コツ…コツ…コツ
足音のみが存在する静かな空間
コツ…コツ…コツ
暗闇に包まれた廊下を直進する
コツ…コツ…
…
扉の隙間から光が漏れている
ドアノブに手をかけ、回して押す
(金属製の扉が開く音)
扉は容易く開いた
…
コツ…コツ…コツ
窓のふちに手を乗せて こちらを見つめる少女
…
いいのか?
少女は目をつぶり、言った
…許してください。
…ふ、はは!
青年は笑った
飛んだ無駄骨だったみたいだな。
青年は呆れたように手を広げた
そして、着用している黒色のコートの 内側に手を入れて
拳銃を取り出した
…
来世に幸福が在らんことを。
乾いた銃声が一発、響いた
青年は部屋に舞い散る 紅の花びらを眺める
…
俺も帰るか。
コツ…コツ…コツ
一呼吸置いて、青年は部屋を後にした
一人取り残された少女は
深い深い眠りについた