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女
夜の繁華街で甘ったるい香水の匂いを漂わせた女は1人の男に甘えたような声で擦り寄る。
男(鞍馬 海斗)
女
女は残念そうな顔で男の腕を離すとバッグからスマホを取り出す。
女
男(鞍馬 海斗)
男はまるでこの出来事を予知していたかのようにポケットからレシートとボールペンを取り出し女に手渡し、女はそのレシートの裏に下手くそな字でローマ字と番号を書いてまた男に手渡した。
女
男(鞍馬 海斗)
そう言って女は男と反対方向へ歩いて行き、男は手を振りながら笑顔でそれを見送った。その男のズボンのポケットからはスマホのキーホルダーがゆらりと揺れていた。
男(鞍馬 海斗)
そうボソッと呟くその男は、先程までとは別人のような低音と言葉遣いで、その顔からは笑顔が消え、"優しそうな彼"の面影はなくなっていた。だがもちろん女はそんなことに気づくはずもなくその背中はどんどん小さくなって行った。 そして男も歩き始め、路地裏の暗い道を進みながら、女から貰ったレシートのメモに視線を落とすと鼻で笑いながら先程より少し大きめな声で言う
男(鞍馬 海斗)
そう言って小さいカバンからタバコとライターを取り出し口にくわえるとそこに火をつけ、レシートのメモにも火をつける。レシートはみるみる黒く焦げ終いには灰になりパラパラと夜風に飛ばされた。 すると横から凄い音と共に扉が開き、女が転がり込みゴミ袋の山に突っ伏した。それと同時に中年くらいの男の怒鳴り声がする。
おじさん
おじさん
そう言い終えるとこちらに気づくこともなく扉を勢いよく閉めた。 男は驚いて、タバコを口に咥えながら目の前のゴミまみれになって動かない女を少し心配する。
男(鞍馬 海斗)
女(綾瀬 雛)
女は上半身だけ起き上がらせると、少なくとも心配してくれた男に目を向けることもせず、鈴のような綺麗な高めの声でそう言った。 男はそんな女の態度に少し腹が立つ。
男(鞍馬 海斗)
そう吐き捨てて男はその場を去ろうと女に背を向けると、後頭部に鋭い痛みが走ると同時にカランカランと空き缶が俺の足元まで転がって来た。
男(鞍馬 海斗)
男は振り返ると女を睨み付ける
女(綾瀬 雛)
そう言って女は男を睨み返す。 その時、先程まで長い黒髪に隠れていた女の顔が露わになる。 暗がりでも分かるほどの宝石のような赤い大きな目と、真っ白な肌に、小さな顔と高い鼻。 その顔は真っ暗な路地裏でも分かるほど綺麗な顔立ちをしていて、思わず男は息を呑んでしまう。しかしその女の唇の端には血が滲んでいた。きっとさっきの男に殴られたのだろう。
女(綾瀬 雛)
女は汚れた体を手ではらいながら立ち上がると、フラフラな体でハイヒールの音を響かせながらどこかへ行ってしまった。 男は今日で2回目の見送りをした。