沙桜の家
沙桜
……
沙桜
やること、ないな
沙桜
(また、あの場所に行きたい……)
コンコン
世話係
失礼します
沙桜
……みほさん
世話係
お洗濯物持ってきました。
沙桜
ありがとうございます…
世話係
……沙桜さん、何か嬉しいことありました?
沙桜
へ?
沙桜
(確かに嬉しいことはあったけど……でも今はそんな表情も声も……)
沙桜
どうしてわかったんですか?今の表情は他人から見たらただ暗くなっていると思うんですが…………
世話係
何となく、です。
世話係
そういうってことは、本当に嬉しいことがあったんですね
世話係
沙桜さんが嬉しくなっていると、私も嬉しくなるんです。
沙桜
……!
世話係
なんででしょうね
世話係
では、お食事の準備をしてまいります。
世話係
失礼しました。
沙桜
(みほはすごいな)
沙桜
(私のこと、小さい頃からなんでもお見通しなんだもん)
沙桜
(入ったばっかりの頃は失敗ばっかりで、私の前に立った時なんて、緊張して足震えてたのに)
沙桜
……
沙桜
(えむちゃんやみほさんに比べると、私、何も成長できてないな)
司
どうすればいいんだあぁぁぁーーーー!!!!
えむ
うぇぇーーーん!!
寧々
ちょ、ちょっと……なにがあったの……?
えむ
沙桜ちゃんと沙桜ちゃんのお母さんが納得する最高のショーをつくらなきゃいけないよぉ!
寧々
……えむ、変わったね
えむ
ほえ?
寧々
前は1人で抱え込んだりしたのに、今は自分が悩んでることをうるさいくらい伝えられてる
司
あぁ、確かにな!!
類
ふふ、仲間の成長が見れて嬉しいよ
えむ
えへへ、きっとねぇ、それはねぇ
えむ
皆があたしにずーっと仲良くしてくれたり一緒に悩んでくれたりしてるからだよっ
寧々
えむ……って、あれ?
ポツ……ポツ……
類
雨?
サァァ……
司
おわ、すごい降ってきたな!?
えむ
雨だ雨だ〜!
司
なんでお前はそんなに嬉しそうなんだ!
司
ほら、早く室内に行くぞ!
えむ
えー、もっと遊びたいなぁ
寧々
風邪引いちゃうから!
ザアァァァァ……
えむ
晴れたら、虹出てくるかな!?
類
この太陽の低さなら、出てくるかもしれないね
えむ
ほんと!?
えむ
ふんふふーん♪早く晴れないかな〜♪
寧々
さっきはあんなに雨ではしゃいでたのに……
司
楽観的なやつだな……
えむ
……あ〜!!??
類
おや、どうしたんだい?
司
急に大声を出してどうした……
寧々
……あ
寧々
あれ、沙桜じゃないかな
司
ほ、本当か!?
えむ
……
えむ
大丈夫かな?
司
ん?なんでだ?ちゃんと白状もあるぞ?
類
雨だから滑りやすいし、周りの音が聞こえにくい。
類
片手で傘を持っているから、転倒してしまう可能性があるね。
寧々
…わ、私行ってくる……!
えむ
わ、私も!
司
お、お前ら!!傘を持っていけ傘を!!!!
沙桜
(雨……)
沙桜
……
沙桜
(……いや)
沙桜
(大丈夫、私なら、きっと……)
えむ
さ、沙桜ちゃーん!!危なーーい!!
沙桜
えっ!?
沙桜
ひゃあ!?と、鳥!?
寧々
危ない…もうすぐで踏むところだったよ……
沙桜
ご、ごめん……
えむ
大丈夫だよっ!
司
えむ〜!!
えむ
あ、司くん!!
司
お前、ちゃんと傘を持っていけって……沙桜、どうしてここに?
沙桜
え、えっ、と……
沙桜
ここに来るとなんだか落ち着くというか……
沙桜
嫌なこと、忘れられるかもって……
えむ
嫌なこと?
寧々
沙桜、何かあった?
沙桜
う、ん……
類
おや、4人ともここにいたんだね
寧々
類
類
さて、話の途中だったかな?
