友達の彼

京子は中学時代からの友人だ

彼女は男を見る目がなく

すぐに夢中になってしまうタイプ

一言で言うと

「恋愛脳」なのだ

彼氏がいない時はなく

次から次へと

男から男に渡り歩いているので

今まで、散々な目に遭っている

全く・・

またか・・

ああいう風に夢中になっちゃうと人の話聞かないのよね・・

また、捨てられて

彩子〜って泣きついてくるんだから・・

そう言って、冗談ぽく敬礼した後

花絵と別れ

京子の家へ急いだ

ピンポーン

ピンポーンピンポーンピンポーン

ガチャ・・・・

部屋に入ると意外にも

綺麗に整頓されていた

しかし周りをコバエが飛んでいて

末臭い臭いが充満している

京子がそっちと指先す方向には

静かにドアが佇んでいた。

そのドアから

なんとも言えない

臭いが漂ってくる

私は恐る恐る

ドアを開けた

私は言葉を失った

そこには残飯にまみれ

あぐらをかいて座っている

「マネキン」

がいたのだ

京子は当然のように

そのマネキンと会話をしていた

返事など帰ってくるわけないのに

私はその異様な光景に

ただ息を呑み

無言で立ち尽くすしか

できなかった

そう言って私は

京子を押しのける様にして

家を飛び出したのだ。

それから京子は姿を消し

私が京子に会う事もなくなったが

たまに京子の噂を耳にする事がある

人々が寝静まった街に

夜な夜な

背の高い男を連れて歩く

京子を見たという噂だ

彼女はおかしくなってしまったのだろうか？

私の見た彼氏は確かに

「マネキン」だった

でもマネキンが

あぐらなどをかけるのだろうか？

ましてやあんな大きな

マネキンを持って歩くことなど

普通では出来ないのではないか？

あの「マネキン」は

実は生きていて

本当に動くのかもしれない

京子は生きているのか？

あのマネキンはなんだったのか

それを確かめるすべは今はもうない