ジョン
ここはどこだ?
ジョン
見慣れた自分の部屋なのに…
ジョン
なぜか違和感を五感が感じとる
ジョン
僕はパジャマを着てるな
この前彼女がくれた新品のパジャマだ。
水玉模様でかわいい。
汚れがひとつもない。
あれ?僕って彼女いたっけ
汚れがひとつもない。
まあいいや。
ジョン
僕は部活が終わって家に帰って
ジョン
速攻風呂入って
そういえばシャンプー切れてたな
母親に報告しなきゃ
ジョン
飯ができるのを待ってたんだ
晩飯なんだっけ?
もやし炒めだったような
ジョン
飯ができるの部屋で
ジョン
待ってるんだろうな
ジョン
きっと……?
ジョン
???
なんできっとって感情になるんだ?
確かに。
なんでそう思うの?
わからない。自然にそう思った。
一体何がどうなってんだ?
お前はどうかしてるよ
ジョン
。。
ジョン
とりあえず確かなのは僕の頭がおかしい事だ。
あ、思い出した。
………………
あ、思い出した。
家族を殺したんだった
あ、思い出した。
ひとりのこらず
なんでなんでなんでなんでなんでなんで
そういう気分だった。
殺したんだ
まずキッチンに向かった
殺したんだ
洗い物をしてる母親の小さな背中を通りすぎて
殺したんだ
冷蔵庫の横のキッチンの引き出しを開けた
殺したんだ
そして包丁を取ろうと手を伸ばした
殺したんだ
それを力強く握った。
殺したんだ
食卓に足は動いていた
殺したんだ
リモコンを取ろうと手を伸ばした父親の大きな背中を貫いた。
殺したんだ
その瞬間世界から音が消えた。
殺したんだ
父親は死んだ
殺したんだ
父親は自分の死を理解したかのように
殺したんだ
受け入れるように
殺したんだ
そのまま……
殺したんだ
そのまま、お皿に盛り付けられたもやし炒めに、
殺したんだ
ゆっくりと
殺したんだ
ただゆっくりと
殺したんだ
おでこをつけた。
殺したんだ
気づいたら…キッチンに足は動いてた
殺したんだ
気づいたら。
殺したんだ
気づいたら、洗い物をしてる母親の小さな背中を
殺したんだ
俺はみつめていた。
殺したんだ
いや小さな背中が俺をみつめていたのかも。
殺したんだ
その小さな背中を突き刺した
殺したんだ
俺は、殺した
殺したんだ
俺は母親の死を感じたし
母親の生を感じた。
母親の生を感じた。
殺したんだ
また母親も
自分の生を感じたし
自分の死を感じたんだろうなあ。
自分の生を感じたし
自分の死を感じたんだろうなあ。
殺したんだ
弟がテレビの前で俺が作ってやった
殺したんだ
ダンボールの人形と
殺したんだ
見えない何かを戦わせてた
殺したんだ
気づいたら弟の背中の前にいた
殺したんだ
その小さな小さな背中を刺した
殺したんだ
弟は刺されて
殺したんだ
血がたくさん出てるのに
殺したんだ
まだ人形ごっこをしてた
殺したんだ
弟はちゃんと死んでくれた
殺したんだ
でも弟の最期が台無しだ
殺したんだ
テレビの雑音のせいで
殺したんだ
俺はテレビを消した。
殺したんだ
…………
殺したんだ
身体中がもう真っ赤だ
せっかく彼女がくれたパジャマが…
水色のパジャマが真っ赤だ。
殺したんだ
…………
ジョン
僕は家族を殺してないぞ!
殺したんだ
いいや殺したよ!
殺したんだ
俺は家族を殺した。
殺したんだ
この手で
ジョン
じゃあなんで僕のパジャマは
ジョン
血に染まってないんだよ!
殺したんだ
………………
殺したんだ
…………。
ジョン
テレビの音が
ジョン
聞こえるし
ジョン
まな板を叩く包丁の音も聞こえる
殺したんだ
…………
殺したんだ
いや俺はテレビを消したぞ?
殺したんだ
しかも母親も殺したから
殺したんだ
まな板の音も嘘だ!
殺したんだ
ぼくはこのてでしっかりころしたんだ!!!
ジョン
なにいってんだよ……
ジョン
………
ジョン
あ、そっか
ジョン
何勘違いしてんだ俺は笑
ジョン
ほんとに俺って馬鹿だよな笑
ジョン
………
ジョン
…………。
ジョン
今から殺すんだった