大翔
町の中心には、大きな屋敷がある。そこには町長室があり、町の全ての決定権を持っている。
アロマはその部屋を自由に使っていいし、欲しい物は大抵手に入るようになっている。
ただし、外に出る事だけは出来ない。
町長になった者は、永遠にこの町に留まる事が決められているからだ。
だから、町長室の窓から外を眺めて、外に憧れを募らせたりしない事だ。
いつか、誰かが迎えに来てくれるなんて幻想を抱いても無駄なのだ。
町長になれば、それがよく分かるだろう。
町の住人達の事は心配いらない。皆、良く出来た人形ばかりだ。
食事の時間になると、決められた時間に決まった量の料理が出てくる。
それを食べたら、後は自由時間。何をしても構わない。
ただ、夜更かしをして明日寝坊しないようにする事。
明日の朝起きられなくて、またあの老人に怒られる羽目になっても知らないぞ。
最後に……これは忠告なんだが、町長になってから後悔するような行動は慎んで欲しい。
そうすればきっと、君は幸せな未来を手に入れることができるだろう。
何て事の無いただの日記。だが俺は、その日記を読んでいた。
読んでいる内に、体が震えてくる。これが夢なら早く覚めて欲しい。
だってこれじゃあまるで、俺がこの町に来た理由じゃないか!!
「どうしたんですか?」
背後からの声に振り返ると、そこには可愛らしい少女がいた。
彼女は不思議そうな顔をしている。
