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夜道を歩けば

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夜道を歩けば

1 - 夜道を歩けば

♥

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2019年05月06日

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きっと、もう

春じゃないんだろうな

ベッドでごろごろしていたら

涼しい夜風が入ってくる

この前までは桜が綺麗に散っていたのに

その枝にも緑の葉が付き始めて

昼間はちょっとだけ

じんわりと暑い

多分、いわゆる季節の変わり目

春でもないし

夏にもなれない

そんな

なんとも言えない今日この頃の

この夜の

ちょっとした

お話です

わたし

さッ…(む)

わたし

くはないんだよなぁ

わたし

寒い気がする…

気がするだけ

ベッドに寝そべりスマホをポチポチ

せっかくの連休なのに

なーんもする事なかったし

ベッドでひたすらごろごろしてた

そしてなんか程よく寝付けない

羽毛布団を被ると暑いし(当たり前か)

窓開けてないとやっぱり暑いし

でも布団剥いでるとちょっと寒い気がするし

わたし

寒いし…

じゃあやっぱり寒いんだ

この意味の分からないサイクルに

ついに嫌気がさした私

外に出たら何かあるかもと

そんな確信のない希望にすがってしまったのは

頭上のカーテンが手招きするようになびくから

だから私は起き上がって

夜を散歩することにした

【夜道を歩けば】

ガチャ…

わたし

いや、寒いじゃんっ!!

玄関のドアを少し開けただけで

鳥肌がうばばぁって立つ

長袖シャツ一枚だし

ちょっと舐めてた

わたし

カーディガン着ていこ…

5分後…

わたし

よし、完璧

わたし

まずはどこ行こうかな

って言いながら適当に歩き出してみる

まぁ

目的がないのも

たまには良いのかも

ずっと追っかけるのって疲れちゃうし

私の場合は無計画過ぎるんだと思うけど

テクテクと

歩んだ先は住宅街

普段の生活動線なら来ない場所

わたし

こんなとこあったんだ

わたし

わ、綺麗なうちだなぁ

わたし

この赤レンガっぽい屋根瓦って良いよね…

わたし

アレだよアレ…

わたし

えっとー…

わたし

イタリア風?

なんだイタリア風って

わたし

こっちのお家は…

わたし

わ!!

真っ黒の大きなドーベルマン先輩が

ぐがぐが言いながら庭で寝てた

わたし

なんでここで飼ってるのぉ…:(;゙゚'ω゚'):

口元を手のひらで押さえて

起こさないようにゆっくりと

一歩一歩進んでく

ドーベルマン先輩

グぅ…ぐッ…

ドーベルマン先輩

…ぶしゅん!!

寒さからかは知らないけれど

自分のクシャミで起きた先輩が

私に気付くとワンワンと吠えてきた

わたし

ひぃーー!!

ダダっと住宅街を走り抜ける

後ろから追われているような不安で

無我夢中でひたすらに走った

気付くと車の通りが少ない道路に当たる

国道と交差する外れの道

ドラッグストアやラーメン屋さん

24時間営業のお弁当屋さん

ほっとする明るいコンビニ

そんなものが建ち並ぶこの道

意外と嫌いじゃないんだよね

歩道をゆっくり歩いてたけど

さっきの走りがちょっと効いて

少し暑い

身体の熱を逃がす様に

シャツの首元をパタパタしてみた

だんだん落ち着いてくると

さっきまで聞こえなかったものが

分かってくる

遠くで走るのは電車

踏切の鐘も聞こえるな

コンビニから出た時のドアの音

いま目の前を通った自販機のじぃーっていう音も

夜の方がよく聞こえるかも

左横に視線をずらすと

お弁当屋さんが見える

中では受付の店員さんが

大きなあくびをしていた

わたし

遅くまでお疲れ様です…

そろそろ折り返し

家に向かって歩かなきゃ

そういえば

本当に連休あっという間だったなぁ

本当に本当に

なーんもしてないし

私のGWは

恐らくゴールデンウィークとは読まない

薄暗い部屋にこもりっぱなしだったから

ゴキブリウィーク辺りが妥当かも

わたし

なにかすれば良かったかなぁ

わたし

たぶん結局なんもしないかなぁ

わたし

…来年だなぁ

来年も同じ気がするけれど

とかとか考えていれば

小さな田んぼにたどり着く

わたし

おー久しぶりだな、ここ

チロチロと流れる水の音

鼻をつく藻の香り

幼い頃

おばあちゃんにおんぶされながら嗅いだ香りと一緒だ

わたし

懐かし…笑

わたし

確かこうして…

田んぼの水に手を入れて

わたし

ひゃー冷たい!笑

大人になってもこんな事ではしゃげるのだから

私は幸せ者なんだろうな

わたし

はぁ…笑

わたし

帰ろうかな…

夜風が首を抜けていって

気持ちがいい

水に入れてた手は冷えるけど

またそれも悪くない

それから歩いて歩いて

手の水も乾いた頃

ちょっと昔に見たような

我が家の玄関に帰ってきた

長かったような

短かったような

なんとなく後ろを振り返れば

街灯に照らされた夜道が

どこまでも続いている

夜道を歩けば

もちろん怖いけど

少しだけ

ちょっとだけ

昔の私になれる気がした

わたし

すぅ…

わたし

はぁぁ…

わたし

よし

ただいま

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