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こんな夢オチ素敵すぎますって…
遅れました やっぱり月見。様最高です 寂しくない切なさと微笑ましい後味がよきです・・・
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
注意!! ・安定の青黒です ・ハロウィンネタ🎃👻 ・息をするように同棲してます ・青黒とハロウィンのちょっと不思議なお話💭
月見。
目の前に立つ彼の口から飛び出した言葉に、俺は心底訳が分からないという顔で瞬きを繰り返した。
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身長180センチの成人済み男性が言うには随分とかわいらしいその台詞。しかも無駄に発音が良い。
俺は半ば呆れながらも、来ると思った。なんて言いながらお菓子を差し出していただろう。
・・・今日が10月31日なら。
俺は一旦まろへの返事を放棄し、そっとスマホを取り出した。ロック画面を映し出す。それから壁にかかっているカレンダーにも視線を移した。
俺の日付感覚が狂ったのか、スマホがバグっているのか。
・・・今日は、10月1日である。
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合ってる。何もバグってなかった。いや、だったら尚更戸惑うんだが。
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いっそのこと間違ってて欲しかった。
俺今どういう反応したらええの?大人しくお菓子渡しとく?そもそも手元にあるかは分からんけど。
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よく聞いた俺。
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ハロウィン月間??
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何も繋がってない。無駄に発音が良いのもちょっと腹立つ。
そもそも何?ハロウィン月間て。
しかも仮装も何もしてないやんまろ。なんなら今寝起きで部屋着やし。
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本当に大人組かこいつ。なんて半ば呆れながらも、戸棚へと歩き出す俺も俺だなと苦笑する。メンバーに、特に彼に甘いのは自覚済みだ。
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丁度良かった、とほっと息を吐き出す。
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何を今更、と思わず笑みを溢した。変なところで真面目と言うか遠慮すると言うか、そういうとこあるよな。
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にこにこと笑うまろを見ていたら、今日が10月1日だろうとなんだかどうでも良くなってしまった。
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10月2日。ハロウィン月間と言っていたしもしかしたら今日も来るかと思っていたが、案の定彼の口から飛び出したお決まりの台詞。
相変わらずの部屋着姿、暴れている寝癖にふっと口元を緩め、俺はその頭をわしゃわしゃ撫でた。
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ラッピングされたそれを差し出せば、まろはぱっと表情を輝かせた。
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まぁ、まろの言う通り。俺は普段料理は振る舞うけどお菓子はあまり作らない。作ってもバレンタインくらいだろう。前にお菓子作ったのとかいつだよって感じやし。
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特別や。と笑えば、まろは一瞬目を見開いた後、満面の笑みを浮かべた。
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高身長の急なハグに、倒れそうになる体をなんとか踏ん張る。自分の体幹に感謝だ。まろはそろそろ勢いを調節して欲しい。
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目を輝かせているその姿が、とても愛しいと思った。
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寝起きだと言うのにここまでテンションが高いまろは珍しい。今日も手作りのお菓子を手渡せば、色褪せることのない満面の笑みを浮かべてくれる。
10月も半ばに差し掛かる。ハロウィン月間が始まってからというもの、初日以外は毎日お菓子を手作りしていた。クッキー、マフィン、ガトーショコラ、パウンドケーキ、他にも沢山・・・。最早何を作ったか分からない。
ハロウィン月間なんてよく分からないことを言い出したまろに散々戸惑っていたくせして、俺も大概甘いなと思う。
彼の笑顔を見たらどうでも良くなってしまって、気付いたら次の日のお菓子を考えているのだ。
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まぁ、完成するまでに犠牲となったお菓子もいたが。初めてにして一つでも無事に作り上げられれば万々歳だ。
俺は味が良ければいいから形が崩れたのは自分で消費する。でもまろにあげるものは話が別。
・・・こんな恥ずかしいこと絶対言わんけどな。
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俺達が付き合ってることは公表していない。と言うか赤組もいむしょーも付き合っているし、全員が公表したら大騒ぎどころの問題じゃない。メンバー全員誰かと交際してる歌い手グループって前代未聞過ぎだろ。
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まろって大体こういう時ないこのとこ行くよな。
以前ないこがげんなりした様子で、「あにき、まろのあにき自慢聞き疲れたからどうにかして・・・」と言って来たのを思い出す。いや俺に言われてもな。
