テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

一覧ページ

LINE464

第1話 - あ

2023年03月23日

#恋愛

#スカッと

田中俊樹

ケイ

お義姉さーん、今日のお弁当だけどさー

リン

ケイさん、何ですか？

リン

ケイさんの嫌いな野菜は入れてないはずだけど。

ケイ

いやさー、彩りイマイチでげんなりだわー。

リン

は？

ケイ

だからー、色も茶色多めでさあ、全然映えないんだよね。

リン

あのね。こっちは仕事もしながらお弁当作ってるの。

リン

内容にケチつけるのならもう作らないから。

ケイ

はあ？

ケイ

お義姉さん、いつも自分とお兄ちゃんのお弁当2つ作ってるでしょ

ケイ

お弁当が1つ増えても問題ないって言ってたじゃん。

リン

それを言ったのは私の夫、コウ。

リン

コウが勝手に妹であるあなたにいい顔したくして引き受けた。

リン

そして私に丸投げしたの。

リン

なあなあで作っていたけど、やれ嫌いな野菜があるだの

リン

テンション上がるおかずがないのだ文句ばっかり。

リン

これからは自分でやってね。

ケイ

ええーケチ！

リン

だったら、あなたのお母さんに頼みなさいな。

ケイ

ええ？お母さんに作らせると、もっとババくさいんだもん！

リン

じゃあ自分で作ればいいじゃない。

リン

私も毎日3人分作って、駅であなたに渡すとか大変なのよ。

ケイ

いやあ、私、料理苦手でさ…

ケイ

まあ、家事全般苦手なんだけど、特に料理はダメなの。

リン

それなら無理してお弁当にする必要ないんじゃない？

リン

今は映える上に栄養価の高いランチはいっぱいあるわよ。

ケイ

いやいや、それじゃあ意味がないのよ。手作り弁当じゃないと。

リン

は？

ケイ

と、いう訳で明日はもっと映えるお弁当にしてね！

ケイ

じゃないとお兄ちゃんに言いつけてやるから！

30分後

コウ

おーい、リン。

リン

コウ、どうしたの？まだお昼時間？

コウ

ああ。さっきケイからLINE来たんだけどさ…

リン

もしかしてお弁当の事？

コウ

そうだよ。ケイに酷い事言うなよ。

リン

酷い事って、人にお弁当作らせておいて、ケチつけるのは

リン

酷くない訳？しかも材料費1円ももらってないのよ？

コウ

あいつも新卒で入社したばかりで、仕事覚えるので精一杯なんだ。

コウ

弁当作って支えてやるのが家族だろ？

リン

それならあなたが作ってください。

コウ

いや、俺は料理は苦手で…

リン

そうね。だから食事は私が担当している。

リン

でも最近、他の家事も私ばかりやってるのよね。

コウ

俺も仕事が忙しくなってきてだな…

リン

それは私も同じ何だけど？

コウ

だけど俺の方が給与が多いぞ！

リン

そんなに差はないと思うけど…

リン

とにかく我が家の家事分担については置いておいて、

リン

世帯が別のケイさんのお弁当まで作るのはもううんざりなのよ。

リン

しかも感謝どころか、文句までつけて。

コウ

助け合うのが家族だろ？

リン

助け合いって、こっちが一方的に助けてるだけじゃない？

コウ

いい加減にしてくれ！ケイは社会に出たばかりなんだ。

コウ

あいつも大人になるから。義姉として長い目でみてやってくれよ。

リン

会社で働いてるならもう立派な大人だと思うんだけど…

30分後

ケイ

リンさーん！お兄ちゃんからLINEあったでしょ？

リン

うん、まあ。

ケイ

ふふ。じゃ、そういう事で明日もお弁当作ってよねー？

リン

わかったけど、文句を言うのは止めて欲しいな。

リン

栄養や彩りもちゃんと考えて作っているから。

リン

それから、材料費ももらいたい。

ケイ

ええ？旦那の妹からお金取るの？意味わかんない。

リン

あなたはご実家で生活していて、料理もお義母さんに

リン

作ってもらってるらしいね。

リン

でも、家のご飯もタダじゃ作れないんだよ？

リン

材料費や水道光熱費もかかっている。労力も時間も費やしてる。

