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優成

雫玖ッ...!

優成

やめろ、行くな...!

雫玖

ッ...ごめんね

雫玖

私......

暗い闇に飲み込まれそうな 私の手を

彼は掴んで、泣いていた

優成

なんでだよ!

優成

どう、して...!

その涙を拭いたいのに拭えない

もう身体に力が入らない

優成

雫玖――!!!

雫玖

っ...!

悪い夢を見ていた

怖いくらいにリアルで 痛いくらいに叫びたくなるような

雫玖

あと...2週間、か

気が付いたら寝ていて

ふと目が覚める

そんな事の繰り返し

優成

...雫玖、起きてる?

雫玖

っ...

雫玖

ゆう、せい...

優成

ちょ、おい...

優成

何泣いてんだよ

雫玖

ごめん、違うの

雫玖

ちょっと夢を見てただけ

優成

夢?

雫玖

...怖いくらいにリアルだった

雫玖

私が...

優成

いい

雫玖

え?

優成

言わなくて、いい

優成

泣くほど怖かったんだろ

優成

話して思い出す必要なんて無い

雫玖

...っ

雫玖

そっか、そうだよね...

雫玖

夢...だもんね

優成

うん

夢だと言ってもいいのだろうか

まるで底無しの沼のように

暗い闇の中へ 落ちていく私の手を

離すまいと握っていた彼の顔を

その頬を伝う 拭いたくても拭えない彼の涙を

だからだろうか

雫玖

ね、優成

優成

ん?

雫玖

盆踊りの輪の中には

雫玖

亡くなった人もまざってる

雫玖

...っていう話、知ってる?

優成

...急に何言い出すんだよ

雫玖

なんでだろ...

優成

っ...

優成

俺は...それ、知らなかった

雫玖

そっか

彼が困る事を承知で こんな話をした

私は馬鹿だ

雫玖

お祭りまで、あと2週間だよね

優成

ああ

雫玖

だからさ

雫玖

その時に、見違えた私を見て驚いてほしいから

雫玖

一旦、お見舞い来るのストップ

雫玖

......ダメかな

優成

...雫玖が、そうしてほしいなら

優成

いいよ

雫玖

......ありがと

優成

その代わり

雫玖

え?

優成

祭の日、絶対会うからな

優成

雫玖が来なかったら

優成

病院まで行って迎えに行く

雫玖

......

雫玖

...ふふ

優成

なんだよ

雫玖

ううん...

雫玖

ありがとう、優成

優成

......ん

彼の頬が少し紅いのは

窓から差し込む オレンジの光のせいか

雫玖

それじゃあ...2週間後に

優成

...そうだな

どうしようも無い事だと わかっていながら

未だにそれを 受け入れられない自分は

まだまだ子供なのだろう

・ ・ ・

ふと目が覚めると 外はもう暗かった

雫玖

...あと、1週間

ゆっくりと身体を起こし

親に持ってきてもらった 紺色の浴衣を手に取る

雫玖

行けると、いいな...

徐にそれを胸に抱き そのままベッドに寝転がる

雫玖

無理...かなぁ

彼が来なくなってから 彼の母が来てくれるようになった

昔からの知り合い という事もあって

雫玖

......遠いのに

その距離をわざわざ来てくれる 温かい優しさは

どこか優成と重ねてしまう

雫玖

自分から断ったのに...

雫玖

今さら会いに来て欲しいなんて

ギュッと

浴衣を抱く腕に力を込めた

いつか

この想いは 伝えられるのだろうか

雫玖

...好きです

雫玖

なんちゃって......

雫玖

優成がいないのに言ったって

雫玖

意味ないな...

目を伏せる

せめて

夏祭りの日までは 生きていたいと

切に願う

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210

コメント

2

ユーザー

私も切に願います…!! どうか2人が夏祭りにいけますように😭 そして、まだ付き合っていないのがとても不思議です笑 誰がどう見てもお似合いのカップルなのに…✨

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