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『作戦名:恋人ごっこは予想外にスリル』
「……じゃ、こちらのカップルシートへどうぞ」
白いクロスがかかったデーブル、ガラス越しの夜景が眩しく光ってる。 その向かいにーー座ってるのが、えとさん
……ピンクのワンピースに、ゆるめの巻き髪。 (……なんか、ふつうに、似合いすぎでしょ)
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すぐ怒るくせに、耳まで真っ赤になってるのが見える
この任務、なかなか悪くないかもしれない
今回の作戦は、 お互いの組織が一時的に手を組んだ特別任務。 レストランを拠点としている麻薬カルテル幹部の動向を監視するため、 客として内部に潜入して情報を取るーーという、
いわゆる“恋人カバースパイ”ってやつ
最初はもちろん、反対した。 「は?なんであいつとペア!?」 「まじで最悪なんですけど」
でも上は言った。 「お互いに相手の正体を知っているからこそ、背後を取られる心配がない」 って。…それはまぁ、理屈としては合ってる。
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声が響いた。
隣のデーブルのリアルカップルがびくっとしてる。
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そんなツンツンえとさんをよそに、耳の中のインカムには、上司たちの声 『なおきり、ターゲットが来た。グラスをターゲットに近づけろ』
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グラスを持ち上げて、僕は目線で促す。
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カチン、と小さな音。 グラス越しに、少しだけ目があった。
いつも敵として見てた瞳が、ほんの一瞬だけ、揺れたような気がしてーー
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その時。
『……今すぐキスしろ』
インカムから流れてきた声に、僕とえとさんは、同時にフリーズした。
(……は?)
今、僕たちはレストランのテラス席に座ってる。 ターゲットのカルテル幹部がまさかの“こっちに向かってる”って事でーー 上層部の指示が、これ。
『疑われるな。恋人だと思わせろ。今すぐ』
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えとさんが目をそらした。 ……耳まで真っ赤になってる。
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ばか、なに言っての!?って顔。 けどーー次の瞬間、
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目を閉じた彼女の表情が、あまりに素直で、 少しだけ、息が詰まった。 (これが演技なのか、本当なのかーー)
数秒だけ顔を近づけて、彼女の頬に、そっと口づける。
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えとさんが、小さくつぶやいた。 『任務中だ。集中しろ、なおきり』
でもーー心臓の音は、少しだけ早くなっていた。
その後、作戦は順調に進んでいた。 グラスの盗聴器でターゲットの会話を拾い、 厨房を回収部隊が制圧するタイミングを見計らう。
けど、そこにーー
幹部の女
幹部の女が、テーブルにやってきた。
幹部の女
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えとさんが咄嗟に笑顔で返す。
幹部の女
まさかの質問に、僕はーー
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えとさんがわざとらしく肩をぶつけてくる。 うわ……“彼女ムーブ”完璧すぎる
幹部の女
幹部の女が去ったあと、僕たちはしばらく何も言えなかった。
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けど、彼女の顔はまた赤くなっててーー 僕はこれ以上は、なにも言えなかった。
任務終了後。 外に出ると、すっかり夜も更けていた。
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でも、背を向ける前に、えとさんが一言。
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笑ってるのに、どこか寂しそうだった。 本当の任務は、敵を倒すことじゃなくてーー
……僕のこの気持ちに、気づかないふりをすること、かもしれない。