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学校の廊下を歩いていると見かけたのは、 階段のほうに連れていかれる知らないあの子だった。
数人の女子生徒に髪を引っ張られながら連れていかれるのを、 私は見過ごせなかった。
キズナ
私は気づかれないように後をつけて、女子生徒たちに向かって叫んだ。
いじめっ子1
キズナ
友達ではないけれど、私が助けない理由にはならない。
いじめっ子1
女子生徒に思いっきり突き飛ばされた。 その後ろは下りの階段で、私はそのまま受け身も取れず頭から落ちた。
最後に見えた光景は、泣いているあの子と笑っている女子生徒の姿だった。
目を覚ましたのはベッドの上だった。 隣を見るとあの時の知らない子が座っていた。
キズナ
???
その子の膝元には読みかけの本があった。
キズナ
私は後頭部を押さえながら起き上がった。 伸ばしっぱなしの長い髪が静電気でまとわりつく。
リナ
一度も話したことないのに私の名前を知っているのには驚いた。
キズナ
リナ
リナはうつむきながら涙声で謝った。
キズナ
リナ
キズナ
私がそう宣言すると、 リナはメガネと同じように目をまんまるにさせて何回も瞬きをする。
リナ
キズナ
そうなると寝ている場合じゃない。いじめてた人たちをどうにかしないと。
キズナ
リナ
キズナ
リナ
私の中で怒りが沸々と湧いてきた。
キズナ
リナ
キズナ
私は自信満々に答えた。 リナを笑顔で見つめると、リナは急にうつむいて叫んだ。
リナ
膝元の本にポタポタと水滴が落ちるのが見えた。
キズナ
リナ
リナは涙でぐしゃぐしゃになった顔をハンカチで拭きながら、 不思議そうに聞いた。
キズナ
私が生まれつき持っている不思議な力。 ゆびきりをしている人たちの手に触れると、 その人たちの絆をつないで強くすることができる。
リナ
リナは首を横にぶんぶんと振る。
キズナ
私はリナの小指と自分の小指を絡めてゆびきりをした。 そしてもう片方の手で、ゆびきりをしているリナの手に触れた。
キズナ
リナ
キズナ
私たちは確実に今、「絆」がつながった気がした。
キズナ
リナ
なんだかリナの顔が悲しそうに見えた。
キズナ
リナ
リナは不器用な笑顔で微笑んだ。
リナと一緒に医務室から教室に戻っていると、 リナは教室の前で立ち止まった。
リナ
リナの目線の先を見ると、 あの時の女子生徒たちが楽しそうにおしゃべりをしていた。 あそこは確かリナの席だ。
キズナ
私はリナの肩をポンと叩き、リナの手を引いて教室に入った。
いじめっ子1
いじめっ子2
女子生徒たちは私たちを見るなりそう言って、ケラケラと大笑いした。 私は拳をぎゅっと握りしめた。
キズナ
いじめっ子1
キズナ
クラス中に怒鳴り声が響いた。 リナが小声で制止するのも聞かず、 私は我慢できずに女子生徒の胸ぐらを掴んだ。 そして蛇のように睨みつける。
いじめっ子1
女子生徒は反省の色を一切見せず、余裕の表情で私のことを鼻で笑った。 その行為が私のイライラをエスカレートさせた。
キズナ
昼休みが終わる五分前のチャイムが鳴り始めた。
リナ
後ろから今にも消えそうなリナのか細い声が聞こえてきた。 私はその言葉を聞いて、女子生徒のブラウスから手を放した。
リナ
いじめっ子1
リナの言葉はすぐに切り捨てられ、女子生徒たちは本来の席に戻っていった。
キズナ
リナ
リナは私と目を合わせず、 さっきまで女子生徒が座っていた窓側の席に座った。
授業が終わり放課後になった。私はリナのところに駆け寄った。
キズナ
リナ
リナは相変わらず目を合わせてくれない。こちらを向いてくれさえしない。
リナ
私はその言葉でハッとした。
キズナ
リナ
キズナ
私がそう言うと、リナは勢いよくこちらに身体を向けた。 そして私の目をしっかりと見て言った。
リナ
その顔は、あの時の不器用な笑顔とは全く違う、 純粋無垢な可愛い笑顔だった。
それから私たちはクラスの一人一人に声をかけていった。 リナは人と話すのは苦手らしいけど、 私が間に入らなくても頑張って、たった一言声をかけていた。
リナ
声をかけた人は全員、笑顔でリナと楽しそうに話している。 私もクラスの人たちと「絆」をつなぐ要素を作っていった。
私の能力には一つだけ欠点があって、 ある程度心を開いている人同士じゃないと「絆」をつなげないこと。 リナが一生懸命頑張ったから、次は私が頑張る番。
キズナ
私がそう言うとみんな不思議そうな顔はするものの、断る人はいなかった。 リナと「絆」をつないだ人たちは、確実に仲良くなっているのがわかった。
リナ
キズナ
リナ
キズナ
リナ
リナは立ち止まって、私に丁寧に頭を下げた。
キズナ
リナ
その光景は私も見ていた。 気づけば私が助けに行く前に、他の誰かがリナのそばにいた。
キズナ
私はそう言ってにこっとリナに笑いかけた。
翌日、学校の廊下を歩いていると見かけたのは、 女子生徒に連れていかれるリナだった。あの時と同じだ。 私はすぐに追いかけた。でもそこにはもう数人のクラスメイトがいた。 あの時の私のように女子生徒に向かって叫んでいる。
クラスメイト
リナはもう泣いていなかった。むしろ正々堂々と立っていた。 私はその光景を見て気づいた。 いじめを無くすのは、本人の努力と仲間の力だ。