真冬
彼方
そらるさんの声も表情も、 明らかに焦っている
彼方
魔力だからって、どういうこと…… って、まずい!!
真冬
考え込んでしまったそらるさんの 隙をついて、天ちゃんの姿をした 闇が攻撃を仕掛けようとしていた
彼方
ギリギリで僕の放った技が当たって、 相手の攻撃と相殺される
真冬
彼方
急いで駆け寄るけど、 特に怪我はしてない様子
真冬
闇
来るっ!!
真冬
嘘、動きを全然目で追えない……!!
……──左!?
真冬
直前に気配を感じて、 慌てて桃雪華を出して構える
っ……けどまずい、 力で押し負けるっ……!!
彼方
そらるさんがそう唱えると、 水の雫の集合体でできた滝が現れて、 相手の頭上に命中する
それで相手が怯んで、 なんとか距離をとれた
真冬
そらるさんがこんな大技を 使ったのは、初めて見た
いつもは魔力を温存する為に、 簡単に倒せる相手には、 こんな技を使ったりはしない
現世使い最強が、 本気でかかってるんだ
彼方
真冬
そらるさんに返事をした タイミングで、また相手が こちらに向かってくる
彼方
真冬
そらるさんが技を当てやすいように、 僕は相手の動きをできるだけ拘束する
でも相手が強すぎて、 止められるのは僅かな時間だけ
その隙をついて……!
彼方
召喚された“水霊(サイレン)”は 全部で4体
それが2本ずつ槍を構えて、 計8本を闇に向かって投げた
けど……
真冬
まずい、“水槍(アクアランス)”が 当たる前に拘束が解けた……!!
そのせいで、相手が素早く技を 避けて、またこちらへと向かってくる
ここは僕が……!!
真冬
相手がこちらに来るよりも前に、 大量の氷柱が相手の頭上に降り注ぐ
これで少しでも怯んでくれれば…… って、嘘!?
真冬
彼方
ダメージを負った様子もなく、 技を打ったはずの場所に立っている闇
初めてこんな大技打ったのに そんなけろっとされると、流石に 心折れるんだけど……!?
って、こんなぼーっとしてる暇ない!
真冬
彼方
慌てて次の手を考えていると、 隣にいるそらるさんがそう叫んだ
真冬
自分だけで一気に8本って、 流石にやりすぎじゃない!?
普通でも5、6本が限界なのに、 そんな数打ったら……!
真冬
彼方
そう言って、今度は無詠唱で “アクアナイフ”を10本も 打ったそらるさん
どうしよう、相手を止めなきゃ いけないけど、そらるさんがこの 調子じゃ、天ちゃんが復帰するまで 魔力が持つか分からない
一応僕は、まだ少し 余裕があるけど……
真冬
そうだ、この技なら、少なくとも 相手は足止めできるかも……!
ただ、この後僕がどれだけ持つか…… いや、それを考えるなら尚更、 僕より強いそらるさんが優先だ!
真冬
一度桃雪華を消して、そらるさんと 闇の間に割って入る
そこから、両手を構えて……!
真冬
次の瞬間、辺りが吹雪き始めて、 完全に相手が氷漬けになる
これで、しばらくあそこから 身動きできないはずだ
彼方
振り返ると、氷点下まで下がった 気温と吹雪のせいで、身体が凍り 始めてしまってるそらるさんが
そりゃあ、こんなに吹雪いてるし、 水であるそらるさんは凍るよね
対して僕は、身体が氷に近づきつつ あるから、全く寒さを感じないけど
真冬
彼方
真冬
彼方
この技は、氷魔法の最強技
言うなれば、必殺魔法
どんなに相手が強くても、当てれば ダメージは与えられるけど、 これを最大威力で使うには、 かなりの魔力が必要になる
だから威力を弱めて、相手に 効くであろうギリギリの強さで打った
真冬
真冬
真冬
彼方
真冬
真冬
僕が一喝すると、反省したのか、 目を伏せたそらるさん
彼方
真冬
あ、危ない、そらるさんまで 氷漬けに……いや、氷そのものに するところだった……!
慌てて溶かして、 一度吹雪の外に避難する
彼方
少し離れたところで、 そらるさんがそう話し始めた
彼方
彼方
死に対して恐怖が沸くのは、 誰だって同じだ
2年前、そらるさんは重傷を負って、 このまま死んじゃうんじゃないかって 考えると、僕も気が気じゃなかった
だけどその不安は、本人である そらるさんの方が、ずっと 大きかったと思う
彼方
彼方
また顔を俯かせて、謝られる
真冬
彼方
真冬
真冬
真冬
真冬
真冬
彼方
真冬
氷で拘束している闇の方を指差して、 わざと慌てたように言う
真冬
真冬
そう言って、最後に笑ってみせる
彼方
すると、少し驚いた顔を見せつつも、 そらるさんも笑ってくれた
彼方
真冬
彼方
彼方
真冬
彼方
真冬
いつもの調子に戻ったそらるさんと、 いつの間にか吹雪の止んだ 広場へ戻ってくる
敵の近くまで来たところで、 相手が完全に氷を打ち砕いた
真冬
右手に桃雪華を顕現させながら、 相手を見据えてそらるさんに聞く
彼方
彼方
真冬
どうして謝られたんだろう
そう考える暇もなく、 そらるさんが自分の左目に 手を翳して……こう唱えた
彼方
その手を離すと、彼の左眼に、 雫のような紋様が現れ始める
真冬
これは、自分に魔力がなくなった時、 今までの魔力量の限界を突破させて、 一時的に魔力を底無しにする魔法
だけど、この魔法を長時間使ったら 眼に負担がかかって、紋様を 起こした方の眼は、最悪の場合 失明して元の眼色に戻らなくなる
ただ、反動が起きる代わりに、 魔力量は永遠に底無しになるけど……
その魔力も、今までの自分の 魔力量分を使い切った後は、 自分の命を削って作り出すから、 本当に危険な魔法だ
なのに、何でそらるさんはそれを……
彼方
彼方
薄灰色の両眼で、真っ直ぐ 敵を見据えるそらるさん
その顔に、不安や恐怖は一切無かった
真冬
彼方
真冬
諦め半分のため息をついて、 僕も敵の方を向く
天ちゃんがいつ起きるか分からない
だから、僕も魔力はできるだけ 節約していかないと
彼方
コメント
4件
うわぁ敵も強いけどatr強っ そらるさん…やっぱり死は怖いですよね …だからと言ってまふくんの約束をすぐ破るのはダメですよ!!! まふくんの気持ち考えてw!!!!
流石闇のトップだけあっていちばん強い…! 頑張れ‼️せめてあまちゃんが起きるまでは 耐えて!! まふくん、エターナルフォースブリザードで 闇のトップはもちろんそらるさんまで 凍らせるwまぁ、水だしねw でも、まふくんの言う通りそらるさんは ひとりじゃない。まふくんはもちろん あまちゃんもいるんだから! でも、それでもそらるさんは 無理しちゃうんだよね…失明しないで! 続き楽しみにしています!!!