「僕は君のヒョン」
歌詞小説『SMAP 朝日を見に行こうよ』
初めて、ユンギの「The last」を聞いた時、鳥肌がたった。 そして、こう思ったんだ。 「ああ、僕はユンギの何も知らなかったんだ…。」 と。 ルームメイトで、ユンギの事なら誰よりも分かると思っていたのに、 僕はユンギの表面しか見れていなかったのか…。 悲しかった。 最高のルームメイトで、分かり合えていると思っていたのに、 全然そんなことはなくて…。 ユンギの事を知れば知るほど、本当のユンギの姿がぼやけて見える。 どれが本当の「お前」なんだろうな。 たまにお前が見せる、あの表情が、心に引っかかっているんだ。 ファンに見せる、優しい笑顔のユンギでもなく、 弟たちの前で強がっているユンギでもない。 時々見せる、弟らしい甘えたがりなユンギでもなく、 だるそうで、眠そうなユンギでもない、 あの表情。 何かに怯えているような、後悔しているような、 怒っているような、無表情のような… とにかく、たくさんの感情が複雑に絡みあったような…。 そんな表情。 正直言うと、お前が何を考えているのか、ヒョンには、分からないよ… 笑顔を見せている裏側で、何を考えているのか。 育った場所も、環境も違うから、 ユンギ、お前の全ては分からない。 分からないけど、知りたいんだよ。 お前が今まで見てきたものや、感じたこと。 多分、それは僕が想像する以上に、遥かに、 辛い事や厳しい事があったんだろう…。 ユンギ…、お前の裏側に何が潜んでいるのかわからない。 分からないから、そこに足を踏み入れるのが怖いんだ。 だけど。 知りたいんだよ。 知りたいだけなんだ。 だから、どうかこんな僕を、 拒絶しないでくれ。
ジン
マンネラインの三人は、Vliveをしているようだ。 そして、J-hopeとナムジュンは、コンビニに行くと言っていた。 暇だった為、ユンギの部屋へと向かう。 昔は、ルームメイトだった為、よく一緒の部屋で生活をしていたが、 最近では、メンバーの一人一人に個室の部屋がもらえるため、 ユンギの部屋に行くのは、久しぶりだ。
コンコン。 しばらく待っても返事がないため、ドアを勝手に開ける。
ジン
ユンギが、デスクの上に突っ伏して寝ていた。 多分、音楽などの作業をしている途中に電池が切れたのだろう…。 机の上に散らばっているたくさんの紙には、たくさんの歌詞が並んでいて、 たくさん線で消されたり、付け足しされたりしていて、 ユンギの葛藤の様子がうかがえる。 ゆっくりとユンギの肩を支え、ユンギが起きないように そっと、抱き上げる。 そして、ベッドまでユンギを運ぶ。 しずかにユンギをベッドの上に乗せて、布団をそっとかける。 そして、僕は近くにあったソファーに腰を下ろす。
シュガ
ジン
シュガ
ジン
どうやら、夢でうなされているようだ…。 そして、苦しそうな、泣きそうな表情を浮かべている。
ジン
シュガ
ジン
汗をすごくかいているユンギにタオルとコップ一杯の水を手渡す。
ジン
シュガ
ジン
シュガ
この時、ユンギの本当の言葉の意味を理解していなかった。 僕は、デスクの上にあった、たくさんの紙を手に取る。
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
そこには、ユンギの壮絶な過去がたくさん書かれていた。 後の、「The last」や、「Dear my friend」、 「Shadow」となる曲の歌詞がたくさん並んでいたのだ。 対人恐怖症…、強迫障害…、うつ病…? 知らない。 聞いたことがない。 知らないユンギが、そこには居た。 その場に漂う、沈黙。 僕は、どうユンギと向き合えばよいのかわからなくなった。 ユンギの方を見ると、ユンギはぱっと目をそらした。
ジン
シュガ
ジン
ぱたん…。 ユンギが出て行った後のドアの音が切なく感じる。 ユンギがいなくなった後の部屋は、がらんとしていて、 それがユンギの孤独を表現しているようで。 拒絶された…気がした。 ユンギ…、お前はやはり、僕に話してくれようとはしないのか…。 本当は、マネージャーに呼ばれてないんでしょ…? そんな簡単な一言が、口から出てこない。
ジン
一人残された部屋。 もう一度、じっくりと歌詞の書かれた紙に目を通す。 対人恐怖症、強迫障害、うつ病の他にも、 たくさんのパワーワードが並んでいる…。 少し読んだだけで、どれほどの人生を歩んできたのかがうかがえる。 「怖いんだ、高く飛ぶことが、俺は怖い。」 「誰も言ってくれなかっただろ、ここがどれほど淋しいのかを。」 たったの数行から伝わってくる、ユンギの葛藤。 なぁ、ユンギ、もっと僕に頼ってよ。 もっと、甘えていいんだよ。 俺は、歌詞の書かれた紙を静かにデスクに戻し、 静かに部屋を出た。
下の階へ降りると、そこにはJ-hopeとナムジュンを除いたメンバーが居た。
グク
テヒョン
ジミン
ジン
テヒョン
ジミン
シュガ
ユンギは、笑っているけど…。 今は、何を考えているのだろうか…。 ユンギは、メンバーの前でも常に気を張っているように見える。 僕らの前では、気を抜いていいのに、 いつも強がっているように見えるというか…。 弟たちに心配をかけないように、いつも笑顔を見せたりしている。 弱みを見せない。 だから、よけいに心配だ。 いつか、ユンギが壊れてしまうのではないかと。 僕たちは、家族のようなものなんだから、 僕らの前では気を抜いていいんだよ。 ユンギをしばらく見つめていたが、ユンギは僕とは 目を合わせようとしなかった。
その夜ー。 僕は、やはりユンギの事が気になって、眠れなかった為、 ユンギの部屋に向かった。
