見上げれば高い天井
右見れば大きなドア
左見ればステンドグラス
『いつもの光景だ』
四人のお姫様
執事
坊っちゃん、お目覚めでございますか?
朝の光で起きて
執事が部屋に入ってきて
夏樹
うるさい
と追い返しては
読んでる途中の本を読む
メイド
お食事の用意が出来ました
夏樹
父さんは?
メイド
パリに出張でございます
メイド
六週間ほどで...
メイドは喋り続けるけど
どうでも良い
この
終わりの見えない本を読む
閉じては開き
閉じては開き
俺の
つまらない人生みたいに
執事
本日の予定を申し上げます
執事
10時に都内の高層ビルにて食事
執事
その後オーストラリアホテルチェーンの親子とパーティーでございます
忘れていた
どうして俺がこんな暮らしをしているか
俺の父さんは
『栗原コンツェルン』
という会社の社長だ
母さんは
有名ブランドのデザイナー
そのせいで
こんな
無駄に広い家に住んでいる
つまり俺は
未来の決まっているつまらない人生をおくるのだ
執事
お車の用意が出来ました
夏樹
うん
俺はなぜ
こんなところで食事をしないといけないのだろう
昔から知っている
もう飽きたシェフの味
変なしっとりとした音楽
暑苦しいスーツ
執事
お食事の方はもうよろしいんですか?
夏樹
うん
でも何を言ったってどうにもならない
決められた人生だから
執事
相手方はもうすぐお出でになられますよ
夏樹
へぇ
執事
ご家族3人でいらっしゃると思われます
執事
今回は、坊っちゃんと同じお年をした娘様も来られると言っておりました
夏樹
何で俺だけなの
執事
旦那様も奥様もお仕事だそうで、『相手の方と仲良くできるように』と申しておりました
夏樹
パーティーじゃないんだ
執事
正確にはそうでございますね
めんどくさい
礼儀は一応覚えさせられたけど
やっぱりしっとりとした空間はごめんだ
一体この世界から
俺は抜け出すことは出来るのだろうか
秋本順
待たせてすいませんでした
来た
夏樹
いえ、お気にめさらず
秋本セーナ
本日はご招待心より感謝しております
夏樹
お父様とお母様は仕事のため来られなく申し上げございません
秋本順
しょうがないですよ、今日は宜しくお願いします
秋本セーナ
それと、この子が娘のマリーです
秋本セーナ
日本語があまり出来ないのですが、お願いしますね
マリー
コ、ン、ニ、チ、ワ!
マリー
ア、タ、シ、の
マリー
ナ、マ、エ、ワ、
マリー
marieデ、ス!
そして
もう1つ聞きたい
『この俺が、人を好きになる瞬間はあるのだろうか』
続く