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雪が降り積もる、12月25日。

世間はクリスマスというシーズンで浮かれきっており、街もすっかりクリスマス柄に染まっていた。

それは俺も例外ではない。

心が弾みすぎて、思わずにやけてしまいそうになるのを何とか抑えて、平常心を装う。

街にそびえ立つ立派なクリスマスツリーにて、俺は彼奴を待っていた。

吐く息が白く、白息と化す。

白息を手に馴染ませて、その温度を逃がさないように両手で擦る。

気温は10度を下回っており、いよいよ本格的な冬場になってきた頃だろう。

寒さから身震いをしてしまう。

口元をマフラーに埋めさせるものの、寒いのは変わりない。

彼奴が来るのが遅いと感じて近くに設立されてある時計を見てみると、時刻は午後6時を回っていた。

待ち合わせの時間を過ぎている。

彼奴の事だから、どうせ準備に時間がかかってしまっているのだろう。

全く。

数分ぐらいなら相手の遅れは俺は気にしないし、もう少し待ってやるかと気長に俺は彼奴を待つ。

クリスマスツリーの下の木陰に設置されてあるベンチに腰をかけて、ふっと少しため息をつく。

辺りを見渡してみると、凡百ところに2人組のカップルの姿が。

カップル達は寄り添いながらイルミネーションを見たり、店に出入りしたりしている。

そんな幸せそうなカップルの姿を見てしまうと、彼奴に対して怒りが湧いてきた。

俺はちゃんと彼奴に前の日から予定を伝えていた訳だし、準備に時間がかかってしまっているにしろ、それは前もって準備をしていたらよかっただけの話だ。

速く彼奴と会いたいのに……。

彼奴はいったい何をしているんだ。

イライラしながら時計を見てみると、10分を回っていた。

余計にイライラする気持ちを抑えて、彼奴を待つ。

そのまま、20分。

30分。

時計の針は7時をすぎており、とうとう俺は限界を迎えた。

その場から立ち上がり、怒りから思いっきり地団駄を踏む。

周りにいる数人の奴らは、唐突に地団駄を踏んで怒りを露わにする俺を少し奇っ怪の目で見ていたが、そんなの今はどうでもいい。

待ち合わせに1時間も遅れてくるだなんて、有り得ない。

本当に彼奴は何をしているんだ。

いくら何でも準備に時間がかかりすぎではないか。

というか、準備でここまで時間がかかるのはおかしすぎる。

準備に1時間以上もかかるだなんて、女子よりも酷い。

まさか、彼奴は約束を忘れているのだろうか?

怒りでいっぱいな心に、ふと、1つの疑惑が思い浮かんだ。

確かに、彼奴は直前まで話していた事を忘れてしまう程に記憶力が乏しい。

約束をしたのも昨日だ。

彼奴が覚えているわけが無い。

期待して損をした。

勝手に、所詮妄想の彼奴とのクリスマスの思い出に胸を膨らませて、期待して。

そんな妄想が実現する訳がないのに。

馬鹿みたいだ。

怒りよりも、悲愴心が俺の心を支配する。

もう彼奴の事なんて知らない。

大嫌いだ。

家に帰ろうととぼとぼと歩く。

その時。

後ろから聞き慣れた声が。

名を呼ばれて、後ろを振り向く。

後ろには、息を切らしながら白息を吐く彼奴の姿が。

少し心に期待が過ぎるものの、今更何を。

彼奴はまだ呼吸もままならない状態で、言い訳もせずに必死に謝っている。

謝られて許せる問題なわけが無い。

俺の心情を悟ったのか、彼奴は頬を人差し指でかきながら、目線を横に泳がせる。

瞬きをすると視線は元に戻り、また、名を呼ばれる。

腕に沢山かけている紙袋を漁りながら、彼奴は口ごもる。

と、その時。

俺の目の前に見事な花束が。

彼奴は苦笑いをしながら、花束を俺に差し出した。

それは、見事な100本もの赤バラだった。

この時期、人気すぎてどこに行っても売り切れで、中々買えなかった。

でも、どうしても君にだけはあげたくって。

なんて。

馬鹿なのはお前の方だ。

ぎゅっと彼奴に抱きついて、その手を離さない。

一方彼奴は、先程の言い分が言い訳のように感じてしまったのか、また謝る。

そんな彼奴に、

次はないからな。

なんて。

抱きつきながら言っても、説得力なんてものはないだろう。

とうの彼奴はクスッと笑って優しく俺の手を握る。

今日は楽しいクリスマスを、恋人と過ごしてやろうと思った。

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