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蘇枋

よし!そうと決まれば、
町に行こうか!

んで町…?

蘇枋

町なら何か見つかると
思ってね。

蘇枋

桜君もよく行くでしょ?

まぁ、…

それよりお前、
この事楡井達になんで言うんだよ

蘇枋

あ、…

桜が幽霊になったという事で 気が動転し、 言い訳を何一つ考えて いなかった。 蘇枋らしからぬ失敗だ。 今からうーんと唸っても、 何もいい考えは思いつかない。

蘇枋は、桜の事となると、 どこかポンコツになってしまうのだ。

何も考えてなかったのかよ!?

蘇枋

しょうがないでしょ。

蘇枋

だって、自分のす…

蘇枋

桜君が幽霊になっちゃったんだから。

危うく自分の本音を 口にしてしまいそうになり、 思わず口を閉じた。 桜の前では、 自分のボロを結構口に 出してしまっているので、 クラスメイトに桜への気持ちは バレてしまっているだろう。

それほどまでに、 いつもの蘇枋の鉄壁具合は、 桜に絆されるのだ。

おい、お前今なんて言おうとした?

蘇枋

なんでもないよ。

桜も桜で、その好意には 中々気づかない。 どれだけ蘇枋が桜への好意を、 オーラや言葉でうっかり放っても、桜は何も気づかない。恋愛センサーが反応して、顔を真っ赤にしているのに、 それを本人は、揶揄われて顔が真っ赤になっていると思っているらしい。

こうやってなんでもないよと、 胡散臭い笑みを浮かべながら 笑えば、それ以上桜は 疑わない。 色の違うビー玉の様な瞳が こちらを不思議そうに眺めてくるだけ。その様子が、まるで猫見たいで、可愛らしくてクルリと笑ってしまう。

蘇枋

もぉ、可愛いなぁ桜の君は〜

か、揶揄ってんじゃねぇ!!!

蘇枋

ふふっ笑

つ、つ、つーか!

さっさと言い訳考えねぇとだろ!?

蘇枋

それはそうなんだけど…

蘇枋

うーん、、

蘇枋

本当の事を言っちゃっても
いいだろうけど……

やめとけ。楡井が日本を沈めるぞ

蘇枋

それほど泣いちゃうよねぇ…

お前は結構ケロっとしてるよな

蘇枋

桜君は冷静だよね、自分が死んじゃったって言うのに。

本当はすごく慌てている。 このまま君が消えてしまったら、 成仏してしまったら、 もう会えなくなってしまったら、 この思いを伝える事は 出来ないのだから。 君の体温をもう感じられない。 もう触れられないのだ。 そう思ってしまうだけでも 涙が溢れ出てきそうなのに。

まぁな。

死んだって何か困った事はねぇし、
お前とも話せてるし…

蘇枋

俺と話せて嬉しいんだ?

そ、そ、そんな事ねぇし!!

蘇枋

そんなに顔を真っ赤にしちゃって

〜〜っ!!!!

幽霊になってしまっても、 表情がコロコロ変わる彼に 少し安堵する。 自分達の知る幽霊というものは、 こんなに可愛らしい物 ではなかったからだ。

もういいっ!!お前なんて知らねぇ!!

やり過ぎてしまったのだろう。 彼はフイっとそっぽを向き、 一言も話してくれなくなった。 鼻息を荒くし、 フンっと腕を組み胡座をかいて 如何にも怒った態度の彼に、 蘇枋は眉を八の字にさせ、 ニッコリ優しく困った様に 微笑んだ。

蘇枋

ごめんね、桜君。
怒らないで欲しいな…

……パフェ…食わせてくれたら
考えてやる…

蘇枋

!!

蘇枋

うん。もちろんいっぱい食べようね

……。

桜の可愛らしい反応を見て、 蘇枋は顔を綻ばす。 花が咲いた様な柔らかい笑みに、 桜は思わず、頬をほんのり赤く染めた。 肯定を意味する返事は、 頭がこくりと静かに動いた。

蘇枋

でも幽霊って食べ物食べれるの?

知らねぇ

でも、生きてる時……
食えなかったから…

蘇枋

そっか、

蘇枋

うん。食べようかパフェ

蘇枋

俺も一緒に食べてあげる

……いいのかよ

ダイエットが何とか
言ってたじゃねぇか

蘇枋

それは一時お休み

君のためならなんだって出来る。 君の望むことはなんでもない叶えてあげる。だから…… 行かないで欲しい。 そんな言葉を俺は全て飲み込んだ。

蘇枋

にれ君達にも、
桜君は見えるのかなぁ〜

冷たい地面に足をつけ、 座っていた体制から立ち上がった。 桜君はフワリと軽く浮いて見せた。 こうして並んで歩けるのは、 あとどれ位の時間があるのだろうか。

さぁな

お前しか会ってねぇから分からねぇ

蘇枋

そっかぁ〜

なんで嬉しそうなんだよ

蘇枋

何でもないよ

君に一番最初に会えた事に、 どこか嬉しくなってしまった。 いつもとは違う だらしない笑顔が顔から出てしまう。 話し合いを終えた俺たちは、 屋上を去る様に 足を歩見進めた。

ここが、 小さな冒険のスタート地点なのだ。

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