月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
注意!! ・地雷さんは今すぐUターン! ・🎲様能力者パロとなっております ・青黒、赤桃、白水前提です ・能力者パロ第3話「いなくならないで」のネタがほんのり入っています ・nmmn
月見。
赤くん→火を操る能力 水くん→植物を操る能力 白くん→毒を操る能力 桃さん→重力を操る能力 青さん→一度見たものを完全に覚えられる能力、水を操る能力(温度変化により氷の操作も可能) 黒さん→言霊(言葉で人を操ったり言ったことが現実になったりする)
月見。
桃
黒
いつも通り仕事をこなし、今日も疲れたぁと重い体を引きずるようにして帰ったシェアハウス。
リビングに一人浮かない顔で座っていたあにきから投げられた言葉に、俺は目を丸くした。
桃
黒
それは一大事だ。俺はそう思った。
まろがあにきへの連絡を忘れる訳がない。はたまた大好きなあにきからの連絡にずっと応えないままだなんて、いつもの彼からすればご法度だろう。
不安げな表情を浮かべ、スマホを握りしめたままのあにきに胸が傷む。
おいまろ、何してんだよお前。あにきにこんなに心配かけて。
なんて彼に向けて心の中で言葉を向けても、勿論言葉が帰ってくることなんてなく。
桃
黒
桃
なんとなく察してそう言ってみれば図星だったようで、あにきは視線を逸らした。
黒
桃
あぁ、苦しいな。
まろと連絡が繋がらない。そんな不安に心を揺さぶられながら、子供組には心配をかけないよう嘘を付く。彼のことだから、そんな嘘にすら罪悪感を感じている。そして誰にもその不安を打ち明けられないまま、こうして一人でリビングに居たのか。
あにきの立場を思うと、ぐっと胸が苦しくなった。
桃
黒
その頭に、手を乗せた。
桃
そう言って、下を向く頭を撫でた。せめて、彼みたいに。
顔を上げたあにきは、何処か泣きそうな顔で笑った。
黒
溢れんばかりの彼の優しさに、俺は小さく頷いた。ありがとう、ともう一度頭を撫でれば、あにきは眉を下げて笑った。
俺が夜ご飯を食べ終わっても尚、まろが帰って来ることはなく、連絡すら届かなかった。
その間もずっとスマホを握り締めているあにきに、俺は何が出来ただろうか。
黒
誰も入っていないお風呂場の方を指し、あにきがそう言った。
桃
我ながら何を言ってるんだと思った。成人済みの男が二人、一緒に風呂だとか。
でもそれ以外、思い付かなかったのだ。
少なくとも今は、彼をひとりにしたくなかった。
俺の言葉に目を見張ったあにきは、少ししていや、と笑った。
黒
桃
黒
桃
あにきの言葉に、俺は何も返せなかった。
彼の気遣いを前に、何一つとして彼の為にしてやれることがない。
今一番辛いのはあにきなのに。どうして、俺が気を使ってもらっているんだ。
桃
結局、彼の優しさだけを受け取って俺は何も返せないまま、リビングを後にした。
桃
いつもみんなが入り終わってから最後にお風呂に入っているあにきが、もう入っただなんて嘘に決まっていた。
俺は大丈夫やから
嘘吐き、嘘吐き。
桃
・・・あの笑顔を本物の笑顔に出来る人なんて、お前しかいないんだから。
結局、あにきにかける言葉も、この状況を切り抜ける方法も上手く思い付かないまま、俺はお風呂から出た。
桃
あった?と続けて聞こうとした俺は、リビングに踏み込んだその足を止めた。
変わらずソファに座っていると思っていた彼の姿が、そこに無かった。
途端に早まる心臓。いや、いやいや。考え過ぎだ。流石のあにきだからってそんなこと。
焦る自分自身をなんとか落ち着かせ、俺はあにきの部屋へ向かった。そうだ、部屋に居るんだろう。あにきだってリビングにいつも居る訳じゃないんだから。
いつもより早く歩いて、あにきの部屋へ向かう。ドアノブにかけた自分の手が、なんだか震えている気がした。
桃
扉を開け放って、俺は目を見張った。
玄関には、四人分の靴だけが並んでいる。
桃
一人で飛び出してしまう彼も、彼を一人にしてしまった自分も、馬鹿だ。
赤
桃
赤
真っ直ぐ俺を見つめるその瞳に、俺は我慢しきれず駆け寄った。
夜の街を歩く。
当てなんてない。目的地なんかない。
言うなれば、彼がいるところが俺の目的地だが。
ないこには悪いことをしたな、と思った。
一緒に入らない?なんて、気を使ってくれたのであろう彼の言葉を受け流し、彼が風呂に入っている間に家を出てきてしまった。
まるで騙すような、そんなことを。
ただ、彼がいない静かな夜の空気に。不安が拭えないひとりの時間に、耐えられなかった。
明らかに、彼に何かあったのは明白だ。
彼が連絡も無しにこんな遅くまで帰って来ないのは初めてのことだった。彼がそんなことをするような人じゃないってこと、俺はよく分かってる。
だからこそ、不安は増すばかりだった。
家を出た時、既に日を跨いでいた。
まろ、お腹空いてないかな。
積み重なる不安と同時に考えたのは、そんなことだった。
彼の分のご飯は、ラップで包んでキッチンに置いてある。
どれだけ疲れて帰って来ても、俺のご飯を美味しい美味しいと笑顔で食べてくれるまろ。
そんな彼に、こっちまで元気を貰っていること。まろは知っているのだろうか。
黒
夜を、歩く。歩く。
居場所は分からない。彼に今何が起きているかも分からない。
一直線で彼の元に行くことなんて出来なくて、この声も誰かに掬われることなく夜に溶けて消えていく。
あにき!!!
