名門高校の生徒会長・月城静夜は、
規律と秩序を守る“正しさの象徴”として生きていた。
問題ばかり起こす生徒――黒瀬影。
教師からも生徒からも見放されたその少年を、
月城は生徒会による「特別監視対象」に指定する。
放課後の生徒会室。
反省文、清掃、監視。
それは更生のための措置のはずだった。
しかし、
無気力な瞳の奥にある優しさ、
名前を呼ばれないことに慣れた孤独に触れるたび、
月城の中で、決して持ってはいけない感情が育っていく。
――守りたい。
――檻に入れてでも、離したくない。
一方の黒瀬もまた、
自分を「管理対象」としか見ないはずの生徒会長が、
誰よりも自分を見ていることに気づいてしまう。
だが、立場も規則も、
この恋を許さなかった。
名前を呼べば、線を越える。
呼ばなければ、何も始まらない。
それでも月城は、
たった一度だけ、彼の名前を呼んでしまう。
――その瞬間から、
ふたりの未来は、静かに壊れ始めた。