ケイ

それくらい払ってくれてもいいじゃん！

ケイ

夫婦共働きで余裕あるでしょ？

リン

だからうちが余裕がなくてお金が欲しい訳じゃないの。

リン

もう大人なんだし、やってもらってばかりじゃダメなんだよ？

ケイ

ますます意味わかんなーい。

ケイ

リンさん、妹いるのにさあ。

リン

は？

ケイ

親からお姉ちゃんは妹には優しくって教わらなかったんですかあ？

リン

優しくするのと与えてばかりなのは違うよ。

リン

私の妹も成人しているけど、そこはちゃんと弁えている。

リン

私や親から何かしてもらったらお礼は言うし対価も払ってる。

ケイ

つまり、おカネが欲しいって事？

ケイ

素人の弁当に毎回500円欲しいとか？

リン

だから、そうじゃなくてね…

ケイ

もうホント、頭きちゃう。

ケイ

またお兄ちゃんに言ってやるんだから。

リン

…わかった。どうぞお好きに。

リン

でも、もう今後あなたの分は作らないからね。

30分後

コウ

おい、リン、いい加減にしろよ！

リン

…本当に告げ口したんだ。

リン

さっきケイさんと話した時点で

リン

お昼休み時間終わりかけてたんだけど。

コウ

妹が悲しんでいるのに仕事している場合じゃないだろ？

コウ

あいつ、泣いてたんだ。妹に冷たく当たるなんて酷い奴だな！

リン

じゃあもう私のお弁当を頼らないでくれるかな？

コウ

バカを言うな！

コウ

あいつはお前の弁当を楽しみにしているんだ。

リン

にしては文句ばかりでお礼の1つも言われた事ないんだけど。

コウ

家族なんだから、お礼とか必要ないだろ？

リン

親しき仲でもお礼や感謝の言葉は大切だよ？

コウ

ケイもお前には感謝しているに決まってる！

リン

そうは思えないから作りたくないんだけど。

コウ

それに、ケイから金を請求しようとしたな？

コウ

家族に対して、なんて浅ましいヤツなんだ！

リン

材料費も労力にも対価を払う気がない方が浅ましいと思うけど？

コウ

お前、屁理屈ばかりだな！そんな女とは思わなかった。

リン

私も、あなたがそこまで妹に甘いなんて思わなかった。

コウ

俺の妹を無碍にする女とやって行く気がしない。

リン

は？

コウ

今日は俺、実家に帰るわ。

リン

え？ちょっと待ってよ。

コウ

お前がケイに謝るんだ。

コウ

それから毎日弁当を作ると約束するなら戻ってきてやる。

リン

ちょっと待ってよ！そんなのおかしくない？

コウ

おかしいもんか。お前がどれだけケイに酷いか頭を冷やすんだな。

夕方

ケイ

リンさん。反省した？

リン

ケイさん。コウは家にいるの？電話もLINEも出てくれないの。

ケイ

まずは私に謝る方が先じゃない？

リン

は？

ケイ

冷たくしてすみません。

ケイ

今後は毎日お弁当を作らせてもらいますって。

リン

あのね…

ケイ

誠心誠意謝れば、お兄ちゃんに取りなしてあげるけど？

リン

…ケイさん。この度は申し訳ありませんでした。

リン

今後は毎日お弁当を作らせてもらいます。

ケイ

確かに言ったね？

ケイ

よしよし。じゃあお兄ちゃんに取りなしてあげましょうｗ

ケイ

その代わり、明日のお弁当は駅前のカフェのランチみたいにして。

ケイ

そこのインスタ教えるから、ばっちり再現してちょうだい！

リン

…わかったわ。

ケイ

じゃ、よろしくー。

ケイ

あ、再現度低かったら私もお兄ちゃんも承知しないから。

ケイ

そこんとこ分かってよね！

10分後

コウ

おい、リン。

リン

コウ。あなたの言う通り、ケイさんにお弁当作るから。

コウ

ああ。いい心がけだ。

コウ

今後弁当を作ってる誠意が見られるなら戻ってやるよ。

リン

…わかったわ。

コウ

あ、それから俺が戻ってくる条件として

コウ

家事全般もお前がやるのも追加なｗｗｗ

リン

は？どういう事よ！

コウ

どういう事って、そのままじゃねえか。

コウ

俺に戻って来てほしかったら、俺の家事分担はナシって事でｗ

リン

そんなのってないよ！

コウ

