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吉村敦士

僕のせいじゃないですよ

開口1番に男の口からは、悪びれる風もなく自己弁護が流れ出る

吉村敦士

アイツが悪いんだ

吉村敦士

僕は言われてやっただけですよ

橘圭一

しかしね、吉村さん

橘圭一

実際に貴方は人を殺してるんですよ。まだそんなことが言えるんですか

吉村敦士

言えますよ。僕は何も悪くないですから

橘圭一

人を殺したのにですか?理解に苦しみますね

吉村敦士

じゃあ理解できない刑事さんが悪いです。自分の理解力の無さを人のせいにしてはいけませんよ

橘圭一

百人に聞いたら百人が理解できないと思いますよ

吉村敦士

その百人が無能なのが悪いんです。

吉村敦士

僕は悪くない

俺は露骨にため息をついてやった

今日も「大根撲殺事件」の犯人は動機について語ろうとしない

1番手口は珍妙で、1番頭のネジが外れている

常軌を逸した自己弁護で取り調べは平行線の一途をたどっている

橘圭一

そろそろ話して欲しいんですがね

橘圭一

どうして大根なんかで撲殺したんですか

吉村敦士

僕を責めないでくださいよ

吉村敦士

どうして僕が悪いみたいになってるんですか

吉村敦士

計画を立てたのもお膳立てしてくれたのも僕じゃないんですよ

吉村敦士

計画を立てた人が悪いんじゃないですか?殺人キョーサという罪がありますよね

橘圭一

殺人と言う罪もありますがね

吉村敦士

だから僕は悪くないですよ

こいつの素性はもう調べてある

こいつは昔からこんな奴だった

Kさんへ。

久しぶりだけど言いたいことがある。

殺人は上手くいったよ。まぁ本題はそこじゃない。

僕は今檻の中にいる。捕まったんだ

完全犯罪にはならなかった。ツメが甘いよ。 半端な計画立てたKさんが悪い。

おかげで毎日尋問。全部Kさんのせいだよ。

ちゃんと責任とってもらわないと。

とか、言ったらあの刑事みたいに「理解に苦しむ」とか「百人に聞いても理解できないと思う」とか言われるんだよね。

自分が無能なだけだろ、偉そうに。

Kさんはそんな無能どもの1人じゃないだろ?

家族を殺されたって言う普通じゃない境遇が、他とは違うって物語ってる。

僕の話を聞いてくれるだろ?

最後まで読んでよ。それが責任ってもんだ。

そもそも僕はそこらの凡庸な人間とは違うんだ。

僕のやることに間違いはない。

だけど無能で低俗なサルどもは僕の躍起になって、僕の態度を改めるように言う。

僕の態度が悪いんじゃない。無能だからそう見えるんだ。 「たいしたことない」?お前の目が悪いんだよ。

だけど唯一、僕が特別な存在だってことを理解した人がいる。

荒木宗一って人。

荒木さんは、和食料理店を経営している。

料理人っていいなって思ったから、僕は高校を卒業したらすぐに弟子入りした。

荒木さんは何度も僕に「期待している」と言った。期待されてるから僕も頑張った。

僕は荒木さんに一目置かれてたんだ。

和食料理店だから七輪で料理を提供する時もある

僕それの火おこし担当。 僕が誰よりもスピーディーに点火できるからね。

僕は有能なんだ。荒木さんに期待されてるんだ。

それなのにあの言葉を聞いた時はびっくりしたな。

僕と荒木さんが飲みに行った時のこと。

いつになく酔った様子の荒木さんがポツリポツリと語りはじめた。

「俊介っていうすごく優秀な息子がいて、すごく期待している」 「それに比べて、もっと私を見てよ とヒステリックに騒ぎ立てる妻が最近疎ましい」

「俊介が昨日から帰ってこない」「妻が上機嫌」

「なんかあるな と確信した」 「俺の最愛の息子に妻が手を出した」

「妻が邪魔だ」 「許せない」

と、こんな感じのことを言ってた。

この後だよ。驚いたのは。荒木さんは僕を見るとへへッと笑って言ったんだ。

「こんなこと君に言ってもしょうがないな」

ちょっと待ってよ。

僕じゃ何も出来ないってこと?僕はそこらへんの人間とは違うのに?

特別な存在である僕が、ヒステリックな「かまってちゃん」1人黙らせることが出来ないって? 冗談じゃない。

僕は特別で有能だ。最高の形で期待に応えなきゃいけない。

足がつかないように、証拠隠滅可能な食材(大根)を凶器にしようとKさんが言った時は感心したよ。

これなら完全犯罪が狙えるってね。

だけど結果は散々。 宗一さんは心臓を刺されて殺されるし、僕は捕まるし。

Kさんの言う通りにやったらこうなったんだ。 Kさんのせいだよ。

とにかく早く返事書いてよ。責任とってもらわないと。

吉村敦士

橘圭一

いやー、醜い自己弁護の羅列でした。

橘圭一

読むのに苦労しましたよ

吉村敦士

は?

橘圭一

「Kさん」宛ての手紙、読ませて頂きました

吉村敦士

はあ?なんでお前っ……

橘圭一

いけませんか?

吉村敦士

当たり前でしょう!
一介の刑事がプライベートな手紙を勝手に読んで…っ

橘圭一

俺が悪いですかね?

吉村敦士

当たり前だろ!プライバシーっていうのを考えろよ!

橘圭一

しかし、無防備な手紙を出す貴方が悪いのでは?

橘圭一

本当に見られたくないなら、スカシなり何なりするべきでは?

橘圭一

そこまで気が回らなかった貴方の考えの無さが悪いです。

吉村敦士

お前…っ

橘圭一

___人のフリ見て我がフリ直せです。貴方みたいな馬鹿にはこれくらいしないとわからないかと。

吉村敦士

はあ?馬鹿?俺のこと言ってんの?
俺は特別なんだよ。期待されてる

橘圭一

「期待してる」。確かに誰にでも言われる言葉ではない

橘圭一

しかしね、言うのは誰にでもできる。

橘圭一

着火剤があれば、誰でも点火できます。

橘圭一

「言われた通りにやっただけ」?
やるやらない は貴方が決めたことですよ

橘圭一

責任転嫁が目に余ります

橘圭一

断言しましょう。

橘圭一

貴方は悪い

橘圭一

専門は炭に点火することですか?

橘圭一

いや違う

橘圭一

責任を転嫁することですね

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コメント

6

ユーザー
ユーザー

次回完結となります。 吉村のテンカ芸は天下一品です。ああっ、座布団… 読んでくださりありがとうございます❗

ユーザー

吉村さんは自分は荒木さんにとって、特別な存在だから殺人を起こした。アドバイザーKさんの言った通りに荒木さんの悩みの種である妻を☆☆☆た。けど捕まっちゃったから、計画は岸壁じゃない。むしろ真犯人は自分じゃない。計画を立てたKがあいつが一番悪いって言って、責任転嫁したんですね。 Kさん出てきてないきけど、実は私だったりして笑(°o°C=(_ _;ポカっ サスペンスドラマみたいで、面白かったです。

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