そらるside
そらる
そらる
心臓が、大きな音をたてる。
意識しなくたって、声が震える。
そらる
まふまふは、黙って微笑んでる。
そらる
まふまふは困ったように笑うと、 ゆっくり口を開いた。
まふまふ
まふまふ
まふまふ
そらる
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふの真剣な目に、 何も言えなくなった。
でも……でも。
そらる
まふまふ
そらる
目が段々と熱をもっていく。 まふまふの顔が次第にぼやけていく。
そらる
自分の頬を沢山の水滴が伝っていく。
まふまふ
俺は腕で涙を強引に拭う。
まふまふは、 とても辛そうな顔をしていた。
まふまふ
まふまふ
まふまふは、短刀を握った俺の手を 上から包み込んだ。
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふは、 柔らかい笑みを浮かべた。
そらる
そらる
そらる
まふまふ
まふまふから、表情が抜け落ちた。
まふまふ
そらる
そらる
まふまふ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
そらる
俺は思わず声を荒らげて まふまふの手を振り払った。
弾かれた短刀が、 地面に叩きつけられる。
まふまふは少し震えると、 口を噤んだ。
口が、勝手に動くような感覚。
そらる
そらる
そらる
そらる
そらる
言葉がつっかえて、 上手く出てこなかった。
まふまふ
まふまふは黙って俺に手を伸ばし、 頬に触れた。
手甲の紐の感触と、 血液がこびり付いた ひんやりとした皮膚。
まふまふ
まふまふ
まふまふは、ちょっと寂しそうな でも、ほっとしたような そんな表情をしていた。
そらる
まふまふは俺の腰から、 刀を抜きとる。
まふまふ
そらる
まふまふ
そらる
……まふまふは、 俺の目を見てくれなかった。
まふまふside
……どこで、 間違えてしまったんだろう。
そらるさんの方が、見られない。
……怖い。
人を殺すことが… 好きな人の人生を奪うことが、怖い。
そらるさんの、 長くて重い刀を見つめる。
……やっぱり、 筋肉の少ない僕には扱いにくいなぁ。
この白くて華奢な体の どこにそんな力があるんだろう。
そんなことを考えて、 現実から逃げようとする。
まふまふ
そらる
まふまふ
……どうして、そんなに笑顔なの。
そらる
まふまふ
まふまふ
どうしてそんなに、幸せそうなの。
これから、 僕に殺されるっていうのに。
…でも
気持ちがわかってしまう。
そもそも、 初めにこんなことを頼んだのは 僕の方なんだから。
……ああ、そっか。
僕は自分勝手なんだ。
僕は好きな人に殺されたい。 そらるさんも同じ様に思ってる。
でも僕は、好きな人を殺したくない。
………そっか、そっか。
僕が我儘だったんだ。
好きな人の願いを叶えようとしない、僕が悪いんだ。
まふまふ
……僕が好きな人にできることは 願いを叶えてあげること、 だよね……?
