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父
僕を見るなり、お父様はそんなことを口にした
どこか怪訝な、呆れたような表情だ
『お前は、初兎のことになると周りが見えなくなる』とでも言いたいのだろう
僕が初兎様に熱狂しているのは昨日今日の話じゃないのに、なんだかムッとしてしまう
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僕がお父様との会話を勝手に打ち切ったとき、お父様はまだなにかを伝えようとしていた
あれは僕に、初兎様がこの結婚を望んでいることを伝えたかったのだろう
聞いたところで信じられなかっただろうし、結果はなにも変わらなかっただろうけど
父
父
父
父
父
お父様はため息をつきつつ、僕のことをじっと見つめる
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きっと辛い とても辛い
いや――――毎日初兎様の顔を一番に見れて、毎日初兎様の声が聞けて、一緒に食事なんかもとれたりして、ベールに包まれたプライベートを覗き見できる――――それ自体はものすごく幸せに違いない
だけど、夫婦という関係は…合わない
どう考えても受け入れられない 僕はあくまで初兎様のファンだ
彼を支え、崇め讃えるのが僕の役目だ
ファンの分際で推しの妻になろうとするなんておこがましい
っていうかあっちゃいけないことだ
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大小50を超える属国から成り立つ広大な帝国を平和に維持するのは、並大抵のことではない
そのうえ僕は女だから――――どうしたってお父様よりも舐められてしまう
代替わりをしたその瞬間、帝国からの独立を目指して兵を挙げる国がでてくる可能性は高いし、他国から攻め入られるおそれもある
そのせいで民の生活を脅かしてしまうなんて、絶対にあってはならないことだ
現在の国の状態を維持するために僕に必要なのは、強いカリスマ性と実績だ
この国に属していることには大きなメリットがあると属国に思わせないといけないし、手を出したら痛い目を見ると示し続けなければならない
それはとても長く、過酷な道だ それでも、皇女に生まれたんだもん
僕には自分の責務を全うする覚悟がある
それでも、一人で全てがまかなえるわけじゃない
というより、一人で抱え込んで失敗するより、足りない部分を補ってくれる人に背中を任せるほうが国にとって望ましい
だからこそ、優秀な夫の存在は必要不可欠なんだけれど
父
お父様が言う 僕は思わず瞳を見開いた
父
父
父
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さすがに今、話を遮るのははばかられる
だけど、ツッコミどころが満載すぎて、心のなかでついつい反論してしまう
お父様はそんな僕を知ってか知らずか、ほんの僅かに眉をひそめた
父
父
父
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女、子供の力っていうのはどうしたって男性よりも弱い
僕の隣に並び立つ人には、僕に足りない部分を補って貰う必要がある――――だからこそ、最強魔術師である初兎様が適任なのは間違いない
間違いないのだけど
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父
父
父
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父
父
父
お父様は言いながら、僕に向かって身をかがめる
それから、ぶっきらぼうな手付きで僕の頭をそっと撫でた
父
父
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そんな未来、想像しちゃいけない――――と思っている時点で、僕はお父様の質問に対して『否』と答えているのだろう
つまり、初兎様と結婚をしたら、わたしは絶対幸せに違いない
だけど、たとえ僕が幸せでも、初兎様が幸せじゃなかったら意味がないんだもの
推しの幸せは僕の幸せ
推しの喜びは僕の喜び
自分の幸せより、初兎様の幸せを優先したいって思うんだもん
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呟けば、お父様は瞳を輝かせながら破顔する
父
父
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父
お父様が首を傾げる
僕はゆっくりと顔を上げた
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父
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気合に満ちた僕とは反対に、お父様が悲しげな表情を浮かべている
だけど僕は頑固だから やるって決めたら絶対に退かないから
父
父
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お父様の妥協を引き出すやいなや、僕はすぐに動きはじめた