まろはもう既にぽちぽちとスマホの画面を打っていた。早。
悪いないこ、止められんかったわ。相手してやってくれ、と心の中で彼へと謝罪を送る。こうなったら止められん。
にやける口元を隠しもせずリビングのソファに座りスマホと向き合う彼に、俺はもう明日のお菓子のことを考え始めたのだった。
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笑みに半分ほど呆れを滲ませながら、りうらが言う。
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沈黙。明らかに考えているのであろう静かになったその空間に、俺は小さく吹き出した。
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言うと思った。と予想通りの回答に笑みを溢す。
一見ないこからりうらへの圧倒的一方通行に見えて、赤組の二人はかなりの相思相愛である。
気付いてないのはないこくらいだ。それもりうらがあまりその大きな気持ちを表に出していないからだが、周りから見れば一目瞭然だった。
りうらは普通に、と言うか滅茶苦茶、ないこのことが好きだ。
幸せそうで何より、と心の中で呟く。これからもお幸せにどうぞ。
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まぁそれならそれで別に気にしないが。お菓子作りをする良い機会になったことだし。
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頬杖をついてこちらを見つめてくるりうらが薄く微笑む。そんな顔、していただろうか。
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目を輝かせるりうらにふっと表情を緩める。やっぱりなんだかんだ可愛いなこいつも。
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突然家の中に響き渡った大声に、ビクッと肩を揺らした。こんな大声、一人しか思いつかないが。
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思ってることをそのまま口に出せば、りうらにキレ散らかしていたまろはぱぁっと表情を明るくし、それからすぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。
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その後も、お決まりの台詞と共に起きてくるまろにお菓子を渡す。そんな一日一日が過ぎて行った。
気付けば、ハロウィンはもう明日。10月30日になっていた。
いつも通りお菓子を用意して待っていれば、カチャ、と音を立てて扉が開き、まろが起きて来た。
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こんなやり取りだってもう30回目なのに、俺もまろもよく飽きないものだ。
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と言うか毎日送ってたん??
だってあにきのお菓子とか自慢するしかないやろ!と何故か胸を張るまろ。
ブロックされる寸前って、どんなこと話したらそうなんねん。会話内容見てみたいわ。
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今月は毎日がハロウィンみたいなものだったから、改めて本番だと言われてもあまり実感が湧かない。
今までと違うところと言えば、6人で仮装して集まることくらいだろうか。
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え〜〜!と残念そうに眉を下げるまろ。逆になんで着ると思った絶対着ないからな!?
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相変わらずの言い方に思わず笑ってしまう。そんなこと言っておきながら、昨日仕事帰りにお菓子買って来てたん知ってるからな。
・・・なんて言ったら何かしら言い訳したり誤魔化したりするんだろうから言わないが。
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その勢いに思わずぶはっと吹き出した。エリートがどうのって言っておきながら、家ではこんな感じなのだ。そんなところも良いのだが。
一旦着替えてくる、と部屋に戻って行くその背中を見届け、朝食を並べながら考える。
さぁ、明日は何を作ろうか。
静かな部屋の中で、俺は一人スマホを見つめていた。まろはまだ帰って来ないし、明日作るのに丁度良いお菓子を調べているのだ。
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別に美味しくできればなんだっていいとは思うが、ここまで被らずやって来たなら最後まで同じものを作らずにこのハロウィン月間を終わらせたいというのが俺の意地だ。
さてどうしたものか、さっきから色んなアプリをハシゴして気に入るレシピを探しているのだが。
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とある投稿を見つけて声を漏らした。思ったより大きな声が出たが一人なので気にしない。
見つけた。明日作るのに適したお菓子。
身近にある様なお菓子なのに、案外見落としていた。
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満足気に笑みを溢し、そっとスマホの電源を落とした時だった。
ガチャッ
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扉が開き、とある人物がその姿を現した。
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微笑む彼に、俺は首を傾げた。だって、まろが。
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まろが、もうキョンシーの格好になっていたのだ。
と言うかまろ、いつの間に帰って来てたんだ。ドアの音とか聞こえなかったし、俺どんだけ熱中してたん?