まろは、いつだって俺を。必ず助けに来てくれたのに。何処にいても見つける、なんて言ってくれたのに。
そんな彼に、俺は何も出来ないのか。
一番大切な人さえ、救えないのか。
黒
こんな真夜中に、話し声?
夜の街に響く、汚い笑い声。
何を考えるでもなく、俺の足は動いていた。
黒
怪訝な表情を浮かべるそいつらに、冷たい視線を突き刺した。
黒
黒
相手の言葉を遮るようにして、強い口調で言い放つ。
黒
不機嫌そうに眉を顰めるそいつの言葉なんて興味も無く、俺はただ目の前の光景に怒りを覚えていた。
黒
気を失っているのか、返事は返ってこない。
ぐったりと力無くその場に倒れ込んでいるまろ。両手両足は縛られ、その体に自由は無かった。
黒
黒
黒
その言葉に、体を怒りが支配する。握り締めた拳で爪が食い込む。
能力を使えばどうにかなったかもしれない。だが状況が状況。向こうにはまろがいる。まろに手を出されれば俺の負け同然だ。
黒
黒
そう来るのは、分かっていた。
頭の中で様々な考えが浮かんでは消えていく。分かっている、この状況でまろを救う為に、何が一番最適か。
まろを傷付けず、この状況を突破する方法。
足を一歩、前へと踏み出した。
黒
俺の言葉に、目の前のリーダー格であろう男は面白そうににぃっと口角を上げた。
黒
返事を受け、一瞬目を見張った男は笑みを深める。
黒
地面に膝を付き、何もしないという証拠に両手を上に上げた。
そんな俺のそばに来た他の男が、ぐっと俺の両腕を引っ張り手首を縄で縛る。加減を知らないその強さに思わず顔を歪めた。
黒
騙されているという可能性も大いにあったが、恐らくコイツは嘘を吐いていないだろう。唯一の最善策が成功しそうで小さく息を吐いた。
その時、俺の耳に届いたのは近付いてくる足音だった。
桃
黒
飛び込んできたその姿に、目を見開く。
縛られた俺とまろを見たないこが目を丸くして、そして、・・・能力を使おうとしてることがすぐに分かった。
黒
桃
取引は絶対だ。その言葉には力がある。簡単に破っちゃ駄目だ。
黒
桃
俺がやろうとしてることに気付いてしまったらしいないこが言葉を言い切る前に、遮って言う。
黒
桃
ないこの体が動く。邪魔すんなよと言う意を込めてリーダー格の男を見れば、何もしないさと言う様に両手を挙げた。
桃
まろを抱えたないこが、なんとか抵抗するかのように俺を見た。それに対する応えは、少々残酷な。
黒
お前らが、そいつが幸せなら、なんだっていいよ。
黒
苦しげに歪められた表情のないこが走り去って行く。
これで良かった。これが、一番の最善策。
黒
にやりと笑うそいつに、ハッ、と乾いた笑みを返す。
黒
ただ一つの場所を目指して進む足。俺の意志なんて気にも留めずに動く足。
桃
止まれよなんて願っても、今の俺の体は言うことを聞いてくれない。
抱えたまろはまだ目覚めない。何一つ俺が望む方向に進んでくれない現状に、ぐっと奥歯を噛み締めた。
予想通り、まろは捕まっていたんだろう。能力者狩りか、または別の能力者か、それらが手を組んだグループか。
・・・そしてあにきは、そんな彼と引き換えに。
“まろを連れて逃げろ”
桃
あにきは、自分を犠牲にすればいいと思ってるのかもしれないけど。
まろや俺達が傷付かないなら、それが一番だと思ってるのかもしれないけど。
こんな結果で、誰が幸せになるって言うんだ。
逆の立場だったなら、意地でも助けに行ったくせに。これまでに無いくらいに怒ったくせに。
あにきは馬鹿だ。馬鹿だ。大馬鹿だ。
なぁ、まろ。まろもさ。
桃
お前の身代わりとして、お前が自分の命より大切だと思ってるあにきがアイツらに奪われてるんだぞ。
ただ家を目指すだけの体じゃ、腕を動かしてまろの頭を殴ることすら出来ない。
文字通り何も出来ない自分の不甲斐無さに、唇を噛んだ。
赤
家に着いた時、廊下に立って待っていたりうらが目を見張った。
水
次にリビングの方からドタバタと騒がしい足音が響き、二人が顔を覗かせる。
白
水
まろの手当てに当たってくれる二人を横に、りうらが俺の顔を覗き込んだ。
