TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

たった、一週間。

一覧ページ

「たった、一週間。」のメインビジュアル

たった、一週間。

1 - たった、一週間。

♥

50

2019年06月03日

シェアするシェアする
報告する

緑川 春

歩花

緑川 春

歩花起きて

伊波 歩花

……しゅ、

伊波 歩花

春?

緑川 春

そうだよ、僕だよ

緑川 春

久しぶり、元気だった?

伊波 歩花

ほんとに春なの!?

伊波 歩花

これは夢?

緑川 春

夢じゃないよ

伊波 歩花

だって、だって春!

伊波 歩花

あなたがここにいるはずないじゃない!!

緑川 春

そうなんだよね

緑川 春

僕は確かに死んだはずなんだけど…

緑川 春

神様がね、お別れを言ってきなさいって

緑川 春

一週間くれたんだよ

緑川 春

一週間もくれるなんて神様も太っ腹だね

伊波 歩花

何笑ってるのよ…

伊波 歩花

私、本当に後悔したのよ?

伊波 歩花

今もずっと…

緑川 春

ねぇ、歩花

緑川 春

公園に行こう?

伊波 歩花

え、公園?

緑川 春

そう、子供の時よく遊んだ公園

緑川 春

まだあるかなぁ

伊波 歩花

あると思う!!

緑川 春

じゃあ行こう!

伊波 歩花

でも…

緑川 春

うじうじしたって仕方ないよ

緑川 春

今は一週間を全力で楽しもう!

伊波 歩花

わかった!

公園

の、はずだった…

緑川 春

まさかなくなってるなんてね〜

伊波 歩花

仕方ないよ、18年も前だし…

緑川 春

18年かぁ…

緑川 春

僕たちが出会ってから18年…

緑川 春

長かったねぇ

伊波 歩花

春が引っ越してきたの

伊波 歩花

お互い5歳の時だもんね

緑川 春

あの時は付き合うとか思わなくて

緑川 春

ただ単純に幼馴染だったんだよね…

緑川 春

明日はどこ行こっか

伊波 歩花

駅前の、ルミエールは?

緑川 春

あ、カフェかぁ、いいねぇ

緑川 春

楽しみだなぁ

2日目

緑川 春

いい?

緑川 春

僕の姿は周りには見えてないから

緑川 春

話す時は小声ね!

伊波 歩花

う、うん…

あぁ、あなたが「普通」だったら…

緑川 春

ここは2人の秘密の場所だったよね

緑川 春

誰にも内緒でさ

伊波 歩花

そうだね〜

緑川 春

こ、告白したのも

緑川 春

ここだったね…

伊波 歩花

う、うん

緑川 春

君を幸せにするって

緑川 春

約束したんだけどなぁ

泣きそうになるのをこらえて

あなたを見つめた…

隣の席に座る女の子とあなたを通して目があったことが

悲しくて仕方がなかった…

緑川 春

明日は、海に行きたい

伊波 歩花

いいよ、行こう!

3日目

緑川 春

海だぁ!

緑川 春

もう見れなくなっちゃうのかなぁ

緑川 春

こんなにも綺麗なのに

伊波 歩花

や、やめてよ

伊波 歩花

悲しくなる…

緑川 春

ごめんごめん

伊波 歩花

今は冬だし入れないけど

伊波 歩花

夏は2人で遊びにきたね

伊波 歩花

小さい時は伊波家と緑川家でもきたね

緑川 春

懐かしいなぁ

緑川 春

花火したよね

伊波 歩花

来年も来年もって

伊波 歩花

毎年きてた

伊波 歩花

今年の夏だって…来年もって…

緑川 春

うん、ごめんね?

あなたは何も悪くないのに…

水平線に夕日が浮かんだ

でもすぐに沈んで暗くなった…

緑川 春

帰ろっか

伊波 歩花

うん、帰る…

あなたと見る最後の海を

私は目に焼き付けた

4日目は遊園地に行った

5日目は春の家へ行った

緑川 春

変な感じだなぁ

緑川 春

僕はここにいるのに

緑川 春

誰も気づいてくれない…

伊波 歩花

私は見えてるから大丈夫

「心強いなぁ」

あなたはそう言って笑った

6日目

伊波 歩花

本当にここで良かったの?

