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〝腰痛 肩凝り 眼の疲れ〟
たしか
そんなのから始まる キャッチフレーズがあったような
世の中を生きていたら
厳しい条件を満たしている時だけ いい事があるとか
そんなものばかりなのに
私の身体がこの血汗涙の 3点セットを備えても
心身共に 重くなっていくだけだった
でも
これって疲れというより 悲鳴だし
悲鳴というには 静かだし
じわじわと
タチの悪いやつら
だから
忙しい平日から解放された 少ない休日は
一日中 部屋で過ごしてしまう
ダラダラと昼頃に起きて
朝か昼かも分からないご飯を 黙々と食べて
その後は ネットで動画を見ていれば
いつの間にか16時を回っていて
特に意味無く終わっていく
今日の貴重なこの日曜日も
多分、その予定
…ほんと
なにやってんだろ、私
〝人生〟なんて
久々に使った単語が 自分から飛び出てくると
少しだけ 今までのことを考えたりしてしまう
ブランコが嫌いだった小学時代とか
ちょっと頑張った高校入試とか
地味に終わった青春とか
どんなことも
思い返せば 今よりも
少し輝いて見えてくる
なんなら 一発殴って欲しい
…あ
『殴る』で思い出したけど
高2ん時の 隣のクラスの男子
体育祭で 乱闘騒ぎを起こしてたっけ
ついでに
そいつ関連で 思い出したけれど
その男子のことが好きだった 仲良い友達に
少し意地悪そうな表情で
『〇〇って猫みたいだよね』
なんて言われたことがあった
…なんでだっけ?
ラゐン を開いて
一年ぶりに見た 友達とのトーク画面
軽い気持ちで スマホのキーボードをカタカタしたら
『久しぶりー、最近元気にし』
のところで手が止まってしまった
なんだか私って
思いついたら
動くのも見切るのも 早い気がする
こういう 気ままなところが
打った文章を消しながら
ちょっと納得してしまって
私一人の部屋で苦笑いを 浮かべる
そんな自分に少し嫌気がさして
数秒ムスッと黙っていると
時計の針がやけに煩くて
この空間すらも
嫌になってくる
私は実績のある〝猫〟なので
きっと途中で 怠くなってしまうだろう
だから
なるべく何も考えずに エレベーターのボタンを押して
駐輪場に着いたら
また何も考えずに 折り畳み式の小さな自転車を跨いで
そのまま当てもなく どこかへ漕ぎ出した
こんな新しいことをすれば 私の何かが変わるかもだなんて
そんな淡い期待すらも なかったのだけれど
何故この足が進むのか
私にも分からなかった
……
でも
本当は
泣くほど響いた言葉より
フッと思う温みより
荒んだ記憶が
いつだって新しいから
気付かぬうちに 無意識に
諦めぐせがついていた だけなのかもしれない
スピードは決して速いとは 言えなかったけれど
漕ぎ出してしまえば 早いもので
いつの間にか 隣町に繋がる少し大きな橋を
横断しようとしていた
橋の真下は 幅の広い大きな川
車が橋の上をけたたましく 行き交っていても
澄んだ水の音が十分に聞こえてきた
このまま木の幹の様に 水流が幾つも枝分かれて
私の知らないどこかへ 流れていくのだと思うと
なんだか訳も分からずに 名残惜しくなってくる
そんな自分自身に 思わずつっこみをいれて
正面に強めの風を受けながら
私は先の田園地帯に向かった
そんな距離を 来たわけでもなのに
脚に 疲労が溜まっているのが分かる
仕事で蓄積された疲れとは
少し違う気もするけれど
周りは青々とした 稲の新緑に満ちていた
田が大きく開けているせいか
奥の山が いつもより近くに見える
私が走っている道の両端に
左右に用水路を設けた畦道が 垂直に延々と広がっていて
それらを通り過ぎる度に映る 一瞬の景色は
電車から見る踏切に よく似ていた
草臥れた日常への既視感を感じても
心地がいいのは何故なのか
このままもう少し
〝進んでみよう〟だなんて
いつの間にか
そんなことを考えている私に 気がついた