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りうら視点
りうら
初兎
ほら、目を開けて。怖がらないでいい。もう痛くもないし、苦しくもないよ。だって、君の肺、もう海水で満たされてる。声も、言葉も、いらない。 ——今、僕の中で、君の心が溶けてる。君の鼓動が、僕の胸の奥で小さく鳴ってるの、わかる? 人間はすぐに死ぬって、誰かが言ってた。 でもね、それは“陸の上のルール”であって、“海の中”ではちがう。 この国では、心を捧げた人間は「魂」として残り続けるんだ。 ほら、あそこ見て。珊瑚の間に小さく光ってる粒、あれ、全部、愛を誓って沈んできた“元・人間”たち。 みんな“本物の恋”を知って、海の一部になった。 ——君も、そう。 僕とひとつになった君の魂は、いま、僕の体の奥で優しく揺れてる。 さっきまで泣いてたのに……今は、微笑んでるんだね。
りうら
君を“人魚姫”の物語みたいに陸へ返すなんて、できなかった。 泡になって消える? 冗談じゃない。 君を奪うために、どれだけの呪いを食べてきたと思ってるの。 どれだけの夜を、ひとりで泳いできたと思ってるの。 この身体も、声も、全部、君のために壊していいと思った。 だけど、君が手を取ってくれた。——それで、全部報われた。
りうら
初兎
……あ、そろそろ他の人魚たちが集まってくる。 君を見て、少し驚くだろうな。 「王子を沈めた」って、僕が“禁忌”を破ったって、騒ぐかもしれない。 でも、大丈夫。君は僕が守る。誰にも触らせない。 君の魂は僕の中、 身体はこの珊瑚の祭壇に。 ねぇ、これって“結婚式”みたいじゃない? 証人はいらない。 神様もいらない。 この深い深い海の底で、 僕たち二人だけで、永遠を始めよう。
りうら
初兎
そう聞こえた気がした
コメント
4件
続きあったんかい!! 狂ってていいねぇ…
狂ってるねぇ......w