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凄い勢いで食い付かれた。
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少し間を置いて頷いたまろが、スタスタとその歩を進めた。
そして窓の前に立ち、その扉を開け放った。
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ひゅうっと冷たい夜風が部屋の中に舞い込んで来て、思わず目を細める。丁度窓の外には大きな月が浮かんでいた。明日が満月だっただろうか。
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振り返った彼が微笑む。月光を受ける彼が、その仮装も相まってなんだかいつもの彼とは全くの別人に思えた。
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そう言って、まろが俺の方へ向かって歩いてくる。すっと俺の手を取って、そのままぐっと引っ張られる。
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二人、窓際に立って空を眺める。静かな夜だった。
カチカチと時を刻む針の音だけが部屋の中に響く。お互い何も言うことなく、ただその時間の流れとお互いの存在だけを感じていた。
世界に二人だけみたい、なんてロマンチックなことは言わないが、いつもの日常とはまた違う、切り離された世界にいるかのようだった。
そうして動き続ける秒針が、0を指したとある瞬間。
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まろの言葉に時計を見れば、日付が変わっていた。いつの間にそんな時間になっていたんだろうか。
まさかとは思うが、今この瞬間に“トリックオアトリート”って言うんじゃないだろうな。
そんなことを考えた。別にあり得ないことじゃない。けど今お菓子は何もない。
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まだ用意してないんやからな、と付け足せば、一瞬きょとんとしたまろが小さく吹き出した。
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まろの言葉に首を傾げる。どういう意味だろうか。楽しみは起きてからに取っておくみたいなことか?
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するりと指が絡み合う。微笑を浮かべたまろが、外に身を乗り出すかの様に窓の枠に座った。
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またぐっと引っ張られ、思わず前のめりになる。
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まろの体が、外へと傾いた。
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繋がれた手に導かれ、そのまま二人の体は夜空へと飛び出した。
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突然の浮遊感。状況を理解するのに時間がかかる。そんな間にも、二人の体は下降して行く。
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優しく、ふわりと抱き締められる。
焦っている筈なのに、不思議と怖くない。そんな感覚だった。
抱き締められる前に見た彼の優しい表情に、その腕に。この身を委ねてしまおうと思った。
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ハッと目を開けた。瞬きを繰り返した後、思わず止めていた息をゆっくりと吐き出した。
・・・視線の先には、見慣れた天井。
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俺は、ベッドで眠っていた。
バッと体の向きを変えて横を見れば、そこには見慣れたボサボサの寝癖。
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1ミリも状況の理解が出来ず、言葉にもならない声だけが情け無く漏れる。
時計を見る。いつも俺が起きている時間だ。
・・・今のは、夢だったのか?
待て、そしたらいつからが夢なんだ。俺はいつ寝たんだ。まろが帰ってくる前か?部屋で寝落ちてた俺をまろがここまで運んでくれたとか?
十分あり得る。なんだかこれ以上考えても混乱するだけだしそういうことにしておこう、と考えるのを強引にやめ、俺はベッドを降りた。
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ハロウィン当日も、彼は安定の上機嫌で起きて来た。
またお決まりの台詞が来るんだろう。それにしても今日が最後って、なんだか寂しく感じてしまう自分がいた。
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ふわりと後ろから抱き締められる。肩にかかった重みは彼の頭のものだろう。
俺は思わず聞き返した。てっきりあの台詞が来るものだと思っていたから、ハロウィン月間が始まる前の“当たり前”に、変に動揺してしまった。
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トーストに限った話じゃない。まろは何を出そうと美味しい、好きっていつも言ってくれる。
・・・それにしても、まだ言わないのだろうか。あの台詞。
最終日くらい夜に取っておくとか?昨夜の口振りもそんな感じだったし・・・って、あれは夢だったんだっけか。ん?
