均衡のほころび
完璧な均衡だった。
五人で立つステージ。
守られた距離。
触れない体温。
リーダーとして在り続ける仁人と、
その隣で静かに支える勇斗。
甘い香りが混ざり合っても、
一線だけは越えない。
それが、彼らの“正しさ”だった。
けれど——
無自覚な笑顔が、
無防備な体温が、
もうひとつのΩの存在が、
その均衡に小さなひびを入れる。
守るための抑制は、やがて焦燥に変わり、
信じていた距離は、疑いに揺らぎはじめる。
甘やかな夜の残り香。
触れないはずの指先。
交わらないと決めていた視線。
それでも、心は選んでしまう。
まだ番ではない。
まだ壊れていない。
——けれど確実に、均衡はやわらかく壊れていく。
ステージの光の裏で始まる、
五人の静かな崩壊の物語。