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1、町を出て
3月下旬、目の前に舞う桜とはとても似合わぬ様な風だった
風はズボンからはみ出た足首を、頬を、手を鋭い刃物で容赦なく襲いかかる
『風を切って走る』という表現もあるが、切られているのはこっちの方だろう
そして目の前には自分と同じ目線の、いや少々自分が見下ろすような形で、両親がいる
決して両親がしゃがんでいる訳でも、背が小さいわけでもない
自分が大きいのだ、実際今年買ったズボンはもう足首が出てしまうほどに短くなってしまった
ひどく暗く、陰気臭いこの駅のホームにこのままずっといる訳にもいかない
軽く両親と目を合わし、できるだけ明るい声を出す
志垣
母はやっとこちらに目線を合わせてくれた
母
志垣
母
父
母
今年幸平は県外の高校に行くことになっている。しかも寮だ
別に特別地元に残りたい訳ではなく、夢は勿論、特に行きたい高校等も無かった。あってもそれは到底自分のレベルではとどかない
偏差値67 部活は美術部 かと言って絵が上手いわけでも、才能がある訳でもなかった
美術部にはただ単に、 『楽そうだから』と言う理由で入っていただけだ
父
母
志垣
志垣
志垣
母
志垣
父
母
父
志垣
志垣
志垣
父
母
小さい駅だったのでちょうど他の客は居なかったが、警備員に聞かれていたようだ
ニヤニヤしながらゴミを掃いている
また強く風が吹く
さっきよりも暖かく、春を感じる風だった
この風と一緒に余計な感情は捨てていこう