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ある日、夜の体育館に
ふらりと現れた彼女は、
ひとりボールを打っていた。
汗だくになりながら、
無言で繰り返す。
トス、ジャンプ、スパイク。
ただ、それだけ。
誰に見せるでもなく、
褒められることもなく。
孤爪 研磨
声を掛けてきたのは、
音駒の孤爪研磨だった。
珍しく、彼女に関わろうとした
一人。
孤爪 研磨
彼の声は純粋な疑問だった。
だが、彼女は答えなかった。
答えを持ち合わせていなかった。
私がバレーを続けるのは、
生きてる証明が欲しいから。
でも、言葉にした瞬間
それさえ壊れてしまいそうで_
沈黙のまま、
ボールを打ち続ける彼女を見て、
研磨はそれ以上何も言わず、
立ち去った。
その背中には、彼なりの
気遣いが滲んでいた。
けれど、その優しさすら
今の彼女には信じられなかった。