赤
責めるでも無く、手を差し伸べるような優しさを込めたその声に、じわりと視界が滲んだ。目的地である家に着いて、俺の体はもう自由だった。
桃
青
俺が言葉をなんとか紡ごうとした時、久しぶりに聞いたような気がする彼の声がその場に鳴った。
赤
白
青
まろの言葉に、俺は何も返せないでいた。
青
その声が紡いだ名前に、体が鉛のように重くなった気がした。
桃
声が震える。背中にそっと添えられたりうらの手に、また泣きそうになった。
桃
青
黒
顎に手を当てて嫌味ったらしくこちらを見下ろしてくるそいつを、ただじっと真顔で見返す。
じんと熱を帯びて痛む左頬にも、鈍い痛みが伴う腹部にも、知らないふりをした。
黒
は、と少し口角を上げれば、そいつは怪訝に表情を歪め脚を振りかぶった。
黒
脇腹を貫くような鈍い痛みに、ぐっと奥歯を噛み締めた。
・・・ほらな、やっぱ二重人格だろ。
まろを助けられて満足したからか。それとももうこの状況を抜け出す気がないからだろうか。変に冷めていて落ち着きがあるのを自覚しながら、俺はただぼんやりと地面に転がった。
黒
髪を雑に掴まれ、グッと体を起こされる。無理矢理上げさせられた顔で、そいつと目を合わせた。
・・・優しい?
今日何度目かの、乾いた笑みを溢した。
黒
彼はいつだって、俺のことを一番に考えてくれた。
あにき!
あにき〜〜
・・・悠佑
その声だって、優しさに溢れていた。
ブチ切れてしまったらしいそいつが、腕を振り上げた。
青
黒
これから襲ってくるであろう痛みに覚悟を決めて目を瞑ろうとした時、その場に響いた声に思わず声を漏らした。
息を荒げたまろが、入り口に立っていた。
青
バチッと視線がぶつかる。髪を掴まれている俺を見て、まろの目が怒りに支配されたのが分かった。
青
まろが一歩足を踏み出すと同時に、パキパキッと音を立ててその地が凍って行く。
ひんやりとした冷気がその場を包む。違う、待て。そんなこと。
黒
青
これでまたお前が捕まったりなんかしたら。お前が怪我したりなんかしたら。・・・まろに、何かあったら。
少なくとも俺は、そんな未来絶対耐えられない。
黒
青
自分が卑怯なことをしていると、自覚はしている。
彼に能力なんて、出来れば使いたくなかった。今までだって殆ど使ったことはなかった。
しかも、こんな形で。
まろの体がその場から動かなくなる。その顔が苦しげに歪むのを見て、俺の胸がぐっと苦しくなった。・・・そんな権利、俺に無いのに。
俺は一生、最低でいい。アイツらに、まろに赦されて救われた俺は、過去に戻れば“人殺し”なのだ。
・・・だからもう、最低に。最後まで悪役になり切って、終わりを迎えようか。
来るな。そんな言葉が彼の口から飛び出した時、俺の体は動かなくなった。
言霊。自分の能力の強力さをよく理解し、その能力の使用を誰よりも慎重に考えている彼が、俺に向けてその能力を使った。
あの時ないこから聞かされた話に、俺は頭が真っ白になった。
遅くまでの仕事で疲れ切って、油断していた帰路。後ろから襲いかかる能力者狩りと思しき奴らにも気付かず、意図も容易く捕まった。
そこから俺の記憶は家に戻るまで何一つとして無かったが、ないこの話によれば。
っあにきは───
馬鹿だと思った。やすやすと捕まる自分も、そんな俺を自身を身代わりにしてまで助けたあにきも。
彼の自己犠牲精神は今に始まったことじゃないが、こんなことをするなんて。
動かない自分の体。これじゃ、ないこの二の舞じゃないか。何のために助けに来たんだ。俺はあにきを助けるまで帰れない。帰らない。
青
“来るな”
あれは、彼からの拒絶。言霊を使ってまでの、強い拒絶の意志。
分かってる。彼が拒絶する理由を。彼は優しいから、きっと俺に危害が加わらないようにとか、今一番危険な状況にある自分のことなんて棚に上げて、こっちの心配ばかりしてるんだ。
・・・それでも、優しい彼からの拒絶。
こんな突き放すような拒絶は、初めてだ。