早々に混乱する頭。駄目だやっぱり5秒以上は考えられない。
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安定のぽえぽえボイスでマウントもどきの発言をするまろ。俺は朝食をテーブルの方へと運びながら、そうやなぁと笑った。
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その時、部屋の中にスマホの着信音が鳴り響いた。
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スマホを手に取り、俺はリビングを後にした。
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表情に疲労を滲ませたキョンシーとフランケンシュタインのお帰り。なんてったって他4人のテンションの高さが異常だった。いや、俺らだって全力ではしゃいでたつもりだったが、流石にあれには勝てない。
やっぱり若さなのか・・・?と考え始め、こんなこと考えるのはやめようとぶんぶん首を横に振り、そんな思考は何処かへ追いやった。
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仮装して家を出てそのまま帰って来た。世はハロウィン騒ぎだし、仮装している人はかなり沢山いて全然俺達が目立つことなんてなかったが。
部屋に引っ込んでいくまろの背中を見送り、俺も着替えるかぁと自分の部屋がある方へと体の向きを変えた時だった。
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家中に響き渡ったであろうその大声に、俺はビクッと体を震わせ、まろの部屋がある方を見た。
それとほぼ同時に、バン!と大きな音を立ててその扉が開け放たれた。
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キラキラと目を輝かせるまろに対して、俺は目を丸くして固まった。
彼の腕の中に、溢れんばかりのお菓子があったのだ。
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興奮気味に話すまろの腕から、一つお菓子が溢れ落ちて、俺の足元まで転がってくる。
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そのお菓子を拾い上げて、俺はまた唖然とする。
これは、10月2日にあげたクッキーだ。
バッと顔を上げ、まろの腕の中のお菓子達を見る。
・・・どれもこれも全て、俺がこのハロウィン月間にまろにあげたものだった。
なんで、どういうことだ?まろが全部取っておいたとか?いやでも、このまろの反応。フリとは思えない。そもそもそんなフリして何かメリットがあるのかと聞かれれば何もないだろう。
・・・じゃあ、どうして?
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昨夜会った、“まろ”の言葉を思い出していた。
魔法をかけてあげるよ
彼の言っていた、“魔法”とは───
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31回目の、トリックオアトリート。
お菓子を両手いっぱいに抱えて、それでもまだ、君は望むのか。
お菓子も嬉しいけど、俺は悠佑が──
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実は冷蔵庫の中に、カボチャを使ったケーキがあった。
いつもみたいに、トリートな。とそれを渡せば、まろは喜んでくれただろう。
だけど、俺の口はそんな言葉を出すのはやめて。
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こんな台詞、もう二度と言わないだろうな。
顔に熱が集まるのを感じながら、俺はそっとまろを見上げた。
ほんのりとその頬が赤いのは気のせいじゃないだろう。暫く唖然としていたまろは、ふっと表情を緩めた。その優しい瞳が含んだ確かな熱に、どうにかなってしまいそうだった。
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まろが一歩足を踏み出し、距離が縮まる。30個のお菓子で塞がってしまっている腕が使えないのをむず痒そうに見てから、まろはそっと顔を俺の顔へと近付けた。
言葉を紡ぐことも、体を動かすこともせず。俺はただ、そっと目を閉じる。
にゃあ、と、鼻歌のように軽やかな猫の声が何処かから聞こえた気がした。
消えることのない魔法が、俺達を包んで。
静かに触れる唇に、思考も何もかも取っ払って、俺は全てを委ねた。
満月に照らされ、上機嫌な黒猫が夜の街を歩いていた。