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学校の廊下を歩いていると見かけたのは、 階段のほうに連れていかれる知らないあの子だった。

数人の女子生徒に髪を引っ張られながら連れていかれるのを、 私は見過ごせなかった。

キズナ

そこで何してるの!

私は気づかれないように後をつけて、女子生徒たちに向かって叫んだ。

いじめっ子1

何? あんたに関係ないじゃん

キズナ

関係なくない。私の友達に何してるの

友達ではないけれど、私が助けない理由にはならない。

いじめっ子1

うるさい、あっち行ってろよ

女子生徒に思いっきり突き飛ばされた。 その後ろは下りの階段で、私はそのまま受け身も取れず頭から落ちた。

最後に見えた光景は、泣いているあの子と笑っている女子生徒の姿だった。

目を覚ましたのはベッドの上だった。 隣を見るとあの時の知らない子が座っていた。

キズナ

あれ、あなた……

???

お、起きたんですね! 私のこと覚えてますか?

その子の膝元には読みかけの本があった。

キズナ

ごめん、覚えてるんだけど名前がわからなくて

私は後頭部を押さえながら起き上がった。 伸ばしっぱなしの長い髪が静電気でまとわりつく。

リナ

そ、そうですよね、私は同じクラスの斉藤リナです。江本さん、大丈夫ですか?

一度も話したことないのに私の名前を知っているのには驚いた。

キズナ

大丈夫、それよりあなたこそ大丈夫?

リナ

私は大丈夫です。私のせいで江本さんがこんな目に遭ってしまって、ごめんなさい

リナはうつむきながら涙声で謝った。

キズナ

何言ってるの、あなたは謝ってもらう側でしょ

リナ

で、でも、私がこんなだからダメなんです

キズナ

あーもう! とりあえず友達になろう! それで私がリナを守る!

私がそう宣言すると、 リナはメガネと同じように目をまんまるにさせて何回も瞬きをする。

リナ

わ、私でよければ、お、お願いします、江本さん

キズナ

キズナでいいよ、私もリナって呼ぶから。よろしくね

そうなると寝ている場合じゃない。いじめてた人たちをどうにかしないと。

キズナ

いつからいじめられてるの?

リナ

高校入学してすぐでした。でも話したこともないし、何かした覚えもないんです……

キズナ

理不尽じゃん。なんで何も言い返さないの?

リナ

聞いてみたことはあるんですけど、うざいから、としか言われなくて

私の中で怒りが沸々と湧いてきた。

キズナ

よし、決めた

リナ

な、何をですか?

キズナ

その人たちと友達になろう。そしたらいじめられないでしょ?

私は自信満々に答えた。 リナを笑顔で見つめると、リナは急にうつむいて叫んだ。

リナ

そんなの、できるわけないじゃないですか!

膝元の本にポタポタと水滴が落ちるのが見えた。

キズナ

できるよ。私の力を使えばできる

リナ

どういうことですか

リナは涙でぐしゃぐしゃになった顔をハンカチで拭きながら、 不思議そうに聞いた。

キズナ

私ね、人との絆をつなぐことができるの

私が生まれつき持っている不思議な力。 ゆびきりをしている人たちの手に触れると、 その人たちの絆をつないで強くすることができる。

リナ

い、意味わかんないです

リナは首を横にぶんぶんと振る。

キズナ

じゃあ、試してあげる

私はリナの小指と自分の小指を絡めてゆびきりをした。 そしてもう片方の手で、ゆびきりをしているリナの手に触れた。

キズナ

どう? なんか感じる?

リナ

わかんないですけど、すごくキズナさんを信じられる気がします

キズナ

私も同じ。リナのこと、大好きになった気がする!

私たちは確実に今、「絆」がつながった気がした。

キズナ

これで信じてくれる? あの人たちと友達になればいじめなんて起きない。みんな仲良く楽しく過ごせるよ。まあ、その前に謝ってもらわないとだけど

リナ

そ、そうですね……

なんだかリナの顔が悲しそうに見えた。

キズナ

どうしたの?

リナ

いえ、大丈夫です。私のためにしてくれるのはとても嬉しいです

リナは不器用な笑顔で微笑んだ。

リナと一緒に医務室から教室に戻っていると、 リナは教室の前で立ち止まった。

リナ

あ……

リナの目線の先を見ると、 あの時の女子生徒たちが楽しそうにおしゃべりをしていた。 あそこは確かリナの席だ。

キズナ

大丈夫、私がいるよ

私はリナの肩をポンと叩き、リナの手を引いて教室に入った。

いじめっ子1

あれ、戻ってくるの早くない?

いじめっ子2

斉藤のほうも一緒に落とせばよかったんじゃね?

