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朝。 カーテン越しの先に、道枝はゆっくり目を開けた。

隣はもう、空いている。 代わりにキッチンから微かな物音がした。

道枝駿佑

……早いな

長尾謙杜

起きた?

エプロン姿の長尾が、ひょこっと顔を出す。 その手には、湯気の立つマグカップ

長尾謙杜

コーヒー、砂糖少なめ

道枝駿佑

……覚えてたんや

長尾謙杜

当たり前やん!

笑いながら近づいてきて、自然に距離を詰める。 肩が離れて、体温が伝わる。

道枝は一瞬、昨夜の映像を思い出しかけて、首を振った

道枝駿佑

今日は、夜勤?

長尾謙杜

うん。ちょっとだけ

道枝駿佑

……誰と?

長尾は、ほんの一拍だけ間を置いた。

長尾謙杜

ひとりで、や

道枝駿佑

……そう

それ以上、聞けなかった。 聞けば、踏み込んでしまう気がした。

署。 ホワイトボードには、被害者の写真と情報が並んでいる。

上司

次も、夜だ

道枝駿佑

……はい

同僚

道枝、最近集中力落ちてない?

道枝駿佑

そんなこと――

言いかけて、止まる。

防犯カメラの静止画。 そこに映る人物の輪郭が、どうしても脳裏に焼き付く。

道枝駿佑

(……似てるだけだ)

何度も自分に、言い聞かせる

夜。

道枝は、長尾の帰りを待っていた

時計は、もう日付が変わりそうだ

道枝駿佑

……遅い

スマホを握りしめる。 既読は、つかない

――ピロン。

【長尾】  「ごめん、遅くなった」 【道枝】  「今どこ?」

少し間があって、返事。

【長尾】  「もうすぐ」

道枝は、胸の奥がざわつくのを感じた。

嘘をつくのは慣れている。 でも、みっちーに向ける嘘は、胸が痛む。

長尾謙杜

……疑われてる

分かってる。 それでも言えない。

真実を話せば、みっちーを危険に近づける。

長尾謙杜

(俺が守る)

それでいい。

玄関の鍵が開く音。 長尾が入ってくる。

長尾謙杜

ただいま

道枝駿佑

……おかえり

道枝は、長尾の腕を無意識に見た。 袖で隠れている。

道枝駿佑

……怪我、してない?

長尾謙杜

え?

道枝駿佑

いや、なんでもない

長尾は少し笑って、靴を脱ぐ

長尾謙杜

心配しすぎ

そういいながら、道枝の前に立つ

長尾謙杜

なぁ

道枝駿佑

長尾謙杜

疑ってる?

心臓が、強く鳴った

否定も、肯定もできない

長尾は、距離を縮めて、道枝の手を取った

長尾謙杜

それでも、俺はみっちーが好きやで

道枝駿佑

……長尾

長尾謙杜

疑われても、離れへん

指が絡む。 その湿度が、道枝の理性を揺らす。

――離れられない。 そう思ってしまった時点で、もう危険なのかもしれない

警察官としての残念。 恋人としての信頼。

どちらも、捨てられない

道枝駿佑

(俺は……どちらを選ぶ?)

長尾は何も知らない顔で、微笑っている

その笑顔が、 いちばん、疑えなかった。

#2 終

夜明け前、君を疑った

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