テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『あんたんちで寝てたとか、嘘でしょ。』
🍫
目が覚めて、視界に飛び込んできたのは見知らぬ天井と、心拍数爆上がりの現実だった。
🍫
ソファー。毛布。ぬるい紅茶の匂い。 しかもテーブルの上には頭痛薬と水とメモ。
『二日酔い用。ご自由にどうぞ』 ーーなおきり
🍫
思い出した。 合コンに紛れてきたあいつ。 店を出たあたりから、記憶がちょいちょい途切れてて……
でも、私が……え、甘えた??ひとんちで寝た??ってこと???
バッと立ち上がって、部屋の中を見渡す。あいつの……部屋、これ。 いやいやいや、なんで!?私どうしてここにいるの!?
そのとき。
🌷
ひょこ、と部屋の奥から顔を出したのは、件のスパイ。 寝癖ひとつない髪と、落ち着い払った声。マグカップを2つ持っていて、 そのひとつを私のほうに差し出してくる。
🌷
🍫
🌷
🍫
🌷
🍫
頭を抱えてその場で崩れ落ちる。 うそでしょ!?!?!?!?!?
私、そんな爆弾発言した!?!? よしによって……よりによってあいつに!?!?
🍫
🌷
🍫
言った本人が覚えてない方がヤバいし!なんか損してる気分だし! って言うなら、あんたはなんで覚えてんのよ!!
🍫
🌷
🍫
🌷
やっぱりこの人、ちょっとムカつく。 でも、私が無防備でも何もしてこなかったこと。 頭痛薬とメモと、妙にぬるめな紅茶。 ……やさしいなって、ちょっと思っちゃったこと、なんか悔しい
🍫
🌷
🍫
頬が熱いのは、たぶんまだ酔ってるせい。
……きっと、そう。絶対そう。
『敵地で再会、まさかの任務かぶり!?』
深夜、標的のアジトに忍び込むのは久しぶり立った。 照明の切れた廊下。足音も立てず、息をひそめて進む。
ーーターゲットの資料は、三階奥の部屋に保管されている。
🌷
ドアのロックを解除して、音を立てずに部屋に侵入 ーーしようとした、その瞬間
中から、すっと黒い影が現れた。 こちらに背を向けて、なにかを探ってる。 小柄なその後ろ姿に、妙な既視感を覚える。
……まさか。 僕はわざと、声をひそめずに言った。
🌷
🍫
その背中がビクッと跳ねるように振り返った。
🍫
その顔は、やっぱりえとさんだった。 サングラスに黒ずくめの装備。明らかに任務モード
僕は少し肩の力を抜いて、微笑む。
🌷
🍫
えとさんは言葉に詰まる。わかりやすいなぁ
🌷
からかいながら一歩近づくと、えとさんはバッと一歩引いた。
🍫
🍫
🌷
🌷
僕は背中からサイレンサー付きの小型銃を抜きつつ、冗談めかして笑う。
🌷
🍫
🌷
🍫
えとさんは顔を赤くしながらも、ドアを閉める前に僕をにらんだ。 けどその目は、ほんの少し、焦ってなくて
ーーどこか、楽しそうだった。
まったく。 敵同士で、こんなに楽しくなってどうするんだか。
『任務中、火花バチバチ。恋より先に、勝ちたいから。』
センサーに反応した敵が、廊下をかけてくる。 すぐそこの階段を下りった先に非常口がある。 そこまでのルートはーーあの子と、並走するしかない。
🍫
🌷
えとさんはサッと先に走り出す。 くそ、脚が速いな……
🌷
🍫
僕は背中越しに笑った。 ああ、これさもう競争だ。任務でも、なんでもなくなってきている。
非常口まであと10メートル。 先にたどり着いた方が勝ち、みたいな空気になってるの、たぶんお互い分かってる。
🌷
🍫
その言葉に、心のどこかがくすぐったくなる。 可愛いな、そういうとこ。
🌷
廊下の角を曲がったとき、先回りしていた敵が飛び出してきた。 僕が反射的に腕を伸ばすより早く、えとさんの足が蹴り飛ばす
🍫
🌷
🍫
🌷
🍫
目は合わない。でも耳が、顔が、わかりやすく赤くなってる。 そのくせ、走る速度は落とさない。前だけ見てるその後ろ姿に、思わず僕は笑ってしまった。
🌷
🍫
ーー任務より。 君より、早く辿り着くことが、今は一番の勝負だ。
僕らは同じ目標に向かって、全力で火花を散らし続けた。
『ターゲットと密室で、呼吸が絡まる』
気づけば、天井から何かが落ちてきて。 次の瞬間、僕とえとさんは、重なるようにして落とし穴に吸い込まれていた。
🍫
🌷
落ちた先は、幅も奥行きも1メートルちょっとの小さな箱。 大人ふたりが入るには狭すぎる。いや、密着しすぎて……動けない。
えとさんの足が、僕の膝に絡まって。 僕の腕は、彼女の背中にまわってしまっている
🍫
🌷
🍫
🌷
🍫
顔が、ほんの数センチ。 息をすれば、髪が揺れて、その香りが鼻先をかすめる。 心臓の鼓動が、やたらとうるさい。
🌷
🍫
🌷
ぐい、と体を動かそうとした彼女の太ももが、僕のにあたってーー お互い、一瞬、静止した。
🌷
🍫
彼女の言葉はいつもどおりツンツンしてるけど、 その声の震えと、指先の微妙な動きが、全然いつもどおりじゃない
🌷
🍫
🌷
🍫
完全に怒ってるのか、照れてるのか、判断つかない。 でもこの狭さじゃ、逃げられないしーー
🌷
🍫
そう言ってるくせに、声は震えてて。 視線をそらす仕草も、息が詰まるほど可愛かった。
ガコンッ!!
🍫
バチっと照明がつき、扉が開く。 差し込む光に、目を細めたその先に、見えたのはーー
🎸
🍪
互いの仲間が、同時に現れた。 しかも、ふたりとも目を見開いて絶句している。
僕とえとさんは、というとーー 抱き合うような体勢のまま、まだ箱の中。
🌷
🍫
慌てて立ち上がろうとしたけど、手足がうまく解けなくて、 さらに絡まって転びかける。
🍫
🌷
🍪
🎸
場が、しん、と静まり返る。
🍪
「違います!!!!」
ハモった。 しかも全力で。
でも、見た目がもう完全にーー 任務中に、熱くなっちゃってるふたり、だった。
🎸
🍪
🍫
🌷
🍫
えとさんは顔を真っ赤にして、つっかかるように脱出。 仲間に引きずられるように去っていくその背中はーー
たぶん、誰よりも恥ずかしがってた。
僕はというと。
🌷
と、小さく笑っておいた。