女子生徒たちは私たちを見るなりそう言って、ケラケラと大笑いした。 私は拳をぎゅっと握りしめた。

キズナ

何が可笑しいの

いじめっ子1

は? いきなり何

キズナ

人が傷ついてるのに、何がそんなに楽しいの!

クラス中に怒鳴り声が響いた。 リナが小声で制止するのも聞かず、 私は我慢できずに女子生徒の胸ぐらを掴んだ。 そして蛇のように睨みつける。

いじめっ子1

傷ついたって、その怪我なら大したことないじゃん。そんなに大袈裟に言うんだったら病院行けば?

女子生徒は反省の色を一切見せず、余裕の表情で私のことを鼻で笑った。 その行為が私のイライラをエスカレートさせた。

キズナ

私じゃない。傷ついたのはリナ! 謝ってよ!

昼休みが終わる五分前のチャイムが鳴り始めた。

リナ

キズナさん、もうやめてください

後ろから今にも消えそうなリナのか細い声が聞こえてきた。 私はその言葉を聞いて、女子生徒のブラウスから手を放した。

リナ

仲良くしませんか? 私は皆さんと仲良くしたいです

いじめっ子1

何言ってんの? キモいんだけど。行こう

リナの言葉はすぐに切り捨てられ、女子生徒たちは本来の席に戻っていった。

キズナ

リナ……なんで?

リナ

授業始まりますよ。キズナさんも座りましょう

リナは私と目を合わせず、 さっきまで女子生徒が座っていた窓側の席に座った。

授業が終わり放課後になった。私はリナのところに駆け寄った。

キズナ

リナ、さっきなんであんなこと……

リナ

キズナさんが友達になろうって、言ってたじゃないですか

リナは相変わらず目を合わせてくれない。こちらを向いてくれさえしない。

リナ

でも本当は、あの人たちと友達になんかなりたくないんです。キズナさんを傷つけた人たちと友達になんかなりたくないんです

私はその言葉でハッとした。

キズナ

気づかなくて、ごめん。でも、もっといい方法思いついたから安心して

リナ

いい方法?

キズナ

クラスのみんなと友達になろう。そしたら、私だけじゃなくてみんながいじめから守ってくれるよ。もちろん、あの人たちは除いてね

私がそう言うと、リナは勢いよくこちらに身体を向けた。 そして私の目をしっかりと見て言った。

リナ

キズナさんらしい、とてもいい方法ですね!

その顔は、あの時の不器用な笑顔とは全く違う、 純粋無垢な可愛い笑顔だった。

それから私たちはクラスの一人一人に声をかけていった。 リナは人と話すのは苦手らしいけど、 私が間に入らなくても頑張って、たった一言声をかけていた。

リナ

友達に、なりませんか

声をかけた人は全員、笑顔でリナと楽しそうに話している。 私もクラスの人たちと「絆」をつなぐ要素を作っていった。

私の能力には一つだけ欠点があって、 ある程度心を開いている人同士じゃないと「絆」をつなげないこと。 リナが一生懸命頑張ったから、次は私が頑張る番。

キズナ

ちょっとだけ、リナとゆびきりしてもらえる?

私がそう言うとみんな不思議そうな顔はするものの、断る人はいなかった。 リナと「絆」をつないだ人たちは、確実に仲良くなっているのがわかった。

リナ

キズナさん、今日は一緒に帰りましょう

キズナ

あれ、他の子と帰るんじゃなかったの?

リナ

いえ、今日はキズナさんと帰るって決めてたので、誘われたんですけど断っちゃいました

キズナ

リナ、変わったね。今すごくキラキラしてる

リナ

キズナさんのおかげです。本当にありがとうございます

リナは立ち止まって、私に丁寧に頭を下げた。

キズナ

私はちょっと力を貸しただけだよ。あとは全部リナの力

リナ

でもキズナさんがいなかったら、私はいつまでもいじめられていました。最近は机に落書きされてても、みんなが一緒になって消してくれるようになりました

その光景は私も見ていた。 気づけば私が助けに行く前に、他の誰かがリナのそばにいた。

キズナ

もう大丈夫だね

私はそう言ってにこっとリナに笑いかけた。

翌日、学校の廊下を歩いていると見かけたのは、 女子生徒に連れていかれるリナだった。あの時と同じだ。 私はすぐに追いかけた。でもそこにはもう数人のクラスメイトがいた。 あの時の私のように女子生徒に向かって叫んでいる。

クラスメイト

私の友達に何してるの!

リナはもう泣いていなかった。むしろ正々堂々と立っていた。 私はその光景を見て気づいた。 いじめを無くすのは、本人の努力と仲間の力だ。

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