黒野
はっ...?何言ってんだ燐堂。
燐堂
とぼけても無駄よ。
蘭丸
あははっ、燐堂さん何言ってるんすか?燐堂さんの左足はちゃんとあるじゃないすか。
燐堂
流鏑馬、アンタ知ってたでしょ。
蘭丸
何のことっすか?
燐堂
全部思い出したのよ。“あの出来事”もアタシの足のこともね。
蘭丸
その苗字の呼び捨て、言動...どうやら本当に思い出したんすね。
燐堂
だから言ってんでしょ?相変わらずムカつくわね。
黒野
おい。どういうことなんだ?さっきから左足がどうとか全て思い出したとか...
燐堂
アンタ、まだしらばっくれるつもり...
蘭丸
違うっすよ、燐堂さん。恐らく黒野君は本当に思い出してないんすよ。
燐堂
はあ?嘘でしょ?こんだけの人数が思い出してるのにまだ思い出してないなんて、どんだけ寝坊助さんなのよ。
黒野
....
蘭丸
あ、悪いっす黒野君。黒野君はまだ思い出していないっすけど大丈夫っすよ。何かきっかけがあれば思い出すはずっすから。
黒野
きっかけ...か。わかった、努力する。
燐堂
努力じゃなくて、しっかり思い出してもらわないと...ね。
黒野
....
蘭丸
ところでこれからどうするんすか?一応この市内には魃さんがいるっすけど...
燐堂
もしかしてここに来る途中にあった吐血や嘔吐してた死体って棘為の仕業なのか...
燐堂
流鏑馬、棘為がどこにいるか分かる?
蘭丸
少し待ってくださいっす。
蘭丸
蘭丸
どうやら圉鵺駅付近を歩いてるみたいっす。
燐堂
それじゃあ今から棘為を捕まえるための作戦を説明するからよく聞いてて。
病院
朱音
ちょっ、ちょっと待ってください‼︎何なんですか‼︎いきなり入ってきて目を見えるようにしてやるって...ふざけるのもいい加減にしてください‼︎
???
私は別にふざけてないが?
???
それとも何だ?貴様は目が見えるようになりたくないのか?
朱音
それは...
朱音
見えるようになりたいですよ...
朱音
でもそれは無理なんだって‼︎生まれつき盲目でお父さんやお母さんの顔も、面会に来てくれる兄さんの顔すら見ることも出来ない...
???
それならなぜ入院をしているんだ?
朱音
先生が目を見えるようにしてくれるっていうから...
???
貴様がこの病院に入院をしたいと言ったのか?
朱音
違う...私じゃない...
朱音
けどお父さんとお母さんが私の目を治してくれるよう手当たり次第調べてくれてようやく見つかったのがここの病院なんです...
朱音
でもこの病院は治す気もないのに患者を長期入院させて高い入院費をむしり取るっていう話を昔聞いたことがあって...
???
それならそのことを親に言えばいいじゃないか。
朱音
言えないですよ...会社が潰れて借金を払いながら、2人の生活費をほとんどこの入院費に費やして...
朱音
申し訳なさで何も言えないし、今言ったら2人を傷つけてしまうから...
朱音
だから治すこともできないのに簡単に治すなんて言葉を私に言わないでくださいっ‼︎
???
???
要するに貴様の目が治れば両親の負担がなくなりwin-winになるということか。
朱音
だからそんな簡単に...‼︎
???
少し下を向け。
朱音
えっ?な、何を...
パァァァッ
???
気分はどうだ?
朱音
目がっ‼︎...えっ?
朱音
朱音
目が....見える...
朱音
目が見えるっ‼︎
朱音
目が見えるようになったぁ‼︎これが色ってものなんだぁ‼︎
???
喜んでいるところ悪いが貴様、最初に私が言ったことを覚えているか?
朱音
えっ...と、あなたに協力をする...ですか?も、もちろん何でも協力しますっ‼︎
???
その言葉に嘘はないな?
朱音
はいっ‼︎だって私の目を見えるようにしてくれた恩人ですからっ‼︎
???
そうか、なら行くぞ。
朱音
えっ?行くってどこにですか...?
???
行けばわかる。
朱音
で、でも勝手にいなくなったら...
???
貴様は金のことしか考えていないこの病院に残りたいか?
朱音
いや...それは残りたくないですけど...
???
なら行くぞ。無駄話をしている暇はない。
朱音
わ、わかりました。えっと...なんてお名前ですか?
???
私か?私の名前は...
???
???
鹿王院 琥珀だ。