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西棟に戻って階段を一番上まで 登って、屋上の入り口に来た

恐る恐るドアノブを回す……と、 すんなりと開いたドア

真冬

(誰かいる……!)

思い切って屋上に出て、周囲を見回す

真冬

(……あ、いた!)

真冬

彼方先輩!

名前を呼びながら、 先輩の元に駆け寄っていく

彼方

っ……!?

僕のことに気づいたのか、 彼方先輩がこっちを向いた

……何故か、ひどく驚いたような 顔をしている

彼方

……ここ、一般生徒は入っちゃダメなんだけど

いつもの無表情に戻って、 そう聞かれた

真冬

彼方先輩のこと探してたんですよ

彼方

俺を?

この人、自分が生徒会長だっていう 自覚はあるんだろうか

真冬

うちのクラスの学級委員の人が困ってて、僕が代わりに探しに来たんです

彼方

……あぁ、そういうこと

納得してくれたのか、 もたれかかっていた柵から離れて、 立ち上がった彼方先輩

そういえば、こうやって話すのは、 少し久しぶりかもしれない

彼方

……何も聞かないんだ

真冬

えっ?

彼方

俺がここにいた理由

彼方先輩が、ここにいた理由?

真冬

何か用事があるのかなって思ったんですけど……

彼方

こんなとこに用事なんてあると思う?

そう言われてみれば、 たしかに何も思いつかない

真冬

じゃあ……なんでここにいたんですか?

聞いて欲しい……のかな

彼方

生徒会の仕事が立て込んでたから、ちょっと息抜きに来てて

仕事が立て込んでたから?

さっき生徒会室に行った時、 そこまで忙しそうじゃなかったけど

彼方

っ……。

彼方

……嘘。本当はサボってた

僕に背を向けて、 ぽつりと言った彼方先輩

真冬

え……?

サボってた……って、彼方先輩が?

彼方

文化祭なんて、はっきり言うと、興味が無いしつまらない。

彼方

まず準備の時点で死ぬほど面倒だし

僕がびっくりしていたのも束の間、 突然色々話し出した先輩

なんだか、先輩の様子がおかしい

いつもなら、いつもの彼方先輩なら、 こんなこと言わないはずなのに

彼方

つーか王子って何? やっぱり中身はどうでもいいわけ?

真冬

か、彼方先輩……?

彼方

あんなの俺じゃないし、真冬の言う通り、“そらる”だって本当のオレじゃない

あの時、つい聞いてしまったことだ

彼方

真冬といる俺も、俺じゃないしっ……

僕といる時も、違う……?

彼方

……本当の“俺”って、誰なんだよ……!

震えた声で吐き捨てて、その場に しゃがみ込んでしまった先輩

真冬

(もしかして……今までずっと、このことに悩んでたの……?)

真冬

……先輩

彼方

っごめん、なんでもない。今の忘れて……

真冬

ボクは、そんな悩みも打ち明けられないほど、頼りない“相方”ですか?

気づいたら、先輩のそばに近づいて、 そう言っていた

彼方

っ……!

真冬

先輩、聞いてください。

真冬

彼方先輩は、彼方先輩ですよ。

真冬

だって、前に自分で言ってたじゃないですか。『俺は俺だ』って

彼方先輩は、彼方先輩

だからあの時、ボクはあれ以上 何も聞かなかった

彼方

っ……。

彼方

……真冬に嫌われるのが怖くて……ずっと、嘘吐いてた

僕に嫌われるのが怖い……?

彼方

っ……本当は、中学の時とかずっと屋上でサボってて、生徒会長なんて柄じゃないんだよ。

彼方

けど、お前にそれを知られたくなくて……。

彼方

かっこ悪いとこ、見せたくなくてっ……

普段の彼方先輩からじゃ、 想像もつかない姿

歌が上手くて人気で、誰に対しても 優しくて、いつだってボクの上を 行っていたそらるさん

だから勝手に、きっと中身の人も 完璧なんだろうなって、 心のどこかで思ってた

けどそれは、全部彼方先輩の嘘で……

彼方

っ、ごめん……

本当の彼は、こんなにも弱い人だった

僕の方を向き直って、 そう謝って来た彼方先輩

こんなに辛そうな顔、初めて見た

彼方

相方のくせに、このこと隠してて……。ずっと、言わなきゃと思ってたんだけど……

真冬

先輩

言葉を遮って僕が呼ぶと、 何かに怯えたようにビクリと 肩を震わせる先輩

真冬

別に僕は、彼方先輩がどうであろうと、嫌いになりませんよ

人に言いたくないことは、 誰だって一つはあるはず

それをわざわざ、自分の身を 削ってまで言うことはない

真冬

どんな貴方でも、それが彼方先輩ですから。

真冬

……どちらかと言うと僕は、彼方先輩のこと、好きな方ですよ

嫌いじゃないから

もう恋は諦めたから

だからこの“好き”は、友達としての、 相方としての“好き”のつもりだ

彼方

……!

〜彼方 side〜

彼方

……たしかに、『俺は俺』だもんな

ボソリと、相手に 聞こえないように呟く

この自分がバレないように、 咄嗟に出た言葉だったはずなのに

まさか、そこまで核心を ついてるとは思わなかった

“王子”でも“先輩”でも“そらる”でも、 もちろん一ノ瀬彼方でも

違いはあれど、それは全部、俺なんだ

真冬

ほらっ、早く戻りましょ! 生徒会長がいなくてみんな困ってますよ?

空気を変えるように、 いつもの笑顔を見せてくれる真冬

彼方

だな

久しぶりに、心から笑顔に なれた気がする

彼方

(俺の相方、やっぱり流石だな)

俺のことを、全部認めてくれて…… 本当の“俺”にも、気づかせてくれた

彼方

……ありがと

もう一度、そう小さく呟く

やっぱり俺は、真冬のことが──

ボクはキミに恋をした

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コメント

9

ユーザー

そらるさん、今までずっと悩んでたんだな… 『嫌わてちゃうかも。』って思ってずっと 言い出せなくて辛かったんだろうな…… まふくん、相方としてでもいいけど 1人の…そらるさんの彼女として そばにいてあげてくれ!だから諦めるな!!! そらるさんはまふくんに好きだと伝えろ!!! ああぁぁ…もう好き… 続き楽しみにしています😊

ユーザー

まふくんもう少しなのに諦めちゃダメだーー!でも友だちとしてを付けずに好きはそらるさんの心に響いたんじゃないか!? そういえば96月の進展はどうなっているんだろうなぁ〜

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