司書

そうでもありませんよ？

太宰

そ、それならいいけど……。

太宰

うん、俺。酒買ってくる。

司書

飲みすぎもほどほどに……。

太宰

うん。

太宰先生が、いなくなってから、私は声を潜めて泣いた。あの、白い指とか、黒い髪の匂いが、まだ図書館に残っている。

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