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もうかなりの人が 賑やかな音の方に向かっている

優成

雫玖...

やはり、迎えに行くべきだったか

焦りから嫌な汗が背中を伝う

優成

......

優成

クソ......

優成

なんで俺はいつもこうなんだよ...

雫玖を前にした時も

自分の気持ちすら言葉に出来ない

優成

......やっぱ、迎えに...

雫玖

...優成

優成

ッ!?

雫玖

遅くなったね、ごめん

優成

あ、待ってないから...大丈夫

雫玖

そう...ありがとう

2週間ぶりに会った彼女は

目を合わせられない程に 綺麗だった

優成

それじゃあ...行こっか

雫玖

うん

触れたら 消えてしまうのではないかとさえ

思ってしまうのは

なぜなのだろう

約束をしたあの時のように

賑やかな音と 鮮やかな色が俺達を包む

優成

雫玖

優成

花火まで...あと10分だって

雫玖

10分...

雫玖

そしたら、りんご飴買ってからでもいい?

優成

ああ、全然大丈夫だよ

雫玖

嬉しい...

身体に悪いかも、とか

そういう事は考えないようにした

雫玖が楽しそうなら それでいいのだと

雫玖

優成?

優成

...あ、ごめん

今はただ

雫玖の楽しそうな顔を 見ていたくて

洋太

あ、優成!

優成

ん?

優成

洋太...

洋太

うわ、お前彼女と来てんの?

雫玖

っ!?

優成

は!?

洋太

いいな〜羨まし!

雫玖

...

優成

おい、ちょっと黙れ

洋太

はいはい

洋太

お幸せに〜

優成

あの野郎...

雫玖

...ビックリした......

雫玖

ごめんね、なんか...

優成

いや、今のは1000%アイツが悪い

優成

学校で会ったら一言言っとく

雫玖

ふふ...優成

雫玖

今日はホントにありがとう

優成

まだ花火も見てないし

優成

それ言うの早いからな

雫玖

あ...そうだね

優成

ん、行こう

ゆっくり 彼女の歩幅に合わせて

あの時、一緒に花火を見た場所へ

・ ・ ・

花火が打ち上がるのを待って 彼女の隣に並ぶ

少し潤んだ瞳 紅色になった頬

彼女のその横顔から 目が離せなくて

雫玖

優成...?

優成

あっ...

優成

な、なんでも...ない

声が上ずってしまったのは

俺のせいじゃない

優成

......あ、待って雫玖

雫玖

ん?

優成

電話...

雫玖

出なよ

優成

や、でも...

雫玖

いいって

雫玖

相手が可哀想だよ

優成

...わかった

スマホの画面を見ると

不在着信が何件もあった

優成

(なんでこんなに...?)

不思議に思いながらも 通話をタップした

優成

もしもし?

優成母

なんで電話に出ないのよ!

優成

あ...悪い

優成母

はぁ...

優成母

あのね、優成

優成

なに

優成母

落ち着いて、聞いて

母親の声が 震えているように聞こえるのは

周りの声のせいか、それとも

優成

どうしたんだよ

優成母

実は...

母親がそう言いかけた時

浴衣の袖を 微かに引っ張られた

優成

悪い、ちょっと待ってて

優成母

え?

優成母

優成?

優成母

優成!?

袖を引っ張られて 振り向けば

残り数センチの距離に

雫玖の瞳があった

優成

ッ...しず、く?

雫玖

あのね、優成...

ふと、大きな音がして

空へ登った蕾が 鮮やかな華を咲かせた

その鮮やかな光は

俺も彼女も包み込んで

キラキラと煌めく

雫玖

好きだよ

その一言で

俺達の周りから 音が遠のいたように感じた

優成

っ、雫玖...

気が付けば、彼女は泣いていた

それがどんな意味なのかは 俺には分からない

ただ

頬に伝うその雫の中を

様々な色が満たす度に

俺はどうしようもない程 彼女を抱きしめたくなった

優成

俺...

雫玖

...電話

優成

え?

雫玖

ずっと繋がってるよ

雫玖

出なくて、いいの?

優成

あっ...

ずっと通話中だった事に気が付き

慌てて耳に当てる

しかしそれと同時に

告白を返せなかった事への 自己嫌悪が

サッと胸に影をさした

優成母

優成!

優成

ごめん、何?

優成母

お願いだから、ちゃんと聞いて...?

さっきよりも震えた声

優成

何かあった?

優成母

実は......

優成母

雫玖ちゃんが......

優成

雫玖がどうかしたのかよ

隣にいる彼女をチラリと見て 俺は明らかな疑問を声に滲ませた

優成母

――亡くなったのよ

優成

......は?

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コメント

2

ユーザー

とても…辛い… 折角告白できたというのに、これからだという時なのに、しずくちゃんがもう取り返しのつかないことになってしまっていることがどうしようもなく辛いです…

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