テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
225
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第7話 〚距離を詰める影。誰も知らない、 高嶺の花の裏側〛
事件のあと、
恒一は――
澪を追いかけなくなった。
登下校の道。
図書室の影。
背中に刺さる視線。
それらは、確かに消えた。
……はずだった。
西園寺 恒一
朝、教室に向かっているとき。
自然すぎる声。
振り向くと、
恒一が、すぐ近くに立っていた。
白雪 澪
澪は、短く返す。
西園寺 恒一
西園寺 恒一
距離が、近い。
白雪 澪
澪は、無意識に一歩下がった。
西園寺 恒一
西園寺 恒一
橘 海翔
その声に、澪はほっとした。
橘 海翔
澪がそちらへ向こうとした、 その瞬間。
西園寺 恒一
恒一が、間に入る。
西園寺 恒一
西園寺 恒一
西園寺 恒一
空気が、張り詰める。
海翔は、恒一をまっすぐ見た。
橘 海翔
澪の手に、 そっと資料が渡される。
白雪 澪
澪のその一言に、
恒一の表情が、 一瞬だけ歪んだ。
西園寺 恒一
西園寺 恒一
休み時間も、
放課後も。
恒一は、
“偶然”を装って
話しかけてくる。
西園寺 恒一
西園寺 恒一
西園寺 恒一
悪意は、見えない。
でも、距離感が、おかしい。
えまが、小声で言った。
村上 えま
しおりが、静かに頷く。
石田 しおり
石田 しおり
みさとが、珍しく真剣な顔。
河野 みさと
海翔は、 澪の隣に立つことが増えた。
誰が見ても分かる位置。
誰が割り込んでも、 すぐ分かる距離。
橘 海翔
白雪 澪
橘 海翔
澪は、頷いた。
白雪 澪
恒一は、その様子を見て、
静かに笑った。
西園寺 恒一
西園寺 恒一
執着は、
追う形をやめただけ。
今度は――
距離を詰める形になった。
澪は、 はっきりと感じていた。
白雪 澪
嵐は、完全には、 終わっていなかった。
橘海翔は、最近よく考える。
――白雪澪のことを。
最初は、放っておけなかった だけだった。
静かで、目立たなくて、
でも何故か 視線を集めてしまう存在。
「高嶺の花」
そう呼ばれている理由も、
なんとなく分かっていた。
近づきにくい。
触れたら壊れそう。
完璧そうに見える。
……でも。
橘 海翔
放送委員の準備中。
マイクの調整に手こずる澪。
白雪 澪
小さく首を傾げる。
不安そうな声。
橘 海翔
海翔がそう言うと、
澪はほっとしたように笑った。
白雪 澪
その笑顔を見た瞬間、
胸の奥が、 きゅっと締め付けられる。
橘 海翔
教室では見せない。
静かな場所でしか 見せない表情。
怖がりで。
優しくて。
強がってるくせに、
すぐ自分を後回しにする。
――高嶺の花、どころか。
橘 海翔
昼休み。
澪が本を読んでいる横に座る。
橘 海翔
白雪 澪
ページをめくる指が、 少し震えている。
集中しているときの癖だ。
海翔は、気づいてしまった。
澪は、
誰かに守られるのが 当たり前じゃない世界で、
ずっと一人で踏ん張ってきた。
だから――
誰かが隣に立つと、戸惑う。
橘 海翔
橘 海翔
放課後。
恒一が近づこうとしたとき、
自然と澪の前に立った自分。
誰に見られてもいい。
人気者じゃなくなってもいい。
その覚悟が、
もう迷いじゃないことに、 気づく。
校舎を出るとき。
橘 海翔
白雪 澪
橘 海翔
少し驚いたあと、
澪は小さく頷いた。
白雪 澪
その一言が、 胸の奥まで染み込む。
橘 海翔
完全に、沼だった。
誰も知らない、高嶺の花の裏側
それを知ってしまったのは――
俺だけでいい。
そう、
思ってしまうくらいには。
海翔は、 確かに恋に落ちていた。
担任
担任
担任の声と同時に、
教室が少しざわついた。
くじを引き、 それぞれが新しい席へ向かう。
海翔は、 無意識に澪の方を見た。
……遠い。
前でも、隣でもない。
教室の端と端。
橘 海翔
胸の奥が、すとんと落ちる。
隣じゃなくてもいい、
そう思っていたはずなのに。
澪の姿が、 急に遠く感じた。
一方、澪も。
自分の席に座りながら、
そっと海翔の位置を確認する。
白雪 澪
理由も分からないまま、
少しだけ、胸が痛んだ。
授業中。
黒板を見るふりをしながら、
二人とも、 何度も視線を動かす。
……目は、合わない。
放課後。
海翔は、机に手をついたまま、
動けずにいた。
橘 海翔
隣じゃないだけで、
こんなに気になるなんて。
今日一日、
澪の声も、表情も、
全部が頭から離れなかった。
橘 海翔
橘 海翔
守りたいとか、
放っておけないとか、
そんな言葉じゃ足りない。
隣にいたい。
話したい。
笑ってほしい。
それ全部が――
恋だった。
その頃、澪は。
えま、しおり、みさとと
いつものように 帰り道を歩いていた。
夕焼け。
少し冷たい風。
河野 みさと
みさとが、何気なく言う。
その言葉で、
澪の胸が、きゅっと締まった。
白雪 澪
気づいてしまう。
一緒に帰るときの安心感。
声を聞くだけで落ち着くこと。
隣にいないと、 落ち着かないこと。
白雪 澪
白雪 澪
好きだった。
いつからかは分からない。
でも、確かに。
えまが、横目で澪を見る。
村上 えま
白雪 澪
澪は、慌てて俯いた。
その仕草を見て、
三人は、何も言わずに笑った。
離れた席。
離れた距離。
でも。
その日、二人の気持ちは、
初めて同じ場所に辿り着いた。