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刑事の高杉は、黒瀬の同僚の横領事件について、
記者の吉村に事情聴取をしていた──
高杉
お前がたれこんだ横領事件…
高杉
黒瀬と被疑者は、脅し脅される関係だった
高杉
黒瀬は、逮捕されることを恐れて飛び降り…
高杉
黒瀬と縁のあった安藤はめった刺し
高杉
こいつら2人、お前の妻の放火自殺に関わってる
高杉
お前…何か知ってるんじゃないか？
吉村
高杉さん…残念なんですが…
吉村
横領事件については、黒瀬を追ってて知っただけです
吉村
…なんせ、彼は俺の妻に濡れ衣を着せた連中の1人だ
吉村
俺が黒瀬を追ってても不思議じゃないでしょう？
高杉
…お前の妻のことは、法が結論を出しただろうが
吉村
かもしれませんが、俺は納得してないので
高杉
そうか…まあ、なんだ…
高杉
今回はお前のおかげで、横領事件を掴めた
高杉
そこは素直に礼を言うよ…助かった
吉村
俺としても、警察に協力できて良かったですよ
高杉
（…まったく、どこまでが本音なんだか）
高杉
（なんにせよ…黒瀬、安藤…）
高杉
（吉村の妻の放火自殺事件に関連する男たちが…）
高杉
（連続して事件に巻き込まれるのは何かある）
若い刑事
高杉さん…ちょっといいですか？
高杉
ああ、どうした？
若い刑事
黒瀬が後輩を暴行していた家に踏み込んだ際…
若い刑事
若い女性が監禁されていましたよね？
若い刑事
その女性の写真がこれなんですが…この人…
高杉
…一ノ瀬…里穂…？
高杉
10年前の女子学生監禁強姦事件の被害者じゃないか…！
高杉
彼女、安藤が刺された事件にも関わってるんだぞ！？
高杉
一ノ瀬は、今どこにいる！？
若い刑事
それが…現場から逃走していまして…
高杉
（そういえば、吉村は…）
高杉
（安藤の事件の後、一ノ瀬に会おうとしていた…）
高杉
安藤…黒瀬…吉村…一ノ瀬…全員繋がりが？
高杉
…10年前の事件、少し調べてくる
高杉は、吉村の妻が放火自殺した時の資料を眺めている。
高杉
（10年前…吉村の妻は、放火自殺の直前に…）
高杉
（安藤、黒瀬含む3人の少年に、性暴行を加えた…）
高杉
（そのうちの1人安藤は、吉村の妻自殺のひと月前…）
高杉
（一ノ瀬の遺棄現場から逃走するのが目撃されている…）
高杉
（そして現在…）
高杉
（安藤は、里穂という女に指示された恋人に刺され…）
高杉
（飛び降りた黒瀬の監禁部屋には一ノ瀬がいた…）
高杉
安藤と黒瀬は、一ノ瀬とどういう関係だ…？
高杉
なぜ、この2人が連続して破滅の道を…？
高杉
そして、吉村は裏で一ノ瀬と何を話した？
高杉
（もし…もしも、安藤と黒瀬が…）
高杉
（一ノ瀬里穂監禁強姦事件に関与し…）
高杉
（その復讐に一ノ瀬が現れたのだとしたら…！）
高杉
（その一ノ瀬に、吉村が何か吹き込んだとしたら…！）
高杉
…くそっ…バカなことは考えるな
高杉
あの事件は、我々警察がどれだけ捜査しても…
高杉
なんの証拠も挙がらなかったんだ…！
高杉
下らん憶測で、我々警察の努力を汚すことはできん…！
高杉
（…とはいえ…）
高杉
（一ノ瀬が黒瀬の監禁部屋から逃げたのは事実）
高杉
（一ノ瀬から、事情は聴かねばならん）
若い刑事
高杉さん、黒瀬のことについてもう1つお話が…
高杉
ああ、話してくれ
高杉
気になることがあってな。どんな情報でも知りたい。
若い刑事
実はですね…黒瀬は一ノ瀬里穂を監禁する前日…
若い刑事
安藤のスマホに連絡しているんです
高杉
…安藤は恋人にめった刺しにされている
高杉
電話に出られるはずがない
若い刑事
ええですから、母親が電話を受けたそうです
高杉
（…つまり、黒瀬は安藤が刺されたのを知らなかった）
若い刑事
安藤の母親が息子について…
若い刑事
『里穂という女にそそのかされた恋人が刺した』
若い刑事
…と説明すると、黒瀬は酷く動揺したそうです
高杉
…里穂…一ノ瀬里穂の名前に反応したのか
高杉
（黒瀬にとって一ノ瀬里穂は…）
高杉
（恐怖を与える対象だった…）
高杉
（そして黒瀬は一ノ瀬を邪魔に思い…）
高杉
（暴行用に借りていた家に監禁した…）
高杉
…一ノ瀬がどうやって黒瀬や安藤と繋がったか
高杉
調べる必要があるな…
高杉
（最悪…更なる犯罪が明るみに…？）
若い刑事
はい…！調べておきます…！
高杉
（しかし調べるにしても…何か手がかりは…）
高杉
（…吉村の妻が暴行したとされる…）
高杉
（3人目の少年は…？）
高杉は長年の刑事の勘から察していた…。
吉村の妻から性暴行を受けたとされる
3人目の少年…。
彼が一ノ瀬里穂に関係していると掴んだ時、
きっと自分は地獄の窯の蓋を開けるだろう…と。
高杉
（安藤も黒瀬も、あの事件の被害者だった）
高杉
（今後、最後の1人も一ノ瀬と接触するとしたら…）
高杉
（最後の1人…名前は──）
吉村は、身を隠すようにしながら電話をしていた。
吉村
…警察には適当に話したよ
吉村
まったく…1人で行動するなと言ったのに…
吉村
君はなんて無茶するんだ
里穂
確かに、まさか黒瀬が…
里穂
同僚を脅して暴行してる危ない奴だなんて…
里穂
まったくの計算外だったのは認めるわ
里穂
だけど、結果として黒瀬に復讐できた…
里穂
痛い目も見たけど、これで良かったのよ
吉村
…黒瀬は、公衆の面前で飛び降り自殺した
吉村
どれだけ追い詰められたんだか
里穂
ふふ…そうね
里穂
きっと自分のしたことを後悔したでしょうね…
里穂
よかったじゃない
吉村
…その…家族は…
里穂
…え、なに…？
吉村
いや、なんでもない…
吉村
（里穂さんは、どんなに復讐に燃えても…）
吉村
（人の心は失っていない…俺にはわかる）
吉村
（冷酷なフリをしていても…）
吉村
（黒瀬の家族に、何も感じてないはずないよな…）
吉村
君が黒瀬の暴行部屋に監禁されてたことを…
吉村
いつ警察が掴むかはわからない
吉村
警察に追われてもすぐ見つからないように…
吉村
しばらくはこのまま、俺の家にいてくれ
里穂
…邪魔にならない？
吉村
はは…今更…
里穂
…ありがとう
吉村
…次の復讐もやるのか？
里穂
ええ、もちろん
里穂
黒瀬のスマホを調べた時…
里穂
春人さんがくれた資料と同じ名前の男を
里穂
アドレス帳に見つけたの
里穂
──『原口太一』…こいつよ
里穂
私と春人さんの奥さんを痛めつけた、3人目の男…
里穂
こいつも、地獄に叩き落してやる
吉村は、強くスマホを握りしめた。
里穂が次に動くとき…
きっと自分も手を汚すのだろうと感じていた──
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