女狐とお釈迦様
郭の夜は、嘘の灯りでできている――。
吉原の頂点に君臨する不動の一位花魁おさく。その慈悲深い微笑みから「生き菩薩」と客に崇められる彼女だが、その瞳には常に深い孤独の影が落ちていた。
おさくと共に歩んできた幼馴染の三位・おりんは、遠ざかる親友の背中に激しい嫉妬を募らせ、ある悪質な噂を流す。――「おさくは男の生気を吸う化け猫だ」。
だが、おさくはその嘘の化け物すら艶やかに演じ切り、さらなる全盛を誇っていく。
焦り、狂い、客を選ばず狂奔するおりん。感情を殺しすべてを静観する二位のおみこ。そして、陰謀を知りながら嗤う遣手婆。
欲望の籠の中で、本当に「化け物」に食い殺されるのは誰か。
華やかな地獄で足掻く女たちの、哀切なる因果応報の結末。