カップル撲滅委員会

　面倒なやつらに目を付けられてしまった。

　自慢じゃないが、俺は三股をしている。

　その一つでも見つかれば、強制的に破局させられるどころか、停学の可能性もある。

　これからは慎重に動かざるを得ないだろう。

　しかし、腑に落ちない点が一つある。

　これに関しては、絶対に嘘だと言い切れる。

　だって、なあ？

野外でそんな危険な真似、誰がするか

　そう、俺はTPOを弁えている。

　カップル撲滅委員会が怖いわけではない。

　単純に三股がバレるのが、怖い。

　だからデートは、基本的に遠出をしたり個室を利用するし、そういう行為も勿論野外では行わない。

　可能性は薄い気がする。

　本人にメリットがないし。

でも、他に思い当たる節もないしなあ……

　罰則は嫌だし、バカ二人の野望の肥やしになるのは、もっと嫌だ。

それに三股がバレて、全校の9割5分（女子）を敵に回すのは、マジでヤバい

　特にかわいい女子に嫌われるのは、避けたい。いやマジで。

打てる手は打っておくべきだよな。

　と、その時だった。

――きゃあああぁぁぁっ！

　突如、女子のものと思われる悲鳴が聞こえてきた。

　しかも、かなり近い。

何だ何だ？

　心配半分、野次馬根性半分で声がした方へ向かう。

すると、

　女子が倒れていた。

　背は低く、線が細い印象。

　シルエットはモロ好みだ。

　いや、そんな事言ってる場合じゃないな。

　確かに今日は日差しが強いが、そんな事で悲鳴を上げるだろうか？

　この子は吸血鬼か何かなのだろうか？　ヤバい、マジ萌える。

　などとくだらない事を考えていると、女子の手が俺の腕を掴んできた。

　ドキッ☆

　いい声とキメ顔で応える。

　『助けた恩を売って、あわよくば』と考える俺は、どうしようもなく節操がない。

　どこかで、聞いたような口調だ。

　そう思った瞬間、

　女装した万里野が襲いかかってきた。

　その唇は俺の唇を狙い、

　間一髪回避。

　何だ！？

　一体何が起こっている！？

　舌打ちが聞こえた方を向くと、

　カメラを構えた椎名が立っていた。

お前が証拠を持って来いと言うからだ

　知ってたけど！

知ってたけど、こいつら真性のクズだ！

　ていうか、殴っていいよな？

　何なのこいつ！？

　何でためらいもなく俺の唇を奪いに来れるの！？

　手段を選ばないにも程があるわ。

　ていうか離れろ！

　この光景を他人に見られるだけでも、社会的に死ねる。

　抵抗をやめる＝万里野とキスだからな！？

　お前にだけは見られたくない。

　決して。