楡井
楡井
桜
俺を見つけた途端に 驚きで目を丸くしたにれ君が、 声をはりあげた。 隣にふわりと浮いていた桜君は、 目を見開きながら一言 ポツリと呟いていた。
蘇枋
楡井
楡井
にれ君の様子からするに、 やっぱりこの場にいる桜君が見えていない様だった。どこか寂しげににれ君を見つめたあと、桜君は透けた足で歩き出す。その姿は、本当の意味で消えてしまいそうで、慌てて桜君を追いかけようと足を動かした。
楡井
蘇枋
蘇枋
楡井
急に慌てて走り出した俺に、にれ君はなんて思ったのだろう。 彼の方を振り向くことなく飛び出してしまったから、答え合わせは出来やしない。きっと驚きながらも、彼は優しいから、何も聞かないでいてくれるだろう。
優しい仲間を思い、 自然と頬が緩むのを感じながら、 遠ざかっていく広くて、透けてしまった背中を追った。
蘇枋
彼を夢中で追い続けて、 気づけば騒がしさを感じる商店街から少し離れた路地裏まで来てしまっていた。 空き缶や、袋ゴミ、壁にはカラフルで沢山の落書き達。お世辞にも綺麗とは言いきれない様な路地裏に。
彼がどこかに行ってしまうのではないかという焦りか、首筋から一筋の汗がツゥと流れた。心臓も、走って来たせいか、それとも違うせいか、バクバクと激しく鼓動を続けている。 息遣いも、荒々しく、 方が大きく上下に動く。
路地裏の行き止まりまで走ったところで、やっと彼の動きが止まった。
蘇枋
桜
彼の口からポロリとこぼれ落ちてきた言葉は、どこか寂しげがある物だった。 君の綺麗な双眸の瞳が、 何を見て、何を思っているのか、 今の俺には何も分からない。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
いやだ。行かないで。 その言葉は自分の腹の奥底のどす黒い場所へと閉じ込めてしまった。 君への気持ちが沢山詰まったその場所は、いつ出てきてしまうのだろう。 きっと思いを告げても、 今の君は困ってしまうのだろうか。
桜
桜
蘇枋
桜
先程まであった少し気まずい空気は、彼の可愛らしい要望で全て吹き飛んでしまった。 少し揶揄った後の彼の表情は、 ほんのりと頬を赤らめていた。
柔らかい雰囲気を放つ店員が、 ドアを開けると同時に いらっしゃいませと、 顔に笑顔を張りつけて接待をしてきた。 店の雰囲気はレトロで、 全体的に木が使われていた。 店の中から香るのは甘い匂いに、 静かな雰囲気。 お客も、比較的少なく 個人でも来てみたいなと思うほどには良い店だと思った。
何名か聞かれた時は、 隣にいる彼をチラ見した後に 1名と答えた。 案内されたのは 少し奥の方にあるテーブル席。 ごゆっくりという声と共に去っていった店員を見届けてから、静かに彼に声をかけた。
蘇枋
桜
蘇枋
桜
口をとがらせながら、ツンとした返しをしていた。 彼の頬はまた少し赤く染っていた。 きっと彼なりの照れ隠しなのだろう。
目をキラキラさせながら メニュー表を見る彼を見て、 クスリと小さな笑みをうかべた。 俺の笑い声が聞こえてしまったのか、メニュー表から顔を上げ、彼の綺麗な瞳が俺を見た。
桜
蘇枋
桜
桜
桜
蘇枋
期間限定の大盛りパフェを頼んだ彼は、今まで以上に顔をきらきらとさせ、 本当に可愛らしい表情をしてそれを頬張っていた。 幽霊でも食べられるんだなとか、 彼が食べ終わったら何をしようとか、 考えていたことがどうでも良くなるほどに、彼は嬉しそうに目の前のパフェを平らげていた。
桜
桜
桜
あまりにも彼を見つめすぎていた所為なのか、彼はパフェを1口分すくい上げてスプーンを俺に向けていた。 ポカンと彼を見つめていた事を 不思議に思ったのか、 彼はこてんと可愛らしく首を傾げていた。
桜
桜
蘇枋
引っ込みかけたスプーンを ぱくりと加えた。 彼自身に触れられなくても、彼が持っているとのは、ちゃんと触れるんだなと、のんきにそんなことを考えた。 口の中は甘ったるいパフェの甘さと、 1つの幸福感で埋め尽くされる。
蘇枋
蘇枋
自分の唇をペロリと舐めた後、 いたずらっぽく彼を見つめた。 可愛すぎる桜君が悪い。 とか、よく分からない言い訳を述べて。
桜君の顔は、今日1番ってほど真っ赤に染まってから、 店の外にもひびきそうな大声を上げていた。
コメント
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今回も素敵なお話ありがとうございます✨ お久しぶりですね🙇♀ もちろん覚えていますとも、本当ですよ😁 毎日まだかなまだかなと投稿を待っておりました😊 モチベ不足なんて誰にでもありますよ、私だって現にそうですので笑 これからも頑張ってください💕
今日は早く見れて嬉しい*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*「関節キスだね」って台詞で失神するとこだった…アブナイ、アブナイ。ネタは湧くけど書く気力が無くてシヌ