精神科医の転生令嬢は、推しの闇堕ち魔王を救いたい
現代日本で精神科医を志す研修医・私の唯一の癒しは、乙女ゲームの"推し"――悪役の魔王アレクシスを愛でること。
母后から長年の心理的虐待を受け、「呪われた王子」として闇堕ちする彼を、「理解者さえいれば救えたのに」と画面越しに嘆いていた。
そんな夜勤明けの帰り道、トラックに轢かれ目が覚めると――ゲームの世界に転生していた。しかも22歳、推しの婚約者「リリア・リリエンタール」として。
ゲームのシナリオでは、アレクシスは23歳で流行病にかかり、全身に痣が残る。その痣がきっかけで更に虐げられ、完全に闇堕ちして魔王となり、聖女(ヒロイン)に討伐される運命だ。
そしてリリア自身も、回復魔法の才能がなく「失敗作」と呼ばれ、聖女として覚醒した妹マリアと比べられ続けた末に、悪役令嬢として追放されるルートを辿る。
――そんな未来、絶対に変えてみせる。
魔力はない。でも、私には現代医学の知識がある。
ガスライティングによって「自分は汚れた存在だ」と刷り込まれたアレクシスの心を、精神医学の知見で解きほぐす。換気、清掃、栄養管理、手洗い――魔法の代わりに公衆衛生で流行病を阻止する。そして催眠療法で、彼の無意識に刻まれた"呪いの言葉"を一つずつ消していく。
「魔法が効かぬ病を、無能な令嬢が水と酒で止めた」
その噂が国中を駆け巡る頃、アレクシスは魔王ではなく、凛々しい王太子として覚醒しつつあった。
しかし、二人の絆を快く思わない者たちが動き出す。妹マリア、そして母后イザベラ。彼女たちの悪意の裏に潜む病理を、リリアは精神科医の目で解き明かしていく。
推しを救う戦いの中で、リリアもまた、ずっと失い続けてきた自己肯定感を取り戻していく。
そして二人は気づく。互いが、互いにとって唯一の理解者であることに――。
魔法なんていらない。私が、あなたの呪いを解いてみせる。