◯◯
(やばいやばい、身体中痛くなってきた…!!)
生理2日目。朝も飲んだ痛み止めを飲むため食欲がないが、無理に胃に詰めこんだ。
薬が効くまで突っ伏していると。
鶴見
◯◯さん、具合悪いのかい。
◯◯
…部長!?
あ、なんでそれを…。
◯◯
すみません。セクハラになりうるので大きな声では言えません…。
鶴見
なるほど。血の気のない顔、察しがつく。
◯◯
申し訳、ありません。自分の体調管理が行き届いてなくて。
鶴見
“それ”は自分の意思でどうこうできるのではないのだろ。男の私には想像もつかないことだし、共有することもできないが、少しでも理解はしたい。
◯◯
男性への理解が広まらない中でのその言葉はとても嬉しいです。
鶴見
そういうものにも休暇が取れるよう上に掛け合おう。
◯◯
ありがとうございます。そうなればきっと、女子社員一同とても喜ぶと思います。
私、お先に戻りますね。
鶴見
その状態で午後も勤まるのかい。
◯◯
もうすぐ薬が効いてくるはずですから…。
鶴見
しっかり!!
◯◯
あ…。
抱き止められているのは分かったが、それ以上はなにも分からなかった。
◯◯
(やばいやばい!!遅刻す、る…!!)
◯◯
(手探りででも準備しなきゃ!!)
あちこちに身体をぶつけながら進む。目は一向に開かない。
そのうち頭がくらくらしてきて…。
◯◯
(夢…??)
◯◯
私どうやって…。
ボーッとしていると、看護士さんが様子を見にきた。ここは産業医の病院で部長が抱えて運んできたのだと教えてくれた。
◯◯
(か、抱えてって…!!なにしてんだ私は!!たしか倒れたときにも抱き止めてくれたような…。)
かすかに香った部長の匂いを思い出して、卒倒してしまいそうになる。
そこへ先生がやってきて、部長からの伝言とタクシー代と書かれた封筒を渡された。
◯◯
(明日休みな上にこんなものまで…!!)
タクシー代なんて使えるわけなく、いつも通り電車で帰路に着いた。
鶴見
おはよう◯◯さん。具合はどうかね。
◯◯
おはようございます鶴見部長。
ずいぶん良くなりました。その節は本当にありがとうございました。あと、まことに申し訳ないないんですが、これはお返しします…。歩けるようになるまで、回復しましたので…。
鶴見
かえって気を遣わせてしまったかな。
◯◯
いえとんでもないです!!底辺みたいな私を気にかけてくれて、それで充分です…!!
鶴見
君は底辺などではない。誇らしい私の部下だよ。
その笑顔の裏に何をはらんでいるのか。このお方の意図は全く読めない。
◯◯
あっ、お時間取ってしまい申し訳ありません。私はこれで…!!
鶴見
無理せず頑張って。
◯◯
はい。
この数日後に内部抗争が勃発するなんて考えるよしもなく、私は通常業務に戻った。