「……はじめまして、ですよね?」
その言葉が、すべてだった。
いつもみたいに優しい声で、
何も知らない君が、俺を他人として見ていた。
思い出のすべてを失くした君。
一番大切だった時間も、俺の存在も、
なにもかも――なかったことにされてしまった。
•
「また好きにさせてやる」
最初はそう思った。
もう一度、君と出会って、
もう一度、惹かれてもらって、
もう一度、恋をしてもらおうって。
でも、時間は優しくなかった。
君は少しずつ思い出しながら、
少しずつ遠ざかっていった。
•
それでも、ずっと思ってた。
君には幸せになってほしい。
たとえその隣に、俺がいなくても。
•
この気持ちはもう伝えない。
戻れない場所に置いていく。
ただ、最後に君の心のどこかで、
俺のことが少しでも残っていたなら――
それだけで、もう十分だ。
•
これは、
忘れられても、愛し続けた俺の話。
そして、
君にどうしても伝えたかった言葉。
――だいすきでした。