なにも、間違えて、ない、よね……
……そうだよ、 取り残される方が可哀想じゃないか。
大丈夫、 僕がそらるさんを幸せにするだけ……
まふまふ
心臓の音が、うるさい。 今にも弾けそうだ。
呼吸をしているのか、していないのか それすら分からなくなるような。
得体の知れない何かが 脳を埋めている。
そらる
そらる
そらるさんは優しい声でそう言うと、綺麗な瞳で、僕を覗き込んだ。
瞳に反射する僕は……
まふまふ
とても、幸せそうな顔をしていた。
……心のどこかで、
初めからこうなることを 望んでいたのかもしれない。
そらるside
俺は地面に放り出された短刀を拾う。
着いてしまった土を払うと、 刃の部分が光を反射して、 滑らかな切っ先を露わにする。
まだ一度も使われていない、 綺麗な短刀。
そらる
まふまふ
そらる
思わず、息を呑んだ。
振り返ったまふまふは、 口元を隠す布を外していた。
この世の誰よりも、美しい顔。
っていうか、前にも見た事あるのに 何動揺してんだ、俺……
まふまふ
そらる
まふまふはくすくすと笑うと、 結いた手甲の紐を口で解き始めた。
まふまふ
まふまふは手甲を俺に差し出す。
そらる
まふまふ
まふまふ
そらる
まふまふ
まふまふ
まふまふは、暖かい笑みを浮かべた。
そらる
そらる
俺は拾ってきたまふまふの短刀で、 首にかかった勾玉の紐を断ち切った。
そらる
そらる
まふまふの首に手を回して、 紐を結び直す。
まふまふと、目が合った。
まふまふ
そらる
俺は首を傾けて、 ゆっくり、まふまふに顔を近づける。
まふまふのまつ毛が、少し震えた。
そらる
俺の唇に、 まふまふの白い人差し指が 押し当てられる。
……まるで、 初めて出会ったあの夜みたいに。
まふまふ
そらる
まふまふ
まふまふは、悪戯っぽく笑った。
つられて、俺も吹き出す。
そらる
まふまふ
そらる
まふまふ
お互いの小指を絡ませて、笑い合う。
この時間が、ずっと続けばいいのに。
そらるside
まふまふ
まふまふは俺の首元に、 短刀の切っ先をあてがう。
そらる
俺はまふまふの首元に、 刀の刃を添える。
まふまふの手甲をはめた手で。
まふまふ
まふまふ
そらる
まふまふ
そらる
現世も、来世も、 そのまた先も、ずっと。
まふまふ
まふまふが首から提げた勾玉が、 輝く。
まふまふ
そらる
まふまふ
「せーの」
腕に伝わってくる確かな感触。
裂けるような、首の痛み。
赤く染ったまふまふの顔は
とても幸せそうだった。
そこで
俺の人生は、幕を閉じた。
約450年後──
まふまふ
僕はソファに座ってゲームをしている彼を、後ろから覗き込む。
そらる
まふまふ
僕は興味なさげなそらるさんに、 スマホの画面を差し出す。
そらる
まふまふ
まふまふ
そらる
そらる
まふまふ
僕はそらるさんの隣りに 腰を下ろして、スマホを操作する。
まふまふ
まふまふ
まふまふ
そらる
まふまふ
画面に浮かんだ文字は。
まふまふ
まふまふ
そらる
まふまふ
そらる
まふまふ
そらる
まふまふ
そらる
そらる
そらる
そらる
そらる
まふまふ
まふまふ
そらる
まふまふ
まふまふ
そらる
まふまふ
僕は手を叩いて笑う。
そらる
まふまふ
まふまふ
そらる
そらる
まふまふ
そらる
そらる
まふまふ
そらる
まふまふ
口元に、柔らかい感触。
彼が、僕の視界いっぱいを 埋め尽くす。
白い肌に、 黒くて長い睫毛がよく映えている。
ああ、綺麗だな、 なんて、ぼんやり考えながら。
そらる
そらるさんは ゆっくりと僕から離れて、 僕の目を見つめる。
そらる
まふまふ
まふまふ
そらるさんは、 とても幸せそうに微笑んだ。
前世のことなんて分からない。
ましてや、 未来のことなんて知る由もない。
でも
この幸せがちょっとでも長く続けば、それでいいんだ。
だって、
貴方が僕の世界の全てなんだから。
恋愛のすゝめ ─完─
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コメント
47件
一話目から引き込まれて、一気読みしてしまいました…!! そらるさんとまふくん、来世でちゃんと約束果たせたんですね…!(;▽;) 最後まですごく面白かったです!! フォロー失礼します!
泣きました....うわぁぁぁぁぁん
読ませていただきました!最後まふくんとそらるくんが死んでしまう時にあぁ死なないでぇ〜!と思いながら見ていました。でも今一緒にいれて良かったです!あのよろしければですが、この話を参考にして物語を書いてもいいですか?