じゃあ、俺戻んねーわ。

リン

そう。それならケイさんにお弁当作る理由もなくなるね。

コウ

バカを言うな。弁当を作らなきゃ離婚だ。離婚。

リン

はあ？何言ってるの？

コウ

実家は母さんが全部やってくれて楽だわー。

コウ

あ、もちろん実家にいる間は生活費は出さねーからな。

リン

はあ？何ですって？

コウ

だって俺が暮らしてないのに生活費渡すっておかしいじゃん。

リン

結婚している意味がないじゃない。

コウ

それは俺のセリフだ。

リン

はあ？

コウ

結婚したのにやれ家事は公平に、生活費も公平にだの。

コウ

俺に負担をかけやがって。何の為に嫁をもらったんだよ。

リン

そんな…

コウ

と、いう訳で、弁当はちゃんと作れよ！

コウ

1日でもサボったら離婚だからな。

翌日　夕方

ケイ

リンさん！

リン

ケイさん。お弁当はどうでしたか？

ケイ

うんうん。まあ及第点かな？

リン

そう。それは良かった。

ケイ

使ってる野菜がちょっと地味だったけど、まあいいでしょう。

ケイ

明日は気を付けてね。

リン

そう。

ケイ

あ、でもね。会社のみんなにお弁当褒められちゃった！

リン

それは良かった。

ケイ

今日は一段と豪華だねって。憧れの先輩に言われちゃったの！

リン

そうなんだ。

ケイ

でね。明日は、先輩のお弁当も作るって言っちゃった！

リン

は？

ケイ

うふふ。先輩、毎日お弁当作ってきて偉いなってほめてくれたの。

リン

ちょっと待ってよ！明日５人分のお弁当作れって事？

ケイ

そうなるかなー？ちなみに明日「から」

ケイ

素材も無農薬とか自然や環境を意識した物を使ってね。

リン

いやいや、そういう野菜は近所のスーパーじゃ売ってないし。

ケイ

探せばあるでしょ？

リン

今から探しに行けって事？

ケイ

そうだよ。できなかったらお兄ちゃんに言うから。

リン

コウに…それは…

ケイ

じゃ、言う事聞くの。もちろん女子力も十分伝わるようにね。

ケイ

お嫁さんにしたい、って思うような！

リン

随分と注文が多いのね。

ケイ

えー？文句あるんだ？

リン

わかった。じゃあ準備あるから私はこれで。

ケイ

よろしくねーｗｗｗ

翌日　昼

ケイ

ちょっとリンさん！

ケイ

リンさん！なんなのあの弁当は？

リン

あ、ケイさん。お弁当食べてくれた？

リン

先輩は喜んでもらえたかしら？

ケイ

ふざけんじゃないわよ！

ケイ

何なの、あのふざけた弁当は？

リン

ふざけたって、全部ケイさんのリクエスト通りだけど？

ケイ

リクエストぉ？その辺の雑草を使ったでしょ？

リン

は？雑草？スベリヒユとエンサイだよ？

ケイ

へ？何それ？

リン

まあどこでも生えてるから雑草と言えば雑草かな？

リン

でも安全に食べられるよ。

リン

もちろん農薬や除草剤撒いてない場所から採ったし

リン

きちんと洗ってるから。

ケイ

でも、先輩食べて微妙な顔してたの！

リン

そう？でも味付けも盛り付けもケイさんが送って来た

リン

カフェランチにきちんと寄せたからOKよね？

ケイ

冗談じゃないわよ！

ケイ

盛り付けだって、卑猥な形してたじゃない！

リン

え？無添加で有名なブランド牧場のソーセージ使ったのに？

ケイ

その盛り付け方が、どう見ても男のアレにしか見えないのよ！

リン

それはケイさんの見え方じゃないんですか？

ケイ

先輩もドン引きだったし！

リン

いやいや、でもソーセージはおいしかったでしょ？

ケイ

先輩も美味しいって言ってくれたけど、

ケイ

もうお弁当はいいよって言われたの！

ケイ

料理上手でならした私の評判ガタ落ちよ。どうしてくれるの？

リン

元から料理上手どころか、料理もできない癖に。

ケイ

うるさいわね！

ケイ

お兄ちゃんに言いつけてやるんだから！見てなさい！

リン

はいはい。

30分後

コウ

おい、リン！

コウ

何だあの弁当は？

リン

何だって、ケイさんリクエストの無農薬野菜と無添加ソーセージを

リン