緑川 春

いいのいいの

緑川 春

ここが落ち着くの

伊波 歩花

落ち着くって…私の部屋が?

緑川 春

そうそう

緑川 春

ただこうやって

緑川 春

歩花の隣でぼーっとしてたかった

緑川 春

してたかったんだけどなぁ…

伊波 歩花

ごめんね…

伊波 歩花

ごめん…

伊波 歩花

ごめん…

緑川 春

歩花のせいじゃないって

伊波 歩花

でも…

緑川 春

明日は、連れて行きたいところがあるんだ

伊波 歩花

どこ?

緑川 春

内緒

悲しそうに笑って

もう寝よって

あなたは消えてしまった

7日目

伊波 歩花

連れてきたかったのって

伊波 歩花

ここ?

伊波 歩花

嫌よ、帰りましょう

緑川 春

だーめ

緑川 春

よく見て

伊波 歩花

だってここ

伊波 歩花

あなたが死んだ場所よ!?

伊波 歩花

何考えてるの!?

信号が点滅して音が流れる

横断歩道の上にいる人は足早にその上を去る

緑川 春

僕はね、君に立ち直って欲しいんだよ

伊波 歩花

え?

緑川 春

僕が死んでずっと泣いてた

緑川 春

部屋にこもりっぱなしで

緑川 春

見てられなかったんだ

伊波 歩花

だって、立ち直れるはずないじゃない…

伊波 歩花

あの時私が

伊波 歩花

ちゃんとよく見てれば…

緑川 春

そうだね、僕は死ななかったどころか

緑川 春

君も危ない目にあうこともなかったさ

伊波 歩花

えっ…

緑川 春

でも、僕だって

緑川 春

選んだんだよ、あの一瞬で

緑川 春

君を見捨てて逃げることもできたさ

緑川 春

でも僕は考えずに君を選んだ

緑川 春

当たり前じゃないか

緑川 春

僕は後悔してないよ

伊波 歩花

でも、もっとちゃんと…

緑川 春

君が、気持ちが走るくらい

緑川 春

僕のもとに来たがってたんだって

緑川 春

嬉しかったよ

緑川 春

あの時の笑顔を見れただけで何よりも幸せだったんだよ

緑川 春

僕は君のせいだなんて思っていないから

緑川 春

君も自分のせいだなんて思わないで

伊波 歩花

ごめんなさい

伊波 歩花

ありがとう…

緑川 春

うん、もう大丈夫?

伊波 歩花

うん…

伊波 歩花

まだ信じられないけど

伊波 歩花

この一週間がなかったら

伊波 歩花

もしかしたら、あなたのもとに行ってたかもしれない…

緑川 春

そうならなくて本当に良かったよ

緑川 春

神様に感謝しなくちゃね

伊波 歩花

うん、私からもお礼を言っておいてね

伊波 歩花

あと

伊波 歩花

春をお願いしますって

緑川 春

あはは、なにそれ〜

緑川 春

……

緑川 春

じゃあ、もう逝くね

伊波 歩花

まっ、待って!!

伊波 歩花

ずっと先になっちゃうかもしれないけど

伊波 歩花

あなたにまた会いに行くから!

伊波 歩花

待っててくれる?

緑川 春

待ってるよ!

緑川 春

でも、当分は来なくていいからね!

伊波 歩花

うん!

伊波 歩花

大好き!!

緑川 春

……!!

緑川 春

もぉ神様…

緑川 春

歩花とのこれまでをたった一週間で終わらせられっこないよ!!

伊波 歩花

神様太っ腹って言ってなかったっけ?

「あはは〜言ってたなぁ」

そう言ってあなたは消えてしまった

たった一週間

されど一週間

私は幸せだった

もう隣にいることを感じられなくなる

手も繋げなくなる

でもちゃんと

心にいる

たった、一週間

それだけで、これから生きていこうと思えた

伊波 歩花

(またね、春)
loading

この作品はいかがでしたか?

50

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