【mmmr】 神隠し

チャットアプリでぐさおさんから通知が来る。 なんとも最悪なことに祭りがいよいよ明日に迫ってしまった。 天気予報はあの人同じように快晴。星がよく見えるそうだ。 ここまで来るとバックれる訳には行かない気がする。 私は優しいですからね！！！ と、言っても本当に行きたくないわけですが……

スマホと家の鍵をポケットに入れ、散歩に出かけた。 と言ってもどこに行こうか。 ブラブラ歩くのも手ですね〜

……あ、そうだ。 秘密基地行きましょ秘密基地！！ 10年前に行ったきり行ってなかったですし行く気もなかったですからね！ 明日夏祭りに行くってことで久々に……ね？ あそこまで行きたくなかった秘密基地にも行けるなんて……私は成長しましたね〜！

進みなれていたはずの道。 草木も成長して、時間も進んで……全く見慣れない道ですね。 記憶とは全然違います。 ……えーっと、確かあとはこっちを＿＿＿

着いた。 開けた場所。 中心に木が1本。 お気に入りだったタイヤのブランコ。 木の板で作った秘密基地。 懐かし〜……。 木が成長して、ツタが生い茂って……私が知っているものとは随分違っちゃってるけど……。 タイヤのブランコ、取り合いになったなぁ、 そういえばハンモックも作った。 寝そべり方を間違えてハンモックに埋まったんだっけ。

これ以上ここにいると明日寝れませんしね……w

いよいよ明日、友人と夏祭りに行ける。 私こういうの初めてですから結構嬉しいです！！ 楽しみすぎる……。

あ、そうだ。 グループチャットでLatteさんとめめさんに連絡入れといましょ！！ 忘れてたら本末転倒ですから……！！

約束当日。 指定された場所に、15分程早くやって来た。 10年経ちましたけど、祭り特有の音楽と提灯、賑わいようは相も変わらず……。

なんだか私お婆ちゃんみたいなこと言ってますね。 私まだピッチピチの高校生なんですけど！！失礼な……。

そういえば私、浴衣なんて着るの初めてですかね〜。 ぐさおさんに連れられて下駄と浴衣をレンタルしに行きました。 うん、動きにくい。

ぐさおさんは薄いピンクを基調とした薄緑色の花が描かれている浴衣。 Latteさんは濃い緑色を基調とした猫のシルエットと小さな花が描かれている浴衣。

彼女らは元がいいですからなんでも似合う。

因みに私の浴衣は紺色と白色のストライプ模様。その中に花が散りばめられている。

やっぱり美人な私には似合っちゃいますよね

射的とか金魚すくい。 トルネードポテトなんかも買って、食べて。 写真だって撮った。 軽快な音楽とともに歩き回り、夏祭りを満喫する

意外と楽し…い？かな

屋台でりんご飴を人数分購入し、 早速絶景スポットとやらに足を運ぶ

神社……？ 自然と私の足取りが重くなる。鉛が着けられたみたいに。 でも置いていかれる訳には行かないので精一杯足を動かす

2人は楽しそうに話しながら近くにベンチに座りりんご飴を頬張る。 私なんて到底食べる気にはなれないなぁ……。 なにか飲み物でも飲みましょうかね…ポテトだけじゃ流石に……

神社から逃げるように足を進め、少し離れた自販機に小走りで向かう。

小銭を入れ、適当に缶コーヒーを買う。 りんご飴には合わないだろうけど……ま、いっかな。 ｶﾞﾀﾝと派手な音を立てて自販機からコーヒーが出てくる。

戻っている最中に頭上から派手な音がした。 咄嗟に見上げるとカラフルな夏に花が夜空に咲いている。 早く戻らないと2人とも怒りますかね。 浴衣で走りにくいけど急ぎますか

先程2人が座っていたベンチの目の前まで来た。 ……が、見当たらない。どこにもいない……気がするんだけど

まさか私が迷子になんてなるわけが無いでしょうよ。 とりあえず手元にあるスマホで2人に連絡をしよう。 ないとは思うけど迷子だったら困りますし

返事がない。 既読もつかないし。 仕方ない、ちょっと電話しますか

……え嘘でしょ、これだけ鳴らしてるのにでな＿＿＿ 微かに着信の音がする。 私のものでは無い。 ……この辺に人はいないし…どこから………

近くのベンチから音がする。 ぐさおさんとLatteさんの携帯だ。 Latteさんの携帯は着信音がなり、微かに振動している。 画面には めめんともり の6文字が表示されている。 他にもベンチには2人が食べていたであろうりんご飴や財布、下駄までもが散乱している。

『〇〇君、行方不明になったらしい。』 『なんでも神社の近くで下駄だけを残して消えたんだとか……』 『神隠し伝説ってあったよね』

悪い妄想ばかりしてしまう。 その度に頭を振って違うと自分に言い聞かせる。 私のスマホが振動した。着信だ。 ほら見ろ、ドッキリじゃないか

すぐさま通話ボタンを押しスマホを耳に当てる。 ドッキリの報告でしょ？そんなに焦る必要ないって

聞きなれない声が響く。 麗良…れいら？ 私の妹だ。1歳年下の。 なんだ、この子？麗良のお友達か？今はそれどころじゃ……

今なんて言った？ 妹が行方不明……？何が起こって…

今にも泣きそうな声で訴えかけられる。

……私と同じ状況？ 神社で目を離したら……って

私がいる場所の反対……この神社を挟んでみぞれって子がいるのか……。 ……違うよ、神隠しなんかじゃない。 同じ状況だし、私の知り合いだし……きっとみんなでドッキリをしかけてるんですよ。 きっと向かったらドッキリ大成功って、言ってくるんですよ。 そうだ、2人の所持品を持ってって、これは私のもんですって言って困らせましょう。 ドッキリをしかけた方が悪いんですよ……

きっと、嘘だって言ってくれますよね……？