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美 咲

ちかー、一緒に帰ろ!

次の日の放課後、美咲が私の机に駆け寄ってきた。

千 佳

うん

荷物をまとめて、教室を出る。

廊下を歩きながら、美咲がじっと私の顔を見てくる。

千 佳

...何?

美 咲

やっぱり変やで、千佳

千 佳

え?

美 咲

昨日からずっとぼーっとしてるし

美 咲

授業中も全然集中しとらんかったやろ?

図星を突かれて、私は視線を逸らした。

千 佳

そんなことないよ

美 咲

ある

美 咲

絶対何かあった

美咲は立ち止まって、私の肩を掴んだ。

美 咲

千佳、私ら親友やろ?

美 咲

何でも話してって言ったやん

その真剣な眼差しに、私は負けた。

千 佳

...実は

美 咲

うん

深呼吸して、言葉を探す。

千 佳

昨日、電車で...

千 佳

気になる人、見てもうた

美 咲

え!?

美咲の目が丸くなった。

美 咲

千佳が!?

美 咲

気になる人!?

千 佳

し、静かにして!

慌てて周りを見回す。

幸い、廊下には誰もいなかった。

美 咲

ごめんごめん

美 咲

でもびっくりしたわ

美 咲

千佳がそんなこと言うなんて

美咲は私の腕を掴んで、階段の踊り場に引っ張って行った。

美 咲

で?

美 咲

どんな人なの?

千 佳

えっと...

千 佳

高校生やと思う

千 佳

背が高くて、黒髪で...

言葉にすると、また胸がドキドキする。

美 咲

かっこええん?

千 佳

......うん

認めた途端、また顔が赤くなる。

美 咲

千佳、顔真っ赤やで

千 佳

もう!

美 咲

ごめんごめん

美咲はニヤニヤしながらしながら、優しい目で私を見た。

美 咲

それってさ、
もしかして初恋ちゃう?

『 初恋 』

その言葉が、胸に響いた。

そうか。

これが、「 恋 」なんや。

千 佳

...そう、なんかも

美 咲

そっか

美 咲

千佳、恋してるんやね

美咲が嬉しそうに笑う。

美 咲

応援するから!

美 咲

でも、その人のこと
何も知らんのやろ?

千 佳

うん

千 佳

電車で見ただけだし

美 咲

どこの高校かも分からん?

千 佳

制服着てへんかったから
分からへん

美 咲

ほな探さなあかんな!

千 佳

え?

美 咲

やってな、せっかく
気になる人できたんやで?

美 咲

このまま何もせえへんの
もったいないやん

美咲の言葉に、胸がドキドキする。

千 佳

でも、どうやって...

美 咲

とりあえず、また同じ電車
乗ってみたら?

美 咲

もしかしたら会えるかもしれんで

千 佳

そんな偶然...

美 咲

運命やったら会えるって!

美咲の前向きな言葉に、少しだけ勇気が湧いてきた。

それから三日。

私は毎日、あの時と同じ時間の電車に乗った。

でも、あの人の姿はなかった。

やっぱり、そんな都合よく会えるわけないよね。

諦めかけていた金曜日。

美 咲

ちか!

美 咲

大発見!

美咲が息をつく切らしながら私のところに走ってきた。

千 佳

どうしたん?

美 咲

あのな、さっき校門の前で
高校生とすれ違ってんけど

千 佳

うん

美 咲

その中に、千佳が言うてた
特徴の人がおったん!

心臓が飛び跳ねた。

千 佳

ほんまに!?

美 咲

うん!

美 咲

背が高くて、黒髪で、
少し猫背で...

千 佳

それやん!

美 咲

やっぱり!

美咲が私の手を握った。

美 咲

しかもな、うちの学校の先輩
やって!2年生!

千 佳

え...

同じ学校。

あの人が、同じ学校にいる。

信じられへんくて、心臓がバクバクする。

美 咲

名前も聞いたで

美 咲

「 角名倫太郎 」って
言うんやって

「 角名倫太郎 」

その名前を心の中で何度も繰り返す。

美 咲

バレー部らしいで

美 咲

真面目で優しいって
評判らしい

『 バレー部 』

『 真面目で優しい 』

もっと知りたい。

もっとあの人のことを知ってみたい。

美 咲

SNSやってるか
調べてみたら?

千 佳

え?

美 咲

やって、
名前分かったんやから

美 咲

インスタとかやってるかも
しれへんで

千 佳

でも...

美 咲

見るだけでもええやん!

美咲に背中を押されて、私はスマホを取り出した。

震える手で、検索バーに名前を入れる。

{ 角名倫太郎 }

検索ボタンを押すと、いくつかアカウントが出てきた。

美 咲

これかな?

美咲が私の肩越しに画面を覗き込む。

プロフィール写真。

バレーボールを持った男子高校生。

あの人や。

美 咲

千佳、これやん!

美 咲

フォローしてみたら?

千 佳

え、でも

美 咲

大丈夫やって!

美 咲

千佳のアカウント、
鍵垢ちゃうし

美 咲

普通にフォローしても
変ちゃうで

千 佳

そうかな...

迷いながらも、フォローボタンに指を置く。

押す勇気が出えへん。

美 咲

千佳、頑張れ!

