白福萌甘
おはよう焦凍くん!
白福萌甘
もう平気?
轟焦凍
平気だ
轟焦凍
昨日はありがとうな
翌日。
全快した焦凍くんは いつも通りの涼しい顔で
待ち合わせ場所に来ていた。
白福萌甘
いいんだよ
白福萌甘
これからは折りたたみ傘を持ち歩こう
轟焦凍
それが一番だな
轟焦凍
萌甘も、傷治ったな
と、焦凍くんが私の左頬を 右手で撫ぜる。
白福萌甘
うん、ただのかすり傷だったし
焦凍くんは「そうか」 と返すと、
左手も右頬に添えて、 もちもちと頬を揉み始めた。
白福萌甘
って、もちもちしたいだけでしょ?
轟焦凍
悪ぃ、無意識だった
白福萌甘
無意識なら仕方ないね
轟焦凍
ああ
白福萌甘
わざと言ったんだけど…
いまだもちもちと頬を触る 焦凍くんはご満悦だ。
焦凍くんのこれは、 もう昔からの癖みたいなもので。
轟焦凍
萌甘ちゃんの個性って何?
白福萌甘
「もち肌」だよ
轟焦凍
もちはだ?
白福萌甘
肌がもちもちしてるの
白福萌甘
特にほっぺとか!
轟焦凍
へえ!触っていい?
白福萌甘
いいよー
初めて私の頬を触った時の、
目を輝かせた焦凍くんの顔は 今でも覚えている。
白福萌甘
( あの時触らせたのが運の尽きかな )
白福萌甘
もう、そんなに触るなら私も
なんだか負けた気がした私は、 焦凍くんの両頬を掴む。
びっくりしたように 目を丸くする焦凍くん。
白福萌甘
わあ、焦凍くんもすべすべだね
白福萌甘
実は焦凍くんの個性も「もち肌」なんじゃない?
白福萌甘
!
そんな風にからかいながら 頬をもちもちすると、
焦凍くんは私の頬から 手を離して、
代わりに私の手に 自分の手を重ねた。
目を伏せて嬉しそうに 微笑んでいる。
白福萌甘
しょ、焦凍くん…?
轟焦凍
もちもちされるのってこんな気分なんだな
轟焦凍
萌甘はもちもちされるの嫌なのか?
轟焦凍
俺はするのもされるのも好きだな
焦凍くんの口から 「もちもち」という言葉が
発せられた事に驚きつつも、 その質問に答える。
白福萌甘
嫌…ではないけど
白福萌甘
するのも、されるのも
轟焦凍
ふっ、そうか
耳から頬に伝染するように 熱くなるのを感じる。
目を逸らした私に 「ふふっ」と笑った焦凍くんは、
実は策士なのかもしれない。