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ぬいぬい
8.重なる声
翌日の放課後。 朝方は雨が降っていたものの今はもう雨が止んでいた。 空にはまだ灰色の雲が残っているけれど。
私はスクールバッグを肩にかけながら校門を出る。
頭の中では、昨日のLINEがずっとぐるぐるしていた。
…………思い出すだけで心が落ち着かない
蒼琉は昔から誰にでも優しい。 でも昨日の言葉は、なんだか少しだけ特別に聞こえたような――気がした。
月乃星凛
小さく呟いて自転車の鍵を取り出す。
そのときだった。
??
柔らかく落ち着いた声。 そして何回も聞いた――声。
聞き慣れているはずなのに、心臓が一瞬跳ねた。 振り返るとそこにいたのは予想通りの人物だった。
黒いキャップにマスクをしていた蒼琉が立っていた。
月乃星凛
吉葉蒼琉
月乃星凛
吉葉蒼琉
蒼琉は私の自転車の横に立った。 近い。 少しだけ私の体が固くなった。
吉葉蒼琉
吉葉蒼琉
月乃星凛
吉葉蒼琉
その名前を聞いた瞬間、胸がどきっとした。
吉葉蒼琉
私は一瞬言葉に詰まる。 だって。 それは推しの話で。 でも同時に―― 蒼琉の話でもある。
月乃星凛
やっと口から出た言葉は昨日のLINEと同じ感想。
その返しに蒼琉は少し首を傾げる。
吉葉蒼琉
月乃星凛
私は蒼琉を直視できず視線を逸らした。
月乃星凛
吉葉蒼琉
月乃星凛
月乃星凛
そこまで言って、はっとする。 なんでこんなに真剣に語ってるんだろ… 恥ずかしくなって黙ると、蒼琉がふっと笑った。
吉葉蒼琉
その声は、少し柔らかかった。
吉葉蒼琉
胸の奥が、また少し騒がしくなる。 そのとき。 蒼琉がふと周りを見た。
吉葉蒼琉
月乃星凛
吉葉蒼琉
私はきょとんとする。 状況を飲み込めない。
月乃星凛
吉葉蒼琉
月乃星凛
一瞬、言葉が飲み込めず間抜けな声が出る。
吉葉蒼琉
蒼琉は少し笑う。
吉葉蒼琉
月乃星凛
確かに言ってた。 あの頃は。 けれどあの頃はローレリアンの正式な声優がまだわからなかったときの話であって…今は…
月乃星凛
月乃星凛
吉葉蒼琉
蒼琉は少しだけ近づいた。 距離が一歩、縮まる。 肩が触れそうなほどの距離。 僅かに動くと触れてしまいそう…
胸が、強く鳴った。 蒼琉はほんの少し声のトーンを落とす。
そして―― ローレリアンの声で言った。
ローレリアン
低くて…どこか優しい…推しの声
ローレリアン
私は息を止めた
画面越しじゃない。 イヤホンでもない。 すぐ目の前で。 まるで私がアメリアで実際にローレリアンと話しているみたいだった。
吉葉蒼琉
蒼琉の声に現実に引き戻された。 言葉が出ない…前だったらエナジードリンクがなんとかとか言っていたのに…
月乃星凛
それしか言えない。言えなかった。 蒼琉は少しだけ照れたように笑う。
吉葉蒼琉
月乃星凛
吉葉蒼琉
蒼琉は少しだけ真剣な声になった。
吉葉蒼琉
月乃星凛
吉葉蒼琉
胸がまたドキッとする。 どうしてだろう。 推しの話をしているだけなのに。 蒼琉の顔を見ると、なんだか落ち着かない。
月乃星凛
やっとそう言うと、蒼琉は少しだけ笑った。
吉葉蒼琉
そして軽く手を振る。
吉葉蒼琉
月乃星凛
吉葉蒼琉
蒼琉は歩き出して、少ししてから振り返った。
吉葉蒼琉
月乃星凛
吉葉蒼琉
そう言って手をひらひら振ると、そのまま去っていった。 私はしばらくその場に立っていた。 胸がまだ落ち着かない。
月乃星凛
ローレリアンの声を聞いただけ。 それだけなのに。 どうしてこんなに心臓がうるさいんだろ…
9.境界線
翌日の昼休み。
教室の後ろで、誰かが声を上げた
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
スマホを囲んで、数人が集まる。 私は自分の席で、柚葉とお弁当を食べつつ聞いていた。
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
嬉しい。 本当に。 推しの声優が人気になるなんて、ファンとしては嬉しいことのはずだ。
なのに。
胸の奥が少しだけ、ざわざわした――