類
すまないね
沙桜
い、いえっ……!
沙桜
……
えむ
も〜!!またそーやって抱え込もうとする〜!!
沙桜
え、えぇ……?
えむ
ちゃーんと話さなきゃ、めっ!だよ?
寧々
いや、それあやす時の……
沙桜
あー……その……
沙桜
私、なんにも成長できてないなって……
沙桜
私の身の回りの人がね、最近成長してるなぁって思うようになってきて
沙桜
上から目線で言えるような立場じゃないんだけど……
司
沙桜……
沙桜
……類くん、言ってたでしょ?えむちゃんは自分の弱さに立ち向かえる強い人間だって
類
確かに言ったけれど、でも、それは
沙桜
私は自分の強さも見出すことが出来ない
沙桜
臆病な人間なの
類
沙桜くん、それは違うよ
寧々
私も、そうだと思う
沙桜
え……?
沙桜
違う……?
寧々
えむはね、おてんばで自由奔放で……
寧々
その性格だったから、お兄さん達にも立ち向かえることができたんだよ
寧々
でもね、沙桜はえむとは違う
司
あぁ、そうだな。沙桜はおしとやかで謙虚だ。
寧々
そう。だからね、えむと同じやり方で立ち向かわなくてもいいの。
寧々
立ち向かい方って人によって違うでしょ?
寧々
真正面から堂々と立ち向かう人、影で努力して立ち向かう人
類
人には自身にあった立ち向かい方がある。
類
えむくんはえむくんのやり方で、沙桜くんは沙桜くんのやり方で。
司
あぁ、そうだぞ
司
沙桜の人生なのだからな。
沙桜
私、の…
沙桜
……なら、私も
沙桜
私なりの立ち向かい方で
沙桜
進んでみる……!
沙桜
(……お母さん、遅いなぁ)
沙桜
(お母さんを呼んで、自分の行きたい道を話す)
沙桜
(そう言ったけど……)
寧々
ねぇ、こんなところでコソコソ沙桜のこと見てていいの?
えむ
しー!聞こえちゃうよ!
類
いいじゃないか。寧々。嫌いではないだろう?
寧々
はぁ……後でどうだったか聞けばいいだけなのに
司
(咲希もこのようなやり方で穂波をこっそり見ていたと言っていたが……)
司
(やはりえむと咲希は似ているな……)
母親
……もう、なんなの?急にこんな場所に呼び出して
沙桜
……!!
寧々
あ、きた……!
沙桜
……お母さん
沙桜
私ね、やりたいことがあるの
母親
やりたいこと?
類
……!
母親
あのねぇ、あなたは私の会社に勤め……
沙桜
私、通訳になりたい
母親
……?
沙桜
通訳になって、色んなことを経験したり、人を繋いだり
沙桜
今の体でできることは少ないだろうけど
沙桜
それでも、やりたいの
母親
……っ
沙桜
突き放されたときも、呆れられた時も
沙桜
ただ泣いてた時の私には戻らない
母親
沙桜……
沙桜
…おか……さっ……?
司
な!?あの母親、抱きついたぞ!?
えむ
司くん!
寧々
司!
類
静かに、だよ?
司
あ、ああ、すまない
沙桜
な、なんで急に抱きついて……
母親
いつの間にか、こんなに大きくなったのね
沙桜
え……?
母親
あなたのこと、ずっと子供だと思ってた
母親
でも違うのよね
母親
今まで何もできなくて、ごめんね
類
……沙桜くんの母親も、自分なりに悩んでいたんだろうね
えむ
そっか……
沙桜
そ……んなこと
沙桜
言われたら……泣いちゃうじゃん……
母親
貴方は貴方の道を進んで
母親
母さん全力で応援するわ
えむ
沙桜ちゃーん!
沙桜
えむちゃん!?
司
こら、えむ!
えむ
良かったねぇ!沙桜ちゃん、立ち向かえてたよ!
寧々
うん
類
僕たちの言葉が響いて、よかったよ
沙桜
あはは……
沙桜
(私……)
沙桜
(前に進めたよね、きっと)