ジン
ユンギはもう寝ているようで、返事がなかった為、 遠慮なくドアを開ける。
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
ユンギは遠慮がちにためらいながら布団に入ってきた。 ユンギのふんわりとした甘い匂いが鼻をくすぐる。
シュガ
ジン
そういって、何時間くらいたったのだろうか、 ふと、夜中に目を覚まし、隣を見ると、 ユンギは起きていて、宙をただぼんやりと見つめていた。
ジン
シュガ
ジン
シュガ
聞き間違えか…?というように、目をこするユンギ。 僕は、静かに電気をつけて、ベッドから起き上がる。
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
ジン
シュガ
ジン
シュガ
今、どうしても聞きたかった。 このタイミングを逃してしまうと、もう二度と聞けない気がしたから。 僕は、必死にユンギに訴える。
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
ジン
ジン
ジン
ジン
ジン
シュガ
ジン
シュガ
シュガ
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
ジン
シュガ
ジン
驚いた…。 正直、僕はユンギに必要とされていないと思っていた。 なぜなら、ユンギの方が自分よりずっと 落ち着いていて、大人っぽくて、ヒョンらしかったから。 だから、嬉しかった。 そんな風に思っていたなんてな。
シュガ
夜の海を見つめながら、 ぽつりぽつりと静かに話し始めるユンギ。 ユンギの一つ一つの言葉により、 次第にはがされ、あらわになってゆく、ユンギの過去。 それは、やはり 自分が想像していた過去を遥かに超えるほどの、 過去だった。
シュガ
シュガ
ジン
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
ジン
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
ジン
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
ジン
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
ジン
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
シュガ
ジン
「辛かったんだな」 そんな一言でユンギの人生を 語ってはいけないほどに、ユンギの人生は、複雑だ。 自分なんかより、もっとたくさんの事を見てきた、ユンギ。 でも、僕は君の全てを受け入れるって決めたから。 もう大丈夫だよ。 僕がいるから。 君のヒョンがいるから。 だからどうか、希望を持って。 生きててくれて、ありがとう。
シュガ
ジン
シュガ
ジン
シュガ
隣にいるユンギの海を見つめる横顔が、 切なすぎて。 急にユンギの存在が儚く思え、 捕まえておかないと、ふっと消えてしまいそうで…。 だから、力強く抱きしめた。 ユンギの存在を確認するかのように、 思い切り、抱きしめた。
ジン
シュガ
遠くの海から、ゆっくりと顔をだす朝日。 朝日に照らされ、輝く水面が、美しい。 風は、爽やかに通り過ぎ、水面の上を優しく駆け抜ける。 そんな素晴らしい朝を見つめるユンギの横顔は、 どこか、晴れ晴れとしていた。
ジン
例え、この先、どれほど高い壁が立ちふさがっていたとしても、 僕たちなら、大丈夫だ。 そんな確信が芽生える。 ユンギ。 お前の書く歌詞は、勇気をくれる。 全てを教えてくれる。 お前の作るメロディーは、人を救う。 忘れていた大切なことを、思い出させてくれる。 そして、お前の笑顔はー。 世界中を笑顔にさせてしまう。 だから、どうかその笑顔を忘れないで。 この先、辛い事や、悲しい事、たくさんあると思う。 まだ、見たことのない景色が広がっているから。 でも、僕らなら、きっと大丈夫だから。 僕たち七人そろえば、なんだって、乗り越えられる。 そう確信させてくれたのは、ユンギ、お前だよ。 だから、どうかその笑顔を、忘れないで。
SMAP_朝日を見に行こうよ 眠れない夜は 僕を起こして欲しい 一人きりの真夜中って とても寂しいでしょ 夜空の星に 願いを込めてみれば いつかきっとかなう日が 君には来るだろう いつか大人になって恋をして 心が変わっていても 今見てる風景の様に 変わらないものもある 僕とこの先の海へ 朝日を見に行こうよ きっと忘れないで その澄んだ心を大切にね 悲しいことも いつかきっとあるはず でも夢を捨てるなんて とても馬鹿なこと 手をつないで歩いたことなんて とっくに忘れていても "きれいね"とつぶやいた そのままでいて欲しい 僕とあの桟橋まで 朝日を見に行こうよ ほらオレンジ色の 海がきれいでしょ そうさ悲しくなったとき 思い出してみてごらん きっと忘れないで 二人の思い出を大切にね Fu Yeah lalala… いつかこの桟橋まで 朝日を見においでよ あの日口ずさんだ 歌が聴こえるでしょう そうさ戻っておいでよ 時がずっと流れても Oh この朝日は変わらないよ いつでも待ってる 僕とこの先の海へ 朝日を見に行こうよ きっと忘れないで その澄んだ心を大切にね いつまでも…
コメント
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ユンギさんの実話に基づいて書いてあって、感動しました…!