使ったカフェランチ風のお弁当よ。

コウ

無農薬野菜ってその辺に生えた雑草じゃねーか！

リン

兄妹揃って同じ事を言うのね。

リン

料理を全然しないから、雑草と野菜の区別のつかないのよ。

コウ

ふざけるな！しかもソーセージも卑猥な形に盛り付けやがって！

コウ

会社の人にばっちり見られたんだぞ。

リン

それはコウの発想が卑猥だからじゃない？

コウ

ふざけんな！もう許さないぞ！

コウ

しばらくどころかずっと家に帰らないからな！

コウ

離婚してやる。それが嫌なら迷惑料を払うんだな！

リン

どうぞ。

コウ

へ？

リン

お弁当はもう食べたのかしら？

コウ

こんなの恥ずかしくて食えねえよ。

リン

そう。全部食べたら分かったはずなんだけど。

コウ

どういう意味だ？あ！弁当の底にビニール袋が敷いてある。

リン

それを開いてください。

コウ

はあ？離婚届だあ？てめえ、いい加減にしろよ！

リン

さっき離婚してやるって言ったじゃない。

コウ

それは勢いで言っちまっただけなんだ。

リン

もうあなたと、ケイさんのわがままに付き合うのはうんざり。

コウ

今日は家に帰る！きちんと話し合おう！

リン

いやもういいですから。

リン

そのまま実家でお義母様にお世話されてください。

コウ

すまなかった！家事も俺の担当はきちんとやるから。約束する！

リン

前も話し合って、数日しか持たなかったじゃない。

コウ

今度は心を入れ替えるから。信じてくれ！

リン

ここ数日1人で暮らして快適だったの。

コウ

へ？

リン

もちろん家事は自分1人でやるんだけど、

リン

本当はやるべき人がやらないから代わりにやってるのと

リン

最初から自分の為だけに家事してるのとじゃストレスがないの。

コウ

だから、これからは俺も家事をするから。

リン

それに、あなたは言ったわよね。

リン

家事も公平、生活費も公平でこれじゃ結婚した意味がないって。

コウ

それも勢いで言っちまって…

リン

その言葉で、家の事も金銭的な事も私に寄りかかってるって

リン

気付いちゃったの。

コウ

へ？

リン

毎月生活費用の通帳に振り込んでいる額がおかしいのよね。

コウ

い、いやそれは…

リン

きちんと調べなかった私も悪いんだけど。

リン

貯金用の口座にもあなたの振り込みはここ数ヶ月なかったし。

コウ

う…それは…色々出費が重なって…

リン

もう何に使っているか調べる気もないから。

リン

とっとと離婚しましょ？

コウ

すまなかった！離婚だけは勘弁してくれ！

コウ

金はスマホの課金や飲み会に使ったんだ。

コウ

今度からは散財もしない。家事もちゃんとやるから。

リン

もう遅いよ。

後日談

リン

ケイさんは先輩にフラれ、会社でも好機の目に晒されてしばらくは

リン

肩身の狭い思いをしていたそうです。

リン

その件で反省し、お義母さんに料理を一から習うように。

リン

今では自分でお弁当を作っているとか。

リン

しばらくして謝罪があり、リンさんとは和解しました。

リン

それでもコウとの離婚の意志は変わらず、協議の末離婚しました。

リン

コウはケイさんとは違い、実家で自堕落な生活を送り、

リン

散財も加速してついには借金までしているそうです。

リン

私は今は自分のためだけにお弁当を作る毎日です。

リン

お弁当作りは節約にもなり、今度貯金で旅行に行く予定です。

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

田中俊樹

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE464

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#恋愛の新着小説
一覧

関連するタグ

LINE464

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#恋愛の新着小説一覧

関連するタグ

#恋愛の新着小説
一覧