美咲の声に後押しされて、ポチッとボタンを押した。

{ フォローリクエストを送信しました。 }

画面に表示された文字を見て、心臓が早鐘を打つ。

美 咲

やった!

美 咲

千佳、一歩前進やで!

美 咲

でも、
これからどうすれば...

美 咲

まずはフォロー承認されるの
待とうや!

[ その日の夜 ]

ベッドに横になって、スマホの画面を見つめる。

まだ承認されてへん。

当たり前やんな。

知らん後輩からのフォロリクなんて。

諦めかけたとき、通知が来た。

{     角名倫太郎があなたの     } { フォローリクエストを承認しました。 }

え。

承認された。

心臓が爆発しそうなくらいドキドキする。

角名先輩のアカウントを開く。

投稿を見る。

バレーの練習風景。

仲間との写真。

どの写真も、電車で見たあの人だった。

もっと見たい。

もっと知りたい。

でも、これ以上どうすれば...。

[ 翌日 ]

土曜日の昼過ぎ。

美咲から電話がかかってきた。

美 咲

千佳、DMしてみたら? 』

千 佳

え?

美 咲

やって、フォロー承認
されたんやろ? 』

美 咲

ほな次はDMやで! 』

千 佳

でも、なんて言えば...

美 咲

「 はじめまして 」で
ええやん! 』

美 咲

そこから会話広げて
いけば! 』

千 佳

無理やん、そんな...

美 咲

千佳、このままやったら
何も始まらんで? 』

美咲の言葉が胸に刺さる。

そうや。

何もせえへんかったら、何も変わらへん。

千 佳

...やってみる

美 咲

その意気! 』

美 咲

応援してるからな! 』

電話を切って、DMの画面を開く。

何を書けばいいんやろ。

手が震える。

文字を打っては消して、また打っては消して。

結局シンプルな言葉を選んだ。

{ 初めまして。フォローありがとうございます。 森川千佳です。 }

送信ボタンを押す前に、何度も読み返す。

変ちゃうかな。

おかしくないかな。

深呼吸して、えいっと送信ボタンを押した。

既読がつくのが怖くて、すぐにアプリを閉じた。

それから一時間。

通知が来た。

角名先輩からの返信。

{ 初めまして。角名です。 こちらこそフォローありがとうございます。 }

返信が来た。

ほんまに返信が来た。

嬉しくて、胸がいっぱいになる。

でも、これからどう返せばいいんやろ。

千 佳

えっと...

{ 1年生です。 バレー部の活動、いつも素敵やなって思ってます。 }

また既読がつくのを待つ時間。

心臓がドキドキする。

{ ありがとうございます。 }

{ 1年生なんですね。 学校で見かけたら声掛けてください。 }

『 声掛けてください。 』

その言葉が、何度も頭の中でリピートされる。

[ 月曜日 ]

私は2年生の教室がある階に用事を作って 何度も通った。

でも、角名先輩の姿を見つけられへんかった。

美 咲

千佳、どうやった?

昼休み、美咲が聞いてくる。

千 佳

会えへんかった...

美 咲

そっか

美 咲

でも、DM出来たんやから
すごいで!

千 佳

でも、これからどうすれば...

美 咲

また話しかけてみたら?

千 佳

なんて話せば...?

そのとき、廊下を歩いていた私たちの前を 誰かが通り過ぎた。

背が高くて、黒髪で、リュックを片方の肩にかけた 男子生徒。

角名、ちょっと待てー!

誰かが呼ぶ声。

『 角名 』

振り返ると、角名先輩だった。

心臓が止まりそうになる。

美 咲

千佳!

美咲が私の背中を押す。

千 佳

ちょ、ちょっと!

よろけた私は、角名先輩にぶつかりそうになった。

倫 太 郎

わっ

角名先輩が私の腕を掴んで、支えてくれた。

倫 太 郎

大丈夫?

顔をあげると、角名先輩の顔があった。

近い。

すごく近い。

千 佳

だ、大丈夫です!

千 佳

ごめんなさい!

慌てて距離をとる。

顔が熱い。

倫 太 郎

気をつけてね

角名先輩は優しく笑って、そのまま行こうとした。

千 佳

あ、あの!

思わず声を掛けてた。

角名先輩が振り返る。

千 佳

DMした森川です

倫 太 郎

あ!

角名先輩の顔が明るくなる。

倫 太 郎

森川さんか、DMありがとう

千 佳

こちらこそ!

緊張で声が上がる。

倫 太 郎

また、話しかけてね

そう言って、角名先輩は微笑んだ。

優しい笑顔。

胸がドキドキする。

千 佳

はい!

角名先輩が行ってしまったあと 私はその場に立ち尽くした。

美 咲

千佳ー!

美 咲

すごいやん!

美 咲

話せたやん!

美咲が駆け寄ってくる。

でも私の頭の中は、角名先輩の笑顔でいっぱいやった。

また、話したい。

もっと、話したい。

✧ 次回予告 ✧

角名先輩と話せるようになった千佳。

少しずつ距離が縮まる2人。

でも、千佳の心には「 不安 」が芽生えて──。

第 3 話  「 距離 」

つづく

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