皇女の誕生日会っていうのは、実は当日だけでは終わらない
帝国を上げての一大イベントだし、遠方からのゲストが集ういい機会だもん
一週間に渡って昼間はお茶会、夜は夜会が延々と繰り広げられる
つまり、その間は普段よりもたくさんの貴族が帝都に集まり、そしてとどまる
その結果、初兎様の仰っていたとおり、僕達の結婚話はまたたく間に貴族たちに広まりまくっていた
モブ
モブ
モブ
そう言ってくるのが鬱陶しくて自室に戻ってきた
茶会でも、夜会でも、僕を見るたびにみんなが同じ話題を振ってくる
どいつもこいつも媚売りまくり、好奇心にまみれた嫌〜〜な表情だ
いちいち対処するだけ時間がめちゃくちゃ勿体ないので、適当にあしらってお茶を濁す
だけど、貴族に噂が広まっているっていうことはつまり、帝国全土に話が広まるっていうことを表している
これは由々しき事態だ
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実際のところ、初兎様とはまだ正式に婚約を結んだわけじゃないのだから、彼らの行いは単なるフライングだ
無駄になる可能性大なわけだけど、勝手にしたことだから文句は言えまい
っていうか僕が言わせないし
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初兎様の名誉のために、早急に動かなきゃだ
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ないふ
ふたりは文官じゃなくて護衛騎士と侍女だけれど、とっても優秀だし、心から信頼できる人材だ
彼らは他の人間にスムーズに仕事をおろし、僕が望む形で実現し、適切に報告をあげてくれる
直接指示を出すより早くて確実なので、二人に采配を振るってもらっているのだ
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いふくんは言いながら、顔をクシャクシャにしてうなずいている
僕はムッと唇を尖らせた
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正直言って、未だに信じられない
だけど、僕の机の上には今、エレン様直筆の手紙が広げられている
そこには昨夜の会話は夢ではないこと、彼が僕との結婚を望んでいること、今夜は登城できずに申し訳なく思っていること、改めてゆっくりと話がしたい旨が綴られていた
本当ならば『なにかの間違いだ』って一掃したいところ――――けれど、これは間違いなく初兎様からの手紙だ
美しすぎる筆跡は、紛れもなく彼のものだし(過去に彼が作成した書類全てに目を通したのだから間違いない。っていうか、こんな流麗かつダイナミックな文字、初兎様以外に書けないもの)、便箋から大好きな初兎様の香りがする
それに、初兎様が大好きなユリの花束まで添えてくださったのだから、これは絶対に初兎様からの贈りものだ
たった2日の間に、我が国の国宝が増えてしまった
髪飾りにドレス、初兎様直筆のお手紙にユリの花束だなんて、最高がすぎる
嬉しい――――けれど、その分だけ複雑な気分だ
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ワッと机に突っ伏した僕の背後から「それは違います!」という声が聞こえてきた
🩷🎲🐶
🩷🎲🐶
🩷🎲🐶
🩷🎲🐶
どこか興奮したような面持ちで主張するのはないちゃんだ
僕に負けず劣らずの熱弁っぷり
まるで鏡を見ているような気分だ
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僕は小声で「ありがとう」と答えておいた
ものごとっていうのは、価値基準をなにに設定するかによって180度見方が変わる
僕の基準はいつだって最高で最強の初兎様だ
彼を基準に設定したら、皇女なんてその辺にゴロゴロ転がっているただの人間でしかない
対して、ないちゃんにとっての価値基準は常に僕だ
僕を最上位に置いているから、初兎様のことをついつい下に見てしまうらしい
そんな価値は僕にはない――――と言いたいところだけれど、本当はないちゃんのほうが正しいのかもしれない
皇女って皇帝の次に偉いし、謝っちゃいけない存在だし、僕のひと言で簡単に人は死ぬもの
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ないちゃんはいつも、僕に大事なことを思い出させてくれる
皇女ほとけも、初兎様を愛し、称え、推しまくっているほとけも、どちらも同じ僕だ
だけど、僕は次期皇帝なんだって――――崇めるだけじゃなく、崇められる側の人間なんだって
だから『僕じゃ初兎様に釣り合わない』っていうこの気持ちは、身内以外の人間には絶対吐露しちゃダメなんだ、って気付かされる
推し活をしていることだってそう
一部の人間のみぞ知るトップシークレットだもん
知られたら大抵の人間にドン引きされるだろうし、皇族としての威厳を損なう
僕は少しだけ気持ちを引き締めた
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いふくんはいつも、僕がなにを望んでいるかを先読みし、それを実現してくれる
公務でも、私生活においても欠かせない存在だ
多忙な中、僕が推し活に全力を注げるのも、彼の働きによる部分がとても大きい
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いふくんがくれた資料に目をとおしつつ、僕は密かに眉を上げる
たった一日で、欲しい情報をここまで準備してくれたいふくんはすごい
僕は素直に感心してしまった
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目的も詳細も話さなくても、僕が言いたいことをいふくんはすぐに理解してくれる
頼もしすぎて自然と笑みが漏れた
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パンパンと頬を叩いて前を向く
それから僕は私室を――推し部屋を出て、皇女として動きはじめるのだった
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