胸が苦しくなって、表情が歪んだ。どんな状況や理由があろうと、何よりも大切な彼からの拒絶にはくるものがある。
彼を、悠佑を助けたい。自分のことを大切にしようなんて考えを少しも持ってない馬鹿な彼を助けて、怒ってやりたい。でも出来ない。言霊の力で体が動かない。
ぐるぐると渦巻く様々な想い。言うことを聞かない体。
自分の無力を嫌というほど痛感した時、悠佑が表情を変えた。
青
その、ゆるりと上がった口元。細められた目。
これは駄目なやつだと、本能的に悟った。悠佑がこういう笑い方をする時は、碌なことを考えていない。
黒
やめろ、その先を口にするな。駄目だ、そんなの。
悠佑が再び口を開く。嫌だ、聞きたくない。
黒
青
悠佑が言葉を言い終わる前に、彼の体が吹っ飛んだ。
青
地面に頭を打ち付けた悠佑の表情が歪む。呻き声のような声が息に混じって微かに漏れる。
黒
男が悠佑の腹部に容赦無く足を乗せた。その重さと痛みに、より一層悠佑の表情が険しくなる。
大切な人がこんな目に遭っているのに、動かない体。ふざけんな、離れろ、その足を退けろ。
黒
青
か細く、足音にすら簡単にかき消されてしまいそうな声が俺の名前を呼ぶ。
黒
青
黒
忘れて。声にこそならなかったが、その口は確かにそう動いた。
足が一歩、後ろに下がる。彼の言霊を受けたこの体が、この場から立ち去ろうとしている。
・・・悠佑を、忘れて?
痛みに表情を歪めるボロボロな愛しい人。そんな彼に暴力を振るう最悪な男。
そんな状況を前に、俺一人逃げろって?
・・・そんなこと、
青
バキバキバキッ!と鋭い音を立てて、地面が凍って行く。
地を這う氷が一直線で男の元まで突き進み、その片足を地面に縫い付けた。
水
俺やその男とは明らかに違う、明るめなトーンの声が響いた。
男がバッと振り替えれば、ほとけが少し離れたところであにきの手足を縛る縄を解いていた。
男が慌てたように自分の足元を確認する。勿論あにきはそこにいない。
白
入り口の方から聞こえる呑気な声。そして、ゆったりとした足取りが近付いてくる。
白
ちらりと初兎の方を見れば、その向こうにはぴくりとも動かない男達が地面に転がっていた。全員毒か、容赦無いな。
水
白
初兎は俺の方を一瞥し、そのままほとけ達の方へと歩を進めて行った。
・・・じゃあもう、俺は目の前にだけ集中して良いって訳だ。
自由を手にした体で、一歩前へと足を踏み出す。辺りはパキパキと凍りつき、冷気がその場を満たす。
目の前の男の怯えた顔が、こんなにも愉快だ。
青
言葉では表せないような怒りを感じながら、俺はまた一歩足を踏み出した。
水
白
水
黒
色々言いたいことが山積みなのだろう。声を上げたあにきが、少しの間口を開けて閉じてを繰り返した。
黒
あにきの言葉に、僕と初兎ちゃんは視線を交わらせた。考えてることは同じなようだった。
白
水
黒
白
水
白
黒
白
黒
水
白
僕たちの言葉を受けて、あにきが目を見張る。
・・・そして、じわりと潤むその瞳。
黒
水
白
水
白
黒
気まずそうに視線を逸らすあにきに、初兎ちゃんと目を合わせてしょうがないなぁと二人で笑った。
白
ちらっと初兎ちゃんが向こうに視線を投げた。氷が広がるあの場所だけ、まるで別世界だ。
なんのこと、とその視線を追おうとするあにきの目を、手でふわりと覆ってその視界を閉ざした。
水
黒
水
白
水
黒
白
黒
すっかりいつも通りの雰囲気で会話を始める白黒の二人。あにきの相手は初兎ちゃんに任せておいて、僕はもう一度青い彼の方を見た。
何よりも冷たい氷を放つ彼は、何よりも大きな怒りにその瞳を燃やしている。
あーあ、あれは暫く戻って来ないよ。
相手の人を一周回って可哀想に思いながら、いふくんにもっとやってやれなんて考える僕も、いふくんによる残酷な処罰を受けるその人を酷く冷たい目で見つめる初兎ちゃんも、随分とキレているらしい。
外では、ゆっくりと朝日が街を照らし始めていた。
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