紅葉side
浅緋紅葉
プルルルル…プルルルル……
浅緋紅葉
浅緋紅葉
浅緋紅葉
浅緋紅葉
浅緋紅葉
浅緋紅葉
浅緋紅葉
浅緋紅葉
浅緋紅葉
浅緋紅葉
あの様子だと、また泣いたな、アイツ。
アイドルの『阿部亮平』も、俺らの親友である『阿部亮平』も人前では滅多に泣かない。
それは、アイドルとしての意識も高く、優しい心を持ったアイツの長所、
……でもあり、短所でもある。
そんな阿部が人前で泣くのは『織部翡翠』として『浅緋紅葉』の前に立つ時だけ。
この仕事をしている時だけ、アイツは他人に素の表情を見せる。
メンバーやファンの前には強いように見えても、本当の「阿部亮平」は弱くて、脆くて、まるでガラスの様なんだ。
でも、俺は阿部に『みんなの前でも泣いていいんだよ』なんて言わない。
どこまでも優しくて、自分よりも他人を優先してしまうようなアイツのことだ。
きっと"自分のせいで心配をかけたくない"なんて言って、もっと自分を苦しめてしまう。
浅緋紅葉
『阿部亮平』の素顔を知るのは、俺1人で十分なんだ。
アイツが理想とする『阿部亮平』は、誰にも壊させない。アイツのことは俺が守るって決めたんだ。
だから、俺がはけ口になる。
阿部が苦しい時、辛い時、しんどい時、俺がそばに居て助けてやる。そう決めたから。
そう思ったのは、泣きながら俺に本音を吐き出す阿部の姿を見てからだ。
"紅葉、俺、もう辛いよ"
"なんで、なんでなの?なんで俺達がやらなきゃならないの?"
"俺はただ、皆と一緒に居たいだけなのに"
"ただ、普通に居たかっただけなのに…"
その時、何があっても俺がコイツを守るんだって決意した。
だって、俺はもう"手遅れ"なんだから。 俺が、翡翠の思い描く未来を造って見せてやりたいんだ。
浅緋紅葉
……俺は、翡翠とは違ってこの生活から逃れることなんて望んでない。
俺だって前まではもちろん、翡翠のように"普通の生活"を夢見てたよ。
だけど、1度命を奪ってしまった時点で俺らは穢れたんだ。
そんな奴らが、何も気にせず普通に過ごしていいはずがない。
どんどん穢れて血濡れていく俺らと、どんどん売れて有名になっていくメンバー達。
そこには、どう頑張っても越えられない壁があったんだ。
それに、どう足掻こうが俺らはこの運命から逃れることはできない。
どうやってもまだ綺麗なメンバーとの境界線は越えられないって、俺は気づいたんだ。
だからもう、俺らが皆と同じように過ごすことは出来ない。
でも、俺が諦めてしまった夢を、翡翠はまだ思い描いていた。
泣きながらぽつりぽつりと本音を零す翡翠を見て、胸がぎゅうっと締め付けられるのを感じた。
……俺が翡翠の夢を叶えることは、出来ないのか?と考えた。
だけどそれは、今のまだ弱い俺には到底無理な話だったんだ。
ごめん、ごめんね。ごめんなさい、翡翠。
今はまだ、いや、もう少しだけ。お前の気持ちに、涙に、気づかないフリをさせてくれないかな。
浅緋紅葉
コメント
6件
やばい、、何回も見返してしまう、、! これで3度目です笑
うわぁ!この物語も最高です!!!! 続き待ってます( *´꒳`*)