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トラゾー
そう言って労ってくれるのはまだ若者とは思えないほど貫禄のあるトラゾーという男だ。裏方の仕事を担うからこそ、色々細部まで気を揉んでくれた今日の企画者への労いは手厚い。
しにがみ
へろへろの様で笑う顔は初対面の人は絶対性別を間違えると断言できる。細身で童顔な最年少のしにがみ"くん"。類稀なクリエイティブ技術もあり、毎度遊ぶ場所の構築や仕掛けを面白おかしく作ってくれる。
クロノア
とは言っても楽しんでいたのか満面の笑顔で近寄るのは癖のある三人をまとめるリーダー、クロノアさんだ。落ち着いた佇まいから大人の余裕が見える最年長だ。
ぺいんと
その中を割って入って騒ぎ立ててしまうのが、この集まりの発起人、ぺいんとだ。
彼らが集まるところはゲームの世界の中、いわゆるVRとも言うバーチャルな世界だ。
離れて暮らしている仲間でも、回線を通じて一同に会する事ができる。ゲーム中のキャラは見た目も現実そっくりにトレースされ、独自のルールや状況に応じて装備品や服装が変えられる。
なので、周りより少しばかり小柄なしにがみくんは本当にゲームの規格よりかなり小柄なモデルになっている。
まあ、文明の発展があって部屋から一歩も出ずにほぼ生身な仲間たちと出会える、ということだ。
現実では特殊なゴーグルをつけてパソコンに向き合っているだけなのに、VR越しに溶岩を被れば熱い!と感じられるし、仲間とハイタッチも手のひらに衝撃を感じられる…といったところか。
アスレチックや脱出ゲームに参加した時には本当にジムの後のような疲労感もしっかり残る 。
そして彼らは、そんな毎度様々なルールを使ったステージを構築し、攻略過程を録画して世界に向けて配信するいわゆる『配信者』をやっていた。
気の合う仲間たちと楽しく遊んでいる姿と、四人の仲良い掛け合いが話題となり今や世界中で認知されたグループだ。
毎日のように撮影のため集まるというのに、雑談やいじり合いが中々止まらないぐらいには。
ぺいんと
攻略中は競い合ったり騙し討ちだってするのに、四人の絆の深さか、なんやかんやいつのまにかお互い応援しあっていたりもする。
口悪く煽っても、それは本心じゃないとわかりきっているからこそかけ合いは遠慮しないし、万が一納得できなかった時はとことん話し合うのがルールだった。
隠し事なし、我慢もなし。そうじゃなければ何年も変わらず付き合うなんてできやしない。
トラゾー
しにがみ
クロノア
ぺいんと
ふん、と胸を張ってキメてくれるぺいんとに、無理だろ、と顔に書いて微笑むしにがみとトラゾー氏。へえ、と温和な笑みを返すクロノアだが、それ以上ツッコミはしない。
一度四人がふざけ出すとストッパーはトラゾーとクロノア二人だが、クロノア不在時はそのトラゾーすら巻き込んでしにがみとぺいんと二人はとことん遊び出す。打ち合わせが脱線して収集つかなくなると、記録を取るため傍聴しているマネージャー達が笑い崩れて打ち合わせどころじゃ無くなってしまう。
そのふざけ合いの中、また色々とアイデアが浮かぶものだからすごいとは思うけれど。
────保護者二人と子供が二人。同年代四人組なのに、不思議とそうも見える。
クロノア
3人
それから、またも取り止めのない会話は続き、過ぎた時間に慌てた人からログアウトして解散していく。その瞬間、さっきまでそこにあった空間は真っ暗になり、ぽつんと一人取り残された感覚になる。
撮影が終わった後、少しだけ寂しさが強まる瞬間だ。ゴーグルを外し、ふう、と息を吐くぺいんとは、椅子に座ったまま大きく伸びをして仮想空間ではない、見慣れた自宅の天井をしばらく見上げる。
また明日、と当たり前に言える仲間。変わらない楽しい日々。
ぺいんと
だから無意識に、"何かを変える"